概要
兵藤和尊率いる大手消費者金融企業『帝愛グループ』が秘密裏に経営する裏カジノの店長。
原作では苗字のみであったが、2004年に製作されたアニメ版の設定で名前が付与され、2011年に製作された実写映画版でその設定が正式に反映されたことで姓名が明確となった。
アニメ『逆境無頼カイジ 破戒録篇』では浪川大輔が、パチスロ『回胴黙示録カイジ』では置鮎龍太郎が声優を務め、実写映画『カイジ2 人生奪回ゲーム』では俳優の伊勢谷友介が演じた。
来歴
高校在学時は優秀な成績を誇る秀才として学内にその名を轟かせていたが大学進学の道を選ばす、帝愛グループに就職して裏カジノの従業員としての勤務を始める。
懸命に勤務に励みつつ兵藤の気まぐれに任せた理不尽な振る舞いに敢えて従い、大学進学を経て一流企業への内定を掴み取ったと浮かれるかつての同級生の嫌味にも耐え忍び、最高幹部の1人として絶大な影響力を持つ黒崎義裕の庇護の下に力を蓄える中で徐々に頭角を現し、入社7年目にして裏カジノの店長に抜擢される。店長就任後は「一玉4,000円で最低750発を買う300万円の勝負から挑戦可能」という度外視の賭け金と、「一度でも当たればそれまでに累積された賭け金を総取りできる一発台」という博打の醍醐味を体現した裏カジノの目玉である巨大パチンコ台『沼』を引き継ぎ、設定や構造にさらなる改造を施す。
黒崎の対抗勢力であった利根川幸雄の失脚という強力な追い風を受けて有力な幹部候補生として堅実に歩みを進めていた最中、一時的に地上に生還した伊藤開司と沼の攻略に燃える坂崎孝太郎が結託して訪れた一度目の挑戦を軽くあしらい、新たな企みを携えて訪れた二度目の挑戦もあっさりと退けた上でカイジに制裁『血のマニキュア』を施す。その後、利根川の失脚以降に自身の立場を危うくしていた遠藤勇次を巻き込んだカイジと坂崎が三度目の挑戦に訪れ、お互いの知略と奇策を駆使して一喜一憂の戦いを繰り広げるが、幾重にも張り巡らせた鉄壁の防御を踏破する予期せぬハプニングの連続で追い詰められ、ついには万策尽き果てて敗北を喫する。
この勝負の顛末と7億円に昇る巨額の損失で兵藤の怒りを買うと即座に制裁『地下行き』(1000万円の損失で15年とされる目安の70倍に当たる1050年の懲役)が執行され、地下の何たるかをその身に刻むカイジが発した「雑魚を蹴散らし追い払い、這い上がって来い!倒してみろ、俺を!」とする再戦の誓いともせめてもの激励とも取れる言葉を満身創痍の背に受けて思わず感涙し、「当然だ!待ってろ!叩き潰す…、次は!」の返答を最後に兵藤の命を受けた黒服たちに連行される形で裏カジノを去って以降は音信不通、生死不明の状態となる。
ただし、作者である福本伸行曰く「一条はすでに地下から生還している」とする旨を2012年に開催された自身の原画展という公の場で発言しており、今後の出演の有無に関わらず生存の事実が示唆されている。
人物
男臭さを漂わせる登場人物が多い作中には珍しい美男子で、端正な顔立ちに形良く整えた長髪を持ち、かつ頭脳明晰という才色兼備の存在。普段は温和な雰囲気を醸し、スマートな物腰に反して多少の事では動じない豪胆を装っているが、その本性は冷酷にして狡猾。
入社から7年という速さで帝愛グループにおける幹部候補生としての立場を確立するに相応する野望の持ち主であり、それを支える確固たる思想や実力については黒崎も一目置いているが、沼に対する絶対的な自信が生み出す慢心に溺れている面があり、そうした自信を揺るがす想定外の事態に陥ると途端に慌てふためいて愚策に走る点や危険人物であるカイジの存在を軽視していた点など、帝愛グループで責任ある立場に身を置く者としての心構えの未熟さについては黒崎や兵藤から痛烈な指摘を受けている。
二次創作上の一条聖也
作中随一の美形であり、目的のためには手段を選ばないとする行動理念や7年の間に想像を絶する経験を経て現在の地位を射止めた苦労人であるという事実から、これらを誇張して性表現を絡めた作品が少なくなく、実にその大半は被害者、または野望成就のために甘んじて相手の要求を飲んで事に至る受け手として描かれる傾向にある。
原作から独立した二次創作では一条の前後譚を描く方向性が強く、カイジが裏カジノに訪れるまでの順風満帆な店長時代やカイジに敗れて地下送りとなった苦渋の囚人時代の2つを主題とする原作準拠、あるいは全くのパラレルワールドを主題とする完全創作の2系統に大別される。
ただし、どちらの場合でも一条の腹心として裏カジノの主任を務めた村上が大きく関わっており、下積み時代の苦楽を共にした同僚または厚い信頼関係を結ぶ部下として、はたまた自ら地下送りを志願してまで一条を追う従者または一種の恋愛感情を持つ者として登場するなど、一条と村上はほぼ1セットであるという『村一』(村上×一条)の前提が成り立っている。