原因
主な理由としては安全性への疑念、反科学思想、政府や企業への不信感、宗教上の理由などがある。
アレルギーや副反応など、体質的にワクチンを打てない人もいるため、一概に「ワクチン接種を避ける人=反ワクチン」とは言い難い面が存在するが、当事者でない側からはまとめて「反ワクチン」と呼ばれてしまうこともある。
また注射が嫌いなどの理由なども反ワクチンとは関係がない。
このうち安全性については、かつて感染症の発生や流行を予防するため幼児や小・中学生がワクチン接種を集団で強制的に受けさせられていたが、ワクチン接種後にときとして起こる高熱や発疹、稀に死に至るなどの副反応が問題視されたことの影響があると考えられる。また、かつては注射器などの器具の扱いが不適切で(※)、肝炎や薬害エイズに至ったという事例もあり、特に集団接種に対して懐疑的な意見を持つ人もいる。
現在の日本では、ワクチン接種は基本的に個人の自由とされており、反ワクチンの思想から我が子に接種を受けさせない保護者も多い。また強制接種から任意接種への移行によりワクチン接種率は下がり、特にインフルエンザワクチンは反ワクチンの考えを持たない保護者も(少なくとも毎年は)子供に受けさせないのが一般的になった。
※かつては(集団接種における)注射針の使い回しや、器具の不適切な廃棄(例として、医療廃棄物処理場ではない、通常のごみ処理施設に注射針が持ち込まれてしまい、回収員の手に刺さって感染症になるなど)が原因で起こる薬害も少なからずあった。現代においては注射針などの器具は使い捨てになり不慮の事故は減少しているが、コロナワクチンにおいても使用済み注射器を使い回すミスについての報道がたびたび散見される。
ワクチンなどの予防医学は、それのおかげで免れたと立証・認識する事は難しいという点にも留意する必要がある。
WHOはこうした反ワクチンによるワクチン接種の躊躇いを健康上の脅威の一つとして認定している。
とはいえ、一口に反ワクチンと言ってもかなりの温度差があり、後述のコロナ禍においてmRNAワクチンを「目新しいものなので信用できない」「血栓症を誘発させる」としながらも従来の不活化ワクチンは拒否しない、種類により肯定否定を分ける比較的軽度な者も少なくなく、また反マスクや自然育児主義者とも兼業したりする。反ワクチンの団体、活動費(活動における罰金、裁判費用を含む)として寄付を募ったりクラウドファンディングを利用するなど様々な方法で集金をしており、
特にCOVID-19における反ワクチン活動で数万ポンド収集した活動家も見られた。
影響
かつては日本において、天然痘ワクチンが牛の病気から作ったワクチンという事で、打ったら牛になるなどというデマが飛び交い接種を忌避する人も発生した。
アメリカにおいては自閉症の原因がワクチンであるとの言説が医師によって提唱され、研究者の間では広く支持されている。
日本における「反ワクチン」の運動の影響としては、子宮頸がんの予防としてのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種の激減があげられる。
主に10代の若い世代の女性を対象に2000年代後半から開始された接種勧奨に際し、重篤な副反応が起こったと主張する被接種者が次々と現れ、家族ら関係者が製薬会社への集団訴訟などを起こしたため、厚生労働省(厚労省)は2013年にHPVワクチンの接種勧奨を取りやめた。
しかし2015年には、名古屋市によって、接種勧奨の対象となっていた市内在住の若い女性を対象とした一斉調査(名古屋スタディ)が行われており、これによれば、対象となった女性が訴える症状で関連性が強かったのは「ワクチン接種の有無」ではなく「年齢」であった。このため薬害ではないと判断され、厚労省は2021年に積極勧奨の再開を決めた。
ワクチン積極勧奨を続けていた場合に比べ子宮頸がんの患者が計1万7千人、死者が計4千人発生するという予測が存在する。
インターネット上でも2000年代後半から2010年代前半にかけて子宮頸がんワクチンに対する反対運動が活発に行われており、Twitterにて同ワクチンを推進する医師や、ワクチンを推奨する活動を行なっている三原じゅん子氏などに脅迫的なリプライを送る者もいた。
コロナ禍において
2020年以降の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の流行(コロナ禍)に対する抜本的対策として、世界各国でコロナワクチンの積極接種が打ち出されたが、これに比例する形で反ワクチンの動きも活発化している。
対コロナ施策における経済活動の自粛要請(ステイホームなど)、またこれを理由とする市場経済の規模の縮小・不況にくわえ、副反応についてのインターネット上での情報共有により、反ワクチンに至る人物も少なからずいると考えられる。
反コロナワクチン運動体やそれらの主軸となる思想も上記のごとく様々だが、日本では「コロナ重病懐疑・否定論」や、「反マスク(ノーマスク)」・「一切のコロナ対策を否定する」運動と同一体のケースが存在する。
特に日本で承認されたコロナワクチンは、それまでの生ワクチンでも不活化ワクチンでもないmRNAワクチンという新種だった事も影響した。
欧米では医療職や公務員へのワクチン義務化反対運動の大規模デモが起こっている。日本では「ワクチンは殺人兵器だ、打つな。」と発言する地方議員も存在した。
企業では、ある大手住宅メーカーの社長がオンライン会議上で「ワクチンを接種した者は無期限の自宅待機とする」「自宅から社用PCにログインするのも禁止とする」といった発言をしたことが、複数の社員によって明かされたと週刊文春にて報じられた。
また、社内資料には「感染拡大防止対策に関する社内ルールに違反した場合、自宅待機を命じる」、「自宅待機中は欠勤(無給)扱いとする」といった内容が書かれており、実質「ワクチンを打った場合は謹慎処分」というべき制裁方針を、社長自ら示したといえる。
インターネット上でワクチン接種について情報を集める中で、同じような考えを持つ人が固まって、自分達にとって都合の良い情報だけを共有し合うようになる「エコーチェンバー」、「フィルターバブル」の状態に陥ってしまい、公的な機関から出された正確な情報が耳に入らなくなってしまう危険もある。これはコロナによる政府への不信感、公的機関自体への不信感も原因として挙げられており、ワクチン推進派・反ワクチン派両方に起こりうることでもある。
厚生労働省はワクチン接種による効果・影響、その根拠となる情報については、「できる限り公的な機関のものを参照するように」と呼びかけており、新型コロナウイルスにまつわるメディア・マスコミ・SNS上の情報共有について警鐘を鳴らしている。
また、様々なデマや陰謀論も飛び交っており、中には日本の超巨大企業社長が人口削減ワクチンだと発言したなどというデマが個人ブログを発端として広がった。
社会的制裁
反ワクチンへの社会的制裁は厳しくなって来ており、特に医療機関ではワクチンを拒絶する者への解雇も早いうちから増えていた。
オミクロン株の蔓延後はさらにその流れが加速しており、医療職のみならず公務員や軍人、民間の大手企業でも反ワクチン当事者の解雇を打ち出す職場が増え、アメリカ軍も大量の除隊処分を行なっている。
フランスではマクロン大統領が、「反ワクチンには目にものを見せてやる」と強い口調で反ワクチンを批判した。
日本では反ワクチンというだけでは解雇や医療職免許の剥奪まで至る事例はなく、体質・副反応を理由に接種できない学生については配慮がなされていた。しかし新型コロナにおいては感染拡大を防ぐ目的から、医療系・福祉系学生の病院実習について未接種者が実習先から断られる事例が確認されている。
実習にあたっては病院内や地域の感染状況も関係するため、ワクチンの接種の有無に限らず実習を断った病院も多いと見られている。
医療機関以外でも、特に介護施設など福祉関係の仕事場や学校(幼稚園や保育園、こども園なども含む)等の職員について、上司からワクチン未接種に関して圧力や叱責を受けたという意見がインターネット上でも散見されている。自衛隊では部下にワクチンを強要したとして陸佐が戒告の懲戒処分を受けている。
元より介護施設や学校は免疫力の低い高齢者や障害者、子どもが多く集うことから感染症に注意が必要な空間であると言える。このため、先に挙げた学生の実習同様新型コロナウイルスに限った話ではないという側面もある。
厚生労働省は「接種による感染予防効果などのメリットが副反応などのデメリットを上回るため接種を勧奨している」とした上で「接種自体は強制ではない」としている。また、(特に職場における)未接種者に対する偏見や差別的な扱いを避けるよう注意喚起しており、以下のように述べている。
「職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていないことを理由に、職場において解雇、退職勧奨、いじめなどの差別的な扱いをすることは許されるものではありません。特に、事業主・管理者の方におかれては、接種には本人の同意が必要であることや、医学的な事由により接種を受けられない人もいることを念頭に置いて、接種に際し細やかな配慮を行うようお願いいたします。」
また、YoutubeやTwitterなどは反コロナワクチン関連の動画の一部に対し、削除やチャンネルも凍結するなどの対応をとっている。一方ニコニコ動画はそのような規制はないため、前述の規制の反動もあり多数の反ワクチン動画が投稿されている。
互いの関わり方
その話題に触れない事、話題が出たら別の話題へ誘導する事が賢明である。上述の通り、科学面だけでなく、体質や思想信条など打たない理由は様々である。お互い説得を試みるよりは、その人の個性として認識する方が互いの気分を害さない。よく宗教、政治、野球の話は他人とするなと言われるが、それらと同じようなものと考えるとわかりやすい。
もちろん、関係を見直すのも自由である。
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