機動戦闘車
きどうせんとうしゃ
概要
機動戦闘車とは、防衛省により開発が進められている装輪装甲車。俗にいう装輪戦車である。
2013年10月9日、神奈川県相模原市にある防衛省技術研究本部陸上装備研究所にて報道陣向けに実車が公開された。開発完了は2015年、部隊配備開始は2016年以降を予定している。
26中期防(平26~平30)において99両を調達し、平成35年までに約200両から300両を調達する予定。
これは同中期防衛力整備計画において戦車定数を削減して本州から戦車部隊を廃止し、北海道と九州に集中配備させ、本州・四国に本車を配備する方針であることが記された。
……と言うことは、(当然ながら)機動戦闘車は「戦車」の定数には含まれないということになる。分類としては「装甲戦闘車両」に含まれる。
しかし96式装輪装甲車が18年間で約360両(年間10~30両。尚も調達継続中)、82式指揮通信車が18年間で約230両(採用直後を除き年間10~20両。こちらは調達終了)、87式偵察警戒車は27年間で約110両(採用直後を除き年間1~3両。調達継続中)と言う調達速度を考えれば、5年で200~300両と言うのは単純に年間40~60両を調達する計画。一体どこにそんな予算があるのかはわからない。
もしかしたら予算執行の関係上、減るかもしれない……
開発においては将来装輪戦闘車両や10式戦車で得られた技術をフィードバックして行われている。
見た目は96式装輪装甲車に10式戦車の砲塔を乗っけたように見える。(あくまで見た目は、の話。)
能力
火力
主砲は105mmのライフル砲を装備する。
これは74式戦車の弾薬を転用する為であるが、砲自体は新規開発の国産砲であり、砲身長も74式の51口径に比べて1口径分延長された52口径である。
因みに戦闘室(特に砲塔内部)レイアウトの関係上自動装填装置は搭載されていない。
また、本車用に74式戦車で使われていた対戦車榴弾「91式105mm多目的対戦車りゅう弾(特てん弾)」が調達されている為、対戦車戦闘能力を保有する。
反動制御技術や火器管制装置は10式戦車の技術が流用されており、後述の射撃安定性に繋がっている。
一般にこういった車両は戦車よりも大幅に軽量で(本車両は約26トン、10式戦車が約44トン。10式も戦車の中ではだいぶ軽い方。)、軟らかいタイヤにより接地している為、射撃時には不安定となる。
しかし防衛省が公開したこの動画では、最も不安定な行進間側方射撃においても動揺が比較的少なく、高い安定性を持っていることが窺える。
また、個人が編集した動画で諸外国の同様な装甲戦闘車両の比較動画が存在するが、比較対象の車両の中では発砲時の動揺が小さい部類に入っている。
それに、これらの動画において機動戦闘車が行っているのは最も難易度が高い「スラローム射撃」。それでこの程度の動揺なのだから恐れ入る。他の類似車両が行っているのは「前方へ向けての行進間射撃」や「停止時の側方射撃」、「静止時の前方射撃」で、物によっては静止時の前方射撃においてもかなり動揺している。このことから機動戦闘車に使われている反動制御技術はかなりの性能を有していることになる。反動どこ行った?
10式の技術がフィードバックされている為なのか何なのか、「反動」と「慣性」の殆どをどこかに落っことしてきたかのような反動である。
防御力
歩兵携行式対装甲火器(無反動砲とか対戦車ミサイル)に対しての抗甚性はあるとされているが、車体下部のサスペンションや駆動系統に防御はされておらず、地雷や即席爆発物(IED)に対しては脆弱性を危惧されている。
またレーザー誘導式ミサイルに対する防御の為のレーザー検知器や発煙弾発射器も装備されている。
機動力
4軸8輪のタイヤにより、舗装路を最高時速100キロメートルで走行できるが、一方で不整地走破能力は装輪式故に低い。
しかし装輪戦闘車開発において「路外走行時の動揺制御技術」が研究されている為路外機動性克服にある程度の目処が付いた為とされている。
戦略機動性に関しては現在開発中の新型輸送機C-2による空輸が行えるとの報道がある。