概要
湿地とは、一時的あるいは常時を問わず、水に浸かるか水分の含有が非常に多い土壌のこと。
湿地と聞くといわゆる湿原や沼地などがイメージされがちだが、実際には湿原や沼のみならず、池や河川、地下水系、更には干潟や藻場、珊瑚礁などの浅海域も含む概念である。
水鳥の繁殖地となったり独自の植生が見られたり、陸地と水域を繋ぎ養分の供給を担ったり、生物多様性にとって極めて重要な地形である。
現在では多くの人々が生活する関東平野や大阪平野にも、かつては氾濫原からなる広大な湿地帯があったとされる。
古事記などに記される日本神話において地上が「葦原の中つ国」と称されたのも、葦の生い茂る湿地帯がいたるところに広がっていた日本古来の風景を反映したものではないかと考えられている。
上述の通り、自然環境にとって重要な役割を持つが、経済的に無価値とみなされやすく、浅く平坦で埋め立てしやすい地形が多いため、干拓や埋め立て、最近ではソーラーパネル建設用地などの対象になりがちで多くの湿地が失われている。
また、治水対策による護岸整備などによる影響も深刻である。
湿地帯の破壊による影響とみられるものの一例を挙げると、塩性湿地である干潟の代表的な生物であるアサリは、生息地の劣化や減少によって漁獲量が昭和末期の1割以下に激減しており、国内需要のほとんどを中国や朝鮮半島からの輸入に頼っている。同様に日本各地に生息していたハマグリも有明海と周防灘の僅かな範囲を除いて絶滅に近い状態であり、市場に出回るものは殆どが食味の異なるチョウセンハマグリやシナハマグリなどの代替品である。
このように、本来ならば当たり前に採れるはずのものが海外から買わざるを得ない状態になり富の流出を招いたり、当たり前に嗜まれていた味覚が失われて他のものしか選べなくなるなど、湿地環境の劣化は経済的にも文化的にもスリップダメージのように地味に負の影響を与えていると考えられる。
治水や経済活動は人類が生きていく上で欠くべき事の出来ない重要な事であり必ず必要なものであるが、湿地帯が人類にもたらしている物もまた目に見えにくいものの意外と大きいため、出来うる限り両者が両立しうる施策、工法の採用が望まれる。
創作における湿地
創作における湿地の描写は、殆どの場合、湿地の中でも沼地や湿原と呼称されるものに限定されている。こうした泥々でジメジメとした沼地や湿原のイメージから、「毒沼」「瘴気」などのギミックや、グロテスクなモンスターや毒持ち、アンデッドなどの生理的嫌悪感を催させる魔物の徘徊するなどの設定がなされる事が多い。
とりわけデモンズソウルの腐れ谷は病やスラムなど湿地の負の側面を凝縮した色んな意味でゲーム史上最低最悪のダンジョンの一つである。
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ネルソフ湿地帯 瀑布湿原 腐れ谷:創作における「汚い湿地」の一例。
甲府盆地:現実に存在した「汚い湿地」の代表例。甲府の歴史は日本住血吸虫症との戦いの歴史であり、汚染された土地から離れることは武田信玄の覇道の原動力の一つでもあった。病にとどめの一撃を与えたのは、皮肉にも戦後の環境破壊であった。