今、僕は冷静さを欠こうとしています
いまぼくはれいせいさをかこうとしています
詳しく……
説明して下さい。
今、僕は冷静さを欠こうとしています。
概要
坂田信弘原作・かざま鋭二作画で、『ビッグコミックオリジナル』(小学館)連載のゴルフ漫画『風の大地』の61巻3話『指示』中のセリフ。
発言しているのは主人公のプロゴルファー、沖田圭介である。
険しい表情の沖田が、怒りや驚きをかみ殺すかのように、ゆっくりと言葉を選んで相手に説明を求める様子が3コマを使って描かれている。
それもそのはず、後述の通りこれはゴルフのツアー終盤の優勝争いの最中に、自分の婚約者が何者かに拉致されたことを知らされたシーンである。
予想だにせぬ突然の報せに、沖田の言葉通り冷静さを失って当然の場面であるが、今は大切なラウンドの最中。わずかな精神の乱れも即座にショット・パットの乱れにつながるゴルフの世界、心中の動揺と狼狽をつとめて表情に出さずにプロ根性で必死に押し殺し、ゆっくりと言葉を選びながら詳しい状況を把握しようとしている深刻なコマなのである。
しかし、この3コマだけを切り取ると、コピペかというほど表情を動かさないまま(実際の作画はコピーではない)、沖田の顔が徐々にアップになっていくため、怒りを押し殺して仏頂面で相手に詰め寄り、返答次第では容赦しないと脅している場面に見えてしまい(冷静さを欠こうとしています ⇒ これ以上怒らせると何をするか分からないぞ)、その結果シリアスな笑いを誘うパロディ素材に使われている。
パロディ作品としては理解が追い付かない状況への説明を求める作品のほか、相手の捨て置けない発言や行動を静かな怒りとともに問い詰める作品が描かれている。
原作では「今、僕は」だが、ここはパロディに使われるキャラに合わせて「私」「俺」などに改変される。
原作の状況
場面はオーストラリアン・オープンの終盤戦。優勝争いに絡んでいた沖田だったが、ここで大会結果を操作しようとする悪辣な賭けゴルフブローカーの策略に巻き込まれてしまう。
ブローカーの勝たせたい選手を優勝させるため、同じく優勝争いを演じていた若きアマチュア選手は腕を痛めつけられて棄権を余儀なくされる。さらに沖田に対しては現地に同行していた婚約者の物部麗子を誘拐して人質にとり、八百長でわざと負けるように脅迫が行われた。
麗子がさらわれたことを目撃者から聞かされた時のシーンが、このセリフである。
最も大切な恋人の命と、人生を懸けて取り組んできたゴルフを裏切る八百長行為の板挟みにされ、ギリギリの精神状態の中ラウンドを続行する沖田。
その後、関係者たちの必死の尽力により麗子は無事救出され、沖田は見事優勝を飾ったのだった。