曖昧さ回避
- 機体略号J7W1。第二次世界大戦末期、日本海軍が試作した単発単座の局地戦闘機。
- アニメ「ストライクウィッチーズ」シリーズに登場するストライカーユニット。
- ゲーム「新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド」に登場するトライデント型陸上軽巡洋艦 (LAND CRUISER T・SHINDEN・T)。
- アニメ「ガサラキ」に登場するタクティカルアーマー。17式改。
- 映画「ゴジラ-1.0」に登場した戦闘機。1.と同一。 → 「震電(ゴジラ)」を参照
本項では1.と2.を解説する。
1.第二次世界大戦末期の戦闘機
機体後部に推進式プロペラ、機首付近に小翼を配した機体形状は『前尾翼型』(「カナード機」、「エンテ型」などとも)と呼ばれるもので、B-29迎撃の切り札として期待されていた。1945年6月に試作機が完成、同年8月に数度の試験飛行を行った所で終戦。実戦投入には至らなかった。
設計は鶴野正敬大尉。テストパイロットも務めており、
「ぼくのかんがえたさいきょうのせんとうき」を自分で作って自分で飛ばすという、男の子の夢を叶えた稀有な人物である。
現在、アメリカで試作一号機が分解状態で保存されており、胴体が展示されている。
また、福岡県の大刀洗平和記念館には実物大のレプリカが展示されている。
末期の迎撃戦闘機
1945年8月3日、試作機の初飛行に成功(250km/h)。その後6日、8日と試験飛行が行われたがエンジンが故障し、部品を取り寄せている間に太平洋戦争が終結してしまった。
どうにか初飛行を終えただけであるのだが、以下の課題点が発覚した。
- エンテ型の構造上ストール(失速)を起こしやすく、機首が下がりやすい(後述の「エンテ型」の項も参照)。
- 着陸態勢になると急に跳ねやすくなる。
- ちなみに横安定性は良好だった。
- プロペラのカウンタートルクを相殺しきれずに勝手に右に回ってしまう。
- 当初予想されたエンジン過熱こそ無かったものの、慣らし運転の段階で油温過昇傾向があった。
全般的に安定性が不足しており現状のままでは飛行機としてさえ未完成ともいえる代物であった。
搭載したエンジンは三菱の「ハ43」だったが、こちらもキ83や烈風の量産初号機に搭載されたエンジンで、大戦中には大量生産段階に入れずこれまた大きな課題となっていた。
もしも戦争が長引いていたとして、上述の有様では完成までちゃんとリソースを注いでもらえたか疑問符がつく。
そして万が一実用化にこぎつけたとして、最高速度750km/hの計画値では、当時アメリカ陸軍が配備を計画していたP-51H(759km/h。ただし緊急出力使用時)に対して優位性は得られない。
一撃離脱戦法も熟練パイロットが不足していた当時の日本海軍に向いていたかは疑問が残る。
しかし同時代の日本軍戦闘機に類を見ない特異な形状と、カタログデータ上は群を抜く速度性能から、架空戦記などでは活躍の場が多く、たいていは烈風と共に最強クラスの戦闘機として君臨する。
実際の震電はB-29の迎撃に全振りした設計だった(空戦フラップの搭載を要求する声もあったが、必要なのは格闘戦能力ではなく高速性であるとして却下された)のだが、そんなことはお構いなしに戦闘機とドッグファイトを行う作品も多い。
ジェット化したタイプも登場し、そちらは便宜上震電改と呼ばれるが、史実においてジェット化についての具体的なプランは存在せず、九州飛行機関係者による「ジェット化できるかもしれない」という思い付きの走り書き程度にとどまっており、別の関係者による「計画があったのは事実だが具体的には何も進んでいなかった」との証言もある。
エンテ型
当時、エンテ型の機体は各国で開発作業が進められていた。運動性に優れ、高速化に有利で、機銃などの武装を機首に集中配置でき、戦闘機として大いに期待されたのである。が、だが一つとしてモノになるものは無かった。エンテ翼は運動性が軽快になる反面、操縦性は(極めて)神経質になってしまうのである。
この問題はコンピュータによる飛行制御(FBWやCCV)が出来るようになるまで残り、つまり1970年代以降を待たなくてはいけない。
こんなリスキーな代物を採用したことについて、設計者の鶴野大尉は「つい、やっちゃったんだZE☆」とコメントしている。非常に男のロマンがわかる御方だったようだ。ただし震電の実験機(実機と同形状、同寸法のモーターグライダー)に限って言えば通常の牽引式飛行機に比べ操縦感覚の違いはほとんどなかったという。
先尾翼型?前翼型?
本記事においてはエンテ型のことを「先尾翼型」として紹介しているが、資料によっては「前翼型」と呼称することがある。
また鶴野氏自身も晩年「先尾翼型」という呼称について「尾翼は本来飛行に必要な揚力を生み出しているわけではないので、このような機体形状を指す呼称としては適切ではない」と否定的な見解を示している。
初期の飛行機の中には水平尾翼に揚力を発生させる機能を持つ機体もあり、また近年ではCCV・FBW技術の発達に伴い水平尾翼にプラスの揚力を発生させる機能を持つ機体も存在することもあって考え方次第ではあるが、尾が先にあるというややこしい表現であることもあって「前翼型」という呼称を採用する資料も多かった。
こっちはこっちで全翼機と紛らわしいという欠点もある。
九州飛行機
WIKIによると、現在のJR南福岡駅から陸上自衛隊福岡駐屯地周辺に雑餉隈工場があった。
1953年、春日市に移転し、「渡辺自動車工業」として再出発。
1958年、航空機製造技術をバス車体製造に応用して西鉄の傘下に入り、西日本車体工業の一員となる。
1992年に佐賀県基山町に移転するも、2001年に解散した。最後に工場を構えた跡地には、現在、こちらも西鉄の関連会社である西鉄車体技術の工場が存在する。
なお、源流企業であり航空機製造部門を九州飛行機として分離した渡辺鉄工所(現・渡辺鉄工)は帝国海軍の艦艇用魚雷関連機器製造メーカーとして有名であり、現在も海上自衛隊向け艦艇用魚雷発射管を製造している。帝国海軍航空機でのメーカー記号「W」は渡辺鉄工所の頭文字が由来である。
余談
- アメリカ陸軍でもカーチスXP-55という先尾翼の推進式レシプロ戦闘機が試作されていたが操縦性に問題があり開発は中止された。愛称はアセンダー(ASCENDER)。「上昇」という意味であり開発チームが半ば冗談で命名したとか。
- 同時期に実用化に成功した推進式プロペラ戦闘機としてはスウェーデンのサーブ21があるが、エンテ型ではなく双ビーム式である。ジェットエンジンへの換装も実現したが、機体は50%再設計した。
- 当時の鶴野大尉へ向けられた批判に「自然界に存在しない形状には何らかの欠点がある」というものがあったとされるが、エンテ型とおぼしき滑空生物もいる。
登場作品
前述のように特異な形態とカタログスペック上の高性能から人気が高く、架空戦記ではおなじみの戦闘機となっている。
彩京のシューティングゲーム「ストライカーズ1945」と「戦国エース」では自機として使用可能な機体として登場。
攻撃力と移動性能に特化した性能を持ち、必殺技(ボム)として全機体中最高の威力を誇る「サムライソード」を有する。
いずれもパイロットはアイン。
- 艦隊これくしょん
ブラウザゲーム「艦隊これくしょん」では「震電改」が空母搭載用の艦戦として実装された(ここでの「改」は上記のジェット化ではなく艦載機化を指す)。
艦これ初のイベントである2013年春イベント『敵艦隊前線泊地殴り込み』の突破報酬として配布されたが、いわゆるヒラコーショック前後の艦これがまだマイナーだった時代のイベント報酬であったため、所有者は非常に少なかった。そしてこれ以降約10年もの間ランカー報酬としても任務報酬としても再配布されずオーパーツと化していた。
最初期の機体のため索敵、命中、回避、対爆などの付加性能はないが、制空値は+15と現在でも最高である(最大改修した「零式艦戦53型(岩本隊)」でも制空値+14)。
2023年4月23日、『絶対防衛線!「小笠原兵団」救援』の最中から終了後の6月14日まで期間限定ではあるが『【艦隊10周年記念任務:拡張任務】特別工廠』により誰でも「震電改」が入手可能となり、所有者が大幅に増加した。
2024年1月1日、『新春【拡張作戦】一航戦五航戦、新年協同作戦!』でも選択報酬として用意された。
また、艦載機型ではなく、史実と同様に航空基地に配置する「試製震電(局地戦闘機)」も2024年に登場した。制空能力はトップクラスだが、出撃半径が小さく、やや使い所は限られる。
- 鋼鉄の咆哮シリーズ
日本型の戦闘機として震電及び震電改が登場。震電は30mm機関砲と対空ロケット弾を、震電改はロケット弾の代わりに短距離AAMを装備する。
PS2/PSPの『ウォーシップガンナー2』ではいずれも57mm機関砲と30mmバルカン砲に変更されている。
また『ウォーシップガンナー2』には500lb爆弾を装備した攻撃機型「震雷」(PS2版)、パルスレーザーと魚雷を装備した攻撃機型「神電」(PSP版)が登場する。レアアイテム扱いとはいえ最高時速4200km(マッハ3.4)という化け物じみた性能が特徴。
また第1作ではSu-47が「震電II」として登場していた。
震電が登場した作品としてはかなり初期の部類に入る作品。大学の地下に眠っていた震電の試作2号機を自動車部が発掘・修理し、学園祭のイベントで試験飛行を行う。
しかしこの大学は千葉県にある。なぜこの場所に埋まっていたのかは謎で、空技廠あたりが九州飛行機と同時進行で別の改良を進める(例えば雷電の排気タービン装備型は空技廠と三菱それぞれで並行して開発されていた)べく関東に送らせたとも、本土決戦では連合国軍はまず九州に上陸すると予想されていた(連合国側の作戦計画でもそうなっていた)ことから、開発拠点を移転しようとしていたとも、占領軍の命令で接収され回送されてきたが、渡すことを潔しとしない関係者が千葉に隠して埋めたとも推測されている。
江田島平八が敵組織の基地に乗り込むために搭乗する。
テレビアニメのラスボス・イケスカ市長イサオの愛機として登場。本来ジェット機で用いられるマニューバのクルビットを駆使する強敵として立ちはだかった。最終決戦ではジェットエンジンに換装した震電改も登場している。
主人公のキリエからは震電の特徴的な作りとイサオに対しての皮肉も合わせてケツ頭野郎と呼ばれている。
マタ・タミが変身した戦闘機「しん電」として登場。野原しんのすけが搭乗しマック・ラ・クラノスケの変身した飛行機と空中戦を繰り広げた。
震電の登場する架空戦記の代表例。排気タービン付のエンジンに換装し機首に57mm機関砲を装備した「蒼莱」として登場する。
国立科学研究所の職員が趣味で復元した機体が登場。
魔法文明が発達した異世界において、日露戦争~第一次世界大戦レベルの科学文明国家であるムーの日本使節団が、地球から転移してきた日本国にて古書店から設計図を入手。対グラ・バルカス帝国戦に備え、T-4ジェット練習機またはビジネスジェットのエンジンを搭載した震電改として開発に着手する。
なんと実写作品初登場。一緒に登場した旧帝国海軍軍艦や旧帝国陸軍兵器らなどと共に特撮怪獣映画に初出演しただけでなく、シリーズ史上初となる初めてゴジラと交戦した旧日本軍兵器の一つとなった。「震電(ゴジラ)」の記事も参照。
前述の大刀洗平和記念館に展示されているレプリカは本作の撮影で使用されたものである。
2.ストライカーユニット
扶桑皇国の新世代ストライカーユニットの1つ。2期で宮藤一郎博士から娘の芳佳に宛てられた手紙によって完成に至っている。遣欧艦隊の旗艦「大和」に積まれていた試作1号機を芳佳が装着して使用し、以降は彼女の専用機となる。最終話で烈風丸と共に海岸に打ち捨てられていたが、劇場版で回収・修復経て芳佳の元に戻ってきた。
3期では当初は震電ではなく紫電二一型が支給されたが、第10話から登場する。「オペレーション・サウスウィンド」で芳佳の決戦兵器として送られたが、芳佳はその時魔法力を消耗してしまい作戦から外されたため使えなかったが、12話で服部静夏が一時装着して飛行した後、魔法力が復活した芳佳が装着してネウロイの大群を圧倒していた。
製造元は筑紫飛行機となっている。
開発秘話
新世代ユニットとして開発が進められていたが、宮藤博士のメモで完成した新型エンジンには宮藤芳佳と同等レベルの魔力があるウィッチでないと起動すらままならないという実用上の難点が発見され、そのエンジンを乗せた試作機が彼女に送られた。しかし、実用製品としては失敗作になりかねないため、エンジンなどを敢えてデチューンした仕様が造られたという。その点では聖剣の名を持つ可変戦闘機と同様の設定となっている。
関連タグ
福岡空港:試験飛行が行われた