概要
与えられたモノを一定のルールに沿う限り好きなように魔改造し、同じお題を与えられた企業・大学で優劣を競うNHKのテレビ番組「魔改造の夜」。
その第一回を飾った彼は視聴者と参加者、ゲストや司会者を震撼させ、番組のその後に大きな爪痕を残していった。作製したのは世界的自動車メーカーのT社。
登場まで
本番組の記念すべき第一回において行われた、8秒かけて27cmをゆっくり歩く(時速0.1215㎞の)「歩く子犬のワンちゃん」を魔改造し、直線25mのタイムを競うもの。ルールは「顔さえ残せばOK」「改造資金は5万円以内」。
レースに挑戦した東京下町工場の星・H野製作所、日本の最高学府T大工学部がそれぞれに改造したワンちゃんをお披露目する中、T社の番になって布の中から出てきたのは……
ひとつ付いていれば良い筈の頭が、複数取り付けられた異形のワンちゃんであった。
登場した瞬間「えぇ…」という困惑の声が広がる。実況すらツッコんだ堂々とした名乗りのあとに、顔が三つあることについて質問が入ると。
「顔が…四つ、あるんです」
ぐるりと回転させて、初見では角度から見えなかった四つ目の顔が見えた瞬間、コメンテーターから「どうしてェ…」というドン引きからの呻きが漏れたところ、
「試作も含めて4台のスパニエルをいただいたんですけど…『みんなを(一緒に)走らせてあげたい』そういう思いでひとつに」
という、狂気すら感じさせる純粋な善意が理由であることが明かされた。
目標は「25mを2秒で爆走」(時速45㎞)と宣言する中、ついにレースとなる。スタートはピクリとも動かなかったが、最初に好スタートしたH野製作所のワンちゃんの動きが鈍る中、6秒を過ぎてから動き出すと猛然と追い上げ、そのままの勢いで抜き去りゴールまで駆け抜けた。
宣言していた目標には遠く及ばなかったものの、タイムは18秒301。おおよそ時速5㎞と、元のおもちゃの40倍以上の魔改造っぷりを見せつけた。
なおこんなネタっぽい見た目でも中身は真っ当でガチな作りをしている。
走行にはやはり回転運動がもっとも速度が出せると判断し、モーターの回転を脚を前後に動かす水平運動に変換せず、モーターの回転でブレード状の「脚」を回転させ推進力を得ている(なおこの「脚」は競技用の義足の技術を流用している。タイヤではないためレギュレーション上の問題はない)。
最初から最高速で駆動させると暴走してしまうので、初速が犠牲になることを承知の上で敢えてモーターの回転を徐々に上げるよう制御している。それでもやはり後部が跳ねてしまうので、暴れないように極太の尻尾がカウンターウェイトの働きをするようになっている。
といった感じで、自動車だけでなく福祉やスポーツも手掛ける、天下のT社とそのグループの技術が地味につぎ込まれている。
それだけの技術を詰め込んであることもあり、天下のT社が金にものを言わせて作ったのだろうと思いきや、改造にかかった費用はなんと16680円と予算上限の1/3。他者が予算の50000円ギリギリの中、実は抜群の低予算マシンでもあったのだ。
その後のキングスパニエル
視聴者と今後参加する技術者たちに強烈なインパクトを与えていったキングスパニエルだったが、実はちょっとした後日談がある。
それは下記のまとめを見ていただこう。