コク
こく
概要
「コク」とは、複雑な味わい、風味のことである。
よくカレーやシチューを作るときに「この隠し味を入れるとコクが出る」という。
しかし「コク」=「美味しさ」ではない。
「コクが無い」というのは、あっさりしている単純な味ということである。例えばスイカ等にはコクがないとされる。
「コクが無い」ことも悪い事ではなく、良く言えば「後味スッキリ」とも言える。
早い話が、一皿の料理でもメイン食材はコクの有る味付けに、付け合わせの食材はコクの無い(後味スッキリ)のものにした方が、定食であればメインの料理はコクの有る味付けに、小鉢・副菜・箸休めなどはわざとコクを押さえた味付けにした方が、全体としてより美味しく食べられる、という事は十分に有り得るのである。
つまりは「コクがある」というのは濃厚感や味の広がりや奥深さがある複雑な味ということである。
なお、「コクの有る味」をもたらす成分はすでにほぼ同定されており、アミノ酸から構成されるがタンパク質ほどの高分子ではないペプチドと呼ばれる物質が、コク味をもたらす事が判っている。2010年代後半〜2020年代にかけて、うま味に続く第6の「基本味」の候補として「コク味」と「脂肪味」があげられるようになっている。
ちなみに、「コク味」「脂肪味」ともに、「それ自体にはほとんど味が無いが、他の味を長時間感じさせる効果がある」というもの。(言わば「後味」「味の余韻」を持続させる)
つまり、油っこい食物ほどコクが有るように感じる理由は、油そのものが人間の味覚にとって「コク味」と似た効果をもたらす為である。
また、コク味をもたらすペプチドは「タンパク質を含んだ食材を長時間加熱する」「タンパク質を含んだ食材を発酵させる」事で生じる事が多い。
つまり、「材料を長時間煮込んだ」タイプの出汁やスープの濃厚なうま味(例えばとんこつラーメンや博多風の水炊きなどの白濁スープ)は「うま味成分が大量に含まれている」為だけではなく「長時間の加熱により、「それ単体では味が無いが、うま味成分と合わさった時にうま味をより強く感じさせる成分」も生成された」事によるものである可能性が高い。