概要
家畜の牛の祖先にあたる野牛で、原牛とも呼ばれる。また英語圏では、ラテン語で「山」を意味する言葉に因んでウルス(Urus)という呼び名もある。
体長約2.5~3.3m、体高約1.4~1.9m、 推定体重約0.6~1.5tほどの大きさであり(大きさや形態に亜種ごとの差や地方差がかなりあったとされる)、角の両端の幅は最大1.5mに達すし、細長く西洋竪琴のような形であることが特徴である。体色は黒または褐色で、雄の方が黒っぽいと考えられている。
祖先は約200万年前ごろにインドで誕生したとされ、徐々に中東・ヨーロッパなどに分布を広げ、更新世末期(1万1000年前)にはユーラシア全土に北アフリカと幅広く分布するようになった。
日本列島からも、岩手県の約3.5~1.6万年前の地層から発見された絶滅種ステップバイソンに近いと考えられるハナイズミモリウシなどと共に化石が発見されている。ただし、後にはこの記録は除外されており、日本にはオーロックスがいなかった可能性もある。
また近年、ヨーロッパバイソンは、雌のオーロックスとステップバイソンの雄の間に生まれたハイブリッド種であることを示唆する研究結果が発表された(ハイブリッドが新種になることは自然界でも他にあり、例えばクライメンイルカはハシナガイルカとスジイルカのハイブリッド種である)。しかし、逆にこれを否定する研究結果もあるため、真偽は不明である。
古来より人間達から「力や生命力」の象徴と見做され、世界最古の芸術作品と言われるラスコーの洞窟壁画にも描かれており、食用として乱獲されていた。加えて文明の発達による環境破壊や家畜化の影響もうけて、中世にはフランス・ドイツ・ポーランドなどの森林にしか生息していなかった。
この頃になるとオーロックスの禁猟区も各地で設けられるようになったが、所詮は保護ではなく王族・貴族のスポーツハンティングの確保のために過ぎず、あっという間にポーランドのヤクトルフにある保護区の個体群しか見られなくなってしまった。そこでも密猟が横行し、最後に生き残っていた個体が1627年に死んだことで絶滅してしまった。
純血種は死に絶えたものの、子孫のコブウシ(犎牛、犦牛、𤛑牛)はインドで神の化身と呼ばれ今でも大切に飼われている。
また20世紀中ごろのドイツでは、ナチスの支援を受けたヘック兄弟が、現存する牛の中からオーロックスに近い特徴をもつものを交配させてヘックキャトルというハイブリッド牛を誕生させている。
このヘックキャトルは現在でも生息している他、複数の国においてオーロックスに近い見た目の牛を掛け合わせで実現させようとするプロジェクトが進行中である。
- この様な近縁種や子孫の掛け合わせによる絶滅動物の見た目を再現するプロジェクトは、他には例えばクアッガに関しても行われている。
関連動画
(復活プロジェクトの一頭。まだ角の大きさや形状、身体のサイズや体型などがオーロックスほどには至っていない。)