柚子(鬼の花嫁)
ゆず
概要
『鬼の花嫁』の主人公。
あやかしで最高位にある鬼の次期当主・鬼龍院玲夜の花嫁。
作中の花嫁で最も栄誉ある「鬼の花嫁」に選ばれたことが作品のタイトルとなっている。
人物
長いだけで手入れのされていない黒髪に黒目、水仕事で荒れた手など、本編開始時点では自他共に平凡な容姿。
花嫁になって水仕事から解放され、美容品や化粧品に気を遣うようになってからは多少改善されたと思われる。
元カレの大和、玲夜の秘書の荒鬼高道や玲夜の女性ファンからは「地味」「玲夜(様)に全く釣り合っていない」「同じ姉妹なのに花梨と比べて全然違う」と酷評されているが、幼馴染の浩介や柚子に執着するストーカーからは「可愛い」と一定の評価を受けている。
あやかしで最も美しい玲夜、玲夜に釣り合う美貌の元婚約者の鬼山桜子、かくりよ学園で理想の美しい花嫁と崇められていた花梨と比較対象がハイレベルすぎただけという可能性は考えられる。
しかし柚子も玲夜と容姿が釣り合っていないと嘆くばかりで、花梨や透子のように美容やファッションに気を使ったり容姿を磨こうという努力はしないため、向上心は高いと言えない。
原作は長年の冷遇によって自己評価が極端に低く、不平不満を口にできない環境だったからか内心で毒づいたり、自分を愛してくれる友人やパートナーにはぞんざいな態度や口調で我儘を口にして振り回す、悪気なく失礼なことを言って反感を買ってしまうといったうっかりな所もある。
ネグレクト気味な扱いだったからか報連相をせず単独行動して事件に巻き込まれ、大事にしてしまうという失敗を作中で何度も繰り返してしまい、そのことで(命がけで柚子を助けるために戦ったり、柚子の捜索に駆り出される)鬼の一部から反感を買って柚子が玲夜の妻に相応しいと思えないので、婚約解消するべきという一派まで出てしまう。
我慢の限界に達すると怒りを爆発させて大声で罵声を浴びせる、花梨そっくりな気の強さもある。
漫画版では原作の気が強さから自業自得な顛末を引き起こしてしまった台詞が多いためか、発端となる花梨との姉妹喧嘩を含めて気弱でいつもビクビクしている大人しい性格に変更されている。
そのため冒頭で瑶太に腕を燃やされる経緯が原作と全く異なっており、瑶太と花梨の性格も併せて気弱な柚子に絡む、攻撃的で嫌な性格に変更されている。
辛く苦しいことがあっても黙って耐えてしまう傾向があり、良くも悪くも悲劇のヒロインといった一面が強調されている。
家事は常にやらされていたため一通りできる程度で、料理の腕もさほど高い訳ではない。
最初は玲夜の仕事を手伝えるキャリアウーマンになって高道から秘書を奪おうとしていたのだが、友人たちすら「絶対無理」「(元婚約者の)桜子様に叶う訳がない」と鬼に対抗できるスペックではないと酷評したことで手料理や弁当を作って玲夜に喜ばれたいという方向に転換。
日本最高峰の腕前を誇る鬼龍院家の料理長から直々に料理を教えてもらえる最高の環境にも拘わらず、メディアで人気のイケメン講師が教える人間の料理学校に通い、資格を取って飲食店を開くという、働くことだけが目的で料理のエピソードも特にないまま、料理人という仕事を舐めているとしか思えない暴走をしていくこととなり……。
自分のせいで花嫁から降ろされた女性、花嫁を失ったあやかしが不幸になっていっても一切気にせず、自分のやりたいことしかやろうとせず、花嫁になるため覚悟を決めたはずが花嫁の仕事から逃げ続けるという姿勢は、他の花嫁モノ作品ではかなり異端と思われる。
玲夜以外の花嫁になりたくなかった梓ではないが、玲夜の花嫁になりたいと心から願う人間たちからすれば、玲夜の花嫁に選ばれたのに妻の仕事を面倒がって料理人の真似事ばかり頑張る柚子に対する鬼の反感、花嫁たちの嫌悪と嫉妬は強いが、柚子が改善しようと頑張る気配はない。
開始時点で高校三年生、春のあやかしの酒宴前後に18歳の誕生日を迎えているため、誕生日は4月~5月と推測できる。
18歳の誕生日、祖父母の家で誕生日を祝ってもらったことで父親から理不尽に咎められて暴力を振るわれたり、妹の花梨に誕生日プレゼントを壊されたことが物語の発端となる。
経歴
平凡な中流家庭の長女として誕生するが、妹の花梨が誕生するや両親の愛情は全て花梨だけに向いてしまう。(花梨とは一学年違いのため、柚子には両親から愛情を受けた記憶が一切無い。)
初孫の柚子を可愛がっている父方の祖父母は柚子に愛情を向けない息子夫婦を何度も叱責したが、花梨への偏愛と柚子への冷遇は変わることがなかった。
両親は最初から娘をあやかしの花嫁にして、花嫁の実家があやかしから貰える多額の資金援助で金持ちになりたいという歪んだ思想の元、柚子と花梨を作った。
両親は美少女で愛嬌があって社交的花梨なら花嫁に選んでもらえると豪語し、まだ小学生にもなっていない頃から花梨にのみ教育費と美容代をかけ、親戚から借金をしてあやかしと富裕層の人間しか通えない私立「かくりよ学園」に花梨を入学させるという歪んだ教育を施した。
逆に平凡な容姿で甘え下手だった柚子は花嫁になれる見込みがないと切り捨てられ、幼い頃から姉妹差別されて育つ。
幼少期は両親に愛情不足を泣いて訴えたり花梨と喧嘩して自分の存在を主張していたが、ことごとく両親が柚子を叱るだけで花梨を甘やかし、周囲も両親を止められないという悪循環によって両親と花梨の冷遇は悪化してしまう。
そのため姉妹関係は幼少期から最悪で、花梨から常に見下され、両親は花梨を優先に可愛がるために学校の参観日や遠足、風邪を引いても後回しにされ、誕生日を両親と妹に(誕生日を覚えているのに)一度も祝ってもらったことがないという孤独な子供時代だった。
本編開始時点では家政婦のように両親や妹にあごで使われ、召使のような酷い扱いだった。
小学生で花嫁になった花梨は本来なら透子のようにあやかしの家で同居する慣例に従うはずなのだが、花梨が同居を嫌がったこと、瑶太が花梨の願いを聞き入れて同居を免除する代わり、瑶太が会いたい時に花梨のいる実家に通うという取り決めをしてしまう。
そのため実家は花梨を花嫁だからとより特別扱いして偏愛する両親、花嫁になってから柚子を見下すようになった花梨に召使のようにこき使われ、逆らおうものなら両親と瑶太から暴力や恫喝で支配されるという最悪な家庭環境だった。
両親から生活に必要なものすら買ってもらえないネグレクト同然の扱いを受けていたため、高校に進学すると同時に生きるためにアルバイトを始める。
実家にいるのが辛いため平日は学校後に夜までバイト、週末は祖父母の家に泊まりながら一日中バイトを入れていたため、シフトは扶養上限ギリギリまで入っていたと思われる。(東京らしき描写と飲食店バイトのため、毎月7~8万は稼げた可能性がある。)
しかし折角のアルバイト代も実家を出るため貯金せず、手元に必要な金額以外は花梨に対抗して自発的に両親に殆ど渡し、お金で両親から愛されようと試みるという無駄なことに3年間のアルバイト代を溶かしてしまっていた。
高校卒業後の進路は(花嫁になる前だが)沖縄や九州の大学進学を希望していたが、柚子に必要な金を出さないあの両親が家賃や仕送りがかかる遠方の進学を認めたとは思えないのに、貯金せず両親に金を渡していたので、学費が自前で確保できていたとは到底言い難い状況だった。
その対抗するような行動から花梨に愛される自分(花梨)を妬み家族の輪に入ろうとしない、暗くて地味な姉と余計に嫌われ、瑶太からも花梨をよく思わない嫌な姉で、祖父母から花梨が嫌われる元凶と睨まれ、その遺恨が本編で柚子の幸せに影を落としていくこととなる。
唯一の拠り所は同級生の透子と彼女の婚約者である猫田東吉と祖父母たちだけであり、その両親からの愛情を受けずに育ったため孤独を覚えていた。祖父母から誕生日にワンピースをプレゼントされるが部屋に無断に入ってきた花梨からワンピースを欲しがられ強請られるが当然の如く拒否したために、花梨と喧嘩になった拍子にワンピースが破けてしまい思わず花梨の頬を平手打ちしてしまう。
騒動に駆けつけてきた両親から咎められ花梨のせいだと正答するが、花梨を溺愛する彼女の許嫁である狐月瑶太から怒りを買われ妖の妖術で腕に大やけどを負う。そのまま家を飛び出し絶望していた所、妖の本能でやってきた鬼龍院玲夜と出会い、彼から見初められ、愛される喜びを知ると同時に様々な困難を乗り越えることとなる。
漫画版では自分の部屋が引っ越し業者が搬出を終えたかのように殺風景で、旅行鞄一つに必要な物が全部収まってしまうほど私物が少ない悲惨な描写がされている。
その歪んだ家庭環境は親族の祖父母は元より親友の透子、猫田東吉(にゃん吉)、浩介といった親しい友人からは気の毒に思われており、客観的な鬼の身辺調査では「花嫁様(柚子)は妹が花嫁になる前から家庭内で虐げられていた」と一日もしないうちに報告に上がったほど。
花梨と一緒に柚子に危害を加えていた瑶太ですら、後に「君(柚子)の目から見たら家庭なんてとても言えたものではなかった」と柚子に同情を示している。