「再会を喜ぼうぞ、ハイタカ。」
CV:田中裕子
概要
アニメ映画「ゲド戦記」に登場するキャラクター。
「死」を恐れ、永遠の命に執着するロークの大魔法使い。港町ホート・タウンで最後まで残った「ただ一人魔法の使える魔法使い」と言われ、人々から恐れられている(ほかの魔法使いたちが魔法を使えなくなっているのはクモが原因)。
かつてハイタカとはロークで学んだ同志でしたが、クモは禁忌の魔法(死んだ人間をあの世から好き勝手に現世に呼び出すこと)に手を出してロークの賢人から追放され、ハイタカは大賢人として魔法使いのトップとなった。
かつて「ハブナーのクモ」と呼ばれ、人が金を払いさえすればパルンの『知恵の書』を使い、望み通りの人間をあの世から好き勝手に呼び出していた。しかし、自分の師の魂を呼び出され激怒した若き日のハイタカによって、泣き喚いて必死に抵抗するクモは無理やり黄泉の国まで連れていかれ、恐怖のどん底に叩き落された。改心を約束し西へ去ったクモだったが、心の中ではハイタカを恨み、復讐の機会をずっと狙っていたのである。(逆恨みに近い)
余談
男性だが、声優とその外見から女性的に見えるキャラクターとなっている。
英語版での名前はCob。
物語序盤でウサギ(クモの手下)が「顔に傷あとの残る魔法使いが・・・」と報告すると、「大賢人がやって来たか・・・」、「再会を喜ぼうぞ、ハイタカ」とほくそ笑む。ロークを追われた後、お互いに会うことはなかったようだ。
クモの活躍と最期(ネタバレ注意!)
「黄泉の国の境で別れて以来だな!魔法の知識におぼれ、死者はおろか生きた人間の魂までもてあそんだこと、悔い改めたのではなかったか!」とハイタカに言われるが、クモは笑い、それと同時にアレンと戦わせることになってしまった。
「私はけっして死など受け入れない」、「私はとうとう生み出したのだ。最大にして最終の魔法をな。この魔法で、この世が始まったときから閉じていた『生死両界を分かつ扉』をこじ開けてやる」とハイタカに宣言する。
その後、覚醒したアレンは、クモの右腕を切り落とした直後、老人のような姿になった。(ハイタカ曰く「魔法を隠していた」)
「私は不死を手に入れ、永遠不変の存在になるのだ」、「俺はお前たちのような価値のない存在ではないのだ。あらゆる知識を学びつくし、力を手に入れた至高の存在よ」、「見返してやる。永遠不変の命を手に入れ、世界で唯一の賢人となってやる!」
上述のセリフで、クモは液状に変身し、テルーをさらってクモは塔の上に登っていく。
アレンは必死に後を追う。今までの好戦的なクモとは違い、テルーの首に手をかけながらも「コワイ、コワイ…コワイ…」とつぶやいている。暗い穴のような目は、どこか迷いがあるようにも見える。
「クモ、お前は僕と同じだ!光から目をそむけて、闇だけを見ている!」(アレン)
「ク…クルナ…」(クモ)
「死を拒んで、生を手放そうとしているんだ!」、「目を覚ませクモ!怖いのはみんな同じなんだ!」(アレン)
アレンの叫びに、「イヤダ…ナクナルノハ…イヤダ…」と苦しむ様子も見せる。しかし、どうしても執着を捨てられないのか、クモはテルーの首を締め続ける。アレンの足元の床に魔法をかけて崩し、落下させようとする。
「オチロ!オチロ!」、「ジャマスルヤツハ キエテシマエ!」(クモ)
腕の筋肉を膨らませ、テルーの首をさらにきつく締めあげる。
「やめろ!テルーを殺すな!」(アレン)
しかし次第に青ざめていくテルーは、やがて体から力が抜け、床に崩れ落ちる。
「シンダ、シンダ、カワイソウ…」(クモ)
クモは、「朝が来る」と身を隠そうとするが、背後で声がする。
「待ちなさい」(テルー)
そこには、起き上がるテルーの姿がいた。
太陽が顔を出す直前の光を背にして、赤く輝く強い目をクモに向ける。
「永遠ノ命ダ…」(クモ)
魅せられたようにヨロヨロとテルーに向かって歩み寄るクモは、殺したはずのテルーが立ち上がったのを見て、永遠の命を持っていると思ったのだ。
「イ、イノチヲクレ…」(クモ)
しかしテルーは拒絶する。
「影は闇に帰れ!!」
テルーの髪が大きく広がり、背にした太陽が巨大な翼の形となり、火の粉をまき散らしながら竜の姿に変わっていく。
それでもフラフラと近づくクモは、執着にとらわれた亡霊のようである。
「イノチ…、イノチヲヲヲヲヲ!!」(クモ)
言いかけた瞬間、竜の吐く激しい炎につつまれるクモであった。
「ギャアアアアアアアー!!」(クモ)
体が激しく燃え上がり、絶叫がこだまする。燃えながら後ずさり、竜をきっかけに崩落が始まっていた塔の上から落下していく。塔の下は湖で、求めていた「永遠の命」から拒絶され、全身を焼かれながら墜落死するという、黒幕にふさわしい最期となった。