宍戸梅軒とは、吉川英司の小説『宮本武蔵』に登場する人物である。
概要
原形とされるのは、武蔵の没後に執筆された伝記『二天記』に登場した「宍戸某」という人物。
これを作者である吉川英司が脚色・創作したのが【宍戸梅軒】とされる。
伊賀国出身の野武士集団の頭目で、普段は鍛冶屋を装っている。
鎖鎌の使い手で、「宍戸八重垣流」という流派を編み出した鎖鎌術の達人。
その分銅は相手の眉間を正確に捉えて打つ、一撃必殺の威力を誇る。
宮本武蔵と出会ったのは、まだ武蔵が新免武蔵と名乗っていた荒くれ者の頃にであり、この頃の武蔵にとって梅軒は「自分と似た何者」であり、『剣の道』を行くことになる武蔵にとって超えるべき壁として立ちはだかることとなる。
通常、正面からの対戦には不向きとされる鎖鎌だが、梅軒は卓越した分銅捌きで武蔵を翻弄。
自分の間合いに入れない武蔵はこれに苦戦するが、脇差を用いて攻撃することを閃き、鎖で太刀を握る手を封じた一瞬を狙い、逆に分銅による攻撃を封じて勝負を決めた。
実在性への疑問
梅軒のモデルとなった宍戸某については、まったくと言っていいほど手掛かりがなく、そのモデルが誰であったかについては未だ持って不明であり、現在では『二天記』執筆に際して捏造された架空の人物ではないというのが通説である。
その一方、貫心流武術の開祖とされる「司箭院興仙(しぜんいんこうせん)」(本名:宍戸家俊)をモデルとする説もあり、また名前に付いては吉川英司の知人である俳人・宍戸梅軒とするのが有力説になっている。