概要
ペンタブレットの発展型で、液晶画面を搭載したペンタブレットのこと。通称「液タブ」。
描画に特化したペン入力を備えた液晶モニターである。
ペンタブレット(板タブ)は、マウスと同じく純粋な入力用デバイスなので、別にある画面を見ながら使用するが、液タブは画面出力がついており、画面に直接ペンで描けるため、よりアナログに近い感覚で描画できるのが最大の特徴。
そのため板タブよりもとっつきやすく、早い段階で自由な描画とスムーズな作業を可能にする。
かつてはWacomが一社独占で提供していた分野であったことから高嶺の花で、安いモデルでも10万越えは確実でガチ勢向けの商品だった。しかし近年では中国メーカーが高性能かつ安価な商品を掲げて参入することで競争が発生しており、安いもので2万円くらい。ワコム製でさえも4万円くらいから買えるようになり、ぐっと身近な存在になった。
価格は企業や機能によってまちまちで、2万円を切るの超リーズナブルな価格もあれば、40万円以上もするプロ向けの超ハイスペック機器も存在する。
Wacomが開発・販売しているCintiqシリーズが代表。
デザインや写真だけでなく、建築や医療など広い分野で使用され、プロフェッショナル・法人をエンドユーザーとして普及している。
Wacomなど一部のメーカーは、市販ソフトの下位バージョンがおまけとしてついてくる。
ここ最近ではiPadなどのタブレット端末やWindowsを搭載したタブレットPCに、ペンタブレットのように描画に実用的なペン入力を備えたものがいくつかある。用途によっては充分代用になる性能を持つものもあるが、これらは基本的に液晶ペンタブレットとは別物として区別される。
iPadと比較すると、サイズや機能性は液タブに選択の幅がある一方、グラフィック制作以外の複数の機能を搭載して並行作業ができ、携行もしやすいという利便性ではiPadに分がある。
注意点
コンピュータに疎いと意外と盲点になるが、液タブは単体では使用できない。
例えるなら液タブはスマートフォンから抜き取ったディスプレイモジュールのようなものであり、それ単体では何の役にも立たないことは容易に理解できるだろう。
液タブはパソコンに接続することで使用可能になる。
なお、液タブをパソコンに接続したらいきなり絵が描けるようになるわけではない。
絵を描くには、ペイントソフトなどが別途必要。
現在はメディバンペイントやFireAlpacaなど無料でダウンロードしてすぐ使えるソフトもあるので問題はない。
液タブの問題点として、ドライバや設定関連の煩雑さが挙げられる。
本体の機種、パソコンのOS、使用するペイントソフトなど人によって環境がさまざまであるためであるが、きちんと使用できるようにするには、最低限Windowsやペイントソフトの設定に関してGoogleなりで調べたり、操作ができる程度のスキルが要求される。
メリット・デメリット
ここではアナログ作画及び板タブとの比較としての利点・欠点を挙げる。
メリット
・アナログに近い感覚でデジタル作画が出来る
ほぼ唯一にして最強の長所。
・ディスプレイとして再利用できる
絵を描かなくなったり、描画機能が故障したりしてしまっても、ただのディスプレイとして使用することはできる。
デメリット
・高価
液タブは細密機器故に高価である。型落ちエントリーモデルの中古品ですら1万円以上、新品の最新機種に至っては10万~数十万円に達する。
ペン、替え芯、保護フィルム、ケーブルなどの周辺機器も含めると、やはり最低でも数万円の出費を強いられてしまう。
更に液タブは家電リサイクル法の対象であるため、廃棄の際にリサイクル料金が掛かる場合がある。
・かさばる
液タブは卓上の広い面積を占領する。特に大型機種はそれ一台だけで机を占拠してしまう。
キーボードやマウスの配置にも一工夫必要となる。
更に、液タブは同インチサイズのディスプレイやテレビと比較すると、重量も重い傾向にある。
通販で送料がかさんだり、より頑丈な机やモニターアームを必要とする場合もある。
・繊細かつ、衝撃を被りやすい
液タブは精密機器故に衝撃などに弱く、鋭利なものを当ててしまったり、体重をかけてしまったり、液体をこぼしてしまうと故障してしまう可能性がある。
それに反して液タブは机の中央に斜めに配置させることが多く、やや遠ざけて垂直に配置する普通のディスプレイよりも不意の破損の危険性が高い。
・寿命が短い
液タブは普通のディスプレイと同じく、10年使えれば長寿命の部類である。特に24時間付けっぱなしなどハードコンディションの場合は、10年と経たずにいずれかの部品が寿命を迎えてしまう。
・姿勢が悪くなりやすい
板タブの場合は正面の画面を見ながら描画が出来るが、液タブは屈む姿勢が続きやすく、体を壊す原因になる可能性がある。
・発熱がある
液タブは結構熱くなる。特に古い大型機種は部屋の温度を上昇させるほどの熱を発する。冬なら良いが、夏場は不愉快な上、手汗がにじんで描画にも支障が出ることがある。
・配線が多い
液タブは出力ケーブル、入力ケーブル、電源ケーブルの三系統を必要とするため、配線が複雑になりやすい。
・アナログと完全に同じではない
この問題は技術の進歩によって徐々に解消されつつあるが、それでも全く同じとはいかない。主な原因はガラスの厚みによる視差、解像度の限界によるドット感、通信・処理速度の限界によるラグである。
古い機種では発色に難を抱えている場合もある。
とここまでデメリットばかりを挙げてきたが、絵を描いたり設計図を描くのが好きで、楽しく絵を描きたい、腕を磨きたいと思っており且つ、液タブが欲しいのであれば、一日でも早く手にすることをお勧めする。
液タブは極めて強力なツールであり、並以上の腕さえあれば上述の弱点を全て覆しうるポテンシャルを秘めている。