概要
木城ゆきと原作のSF格闘漫画。最初は2011年に廃刊となったビジネスジャンプにて連載された。木城ゆきとの代表作であり、サイバーパンクを地でいく世界観・高い画力に裏付けされた綿密な作画・強引な屁理屈で読者を納得させてしまう超設定などなど挙げればきりがないほどの魅力が詰まった作品である。
コアなファンを獲得したが、木城氏が連載に限界を感じたため8巻にて終了。
その後ウルトラジャンプにて2000年から続編である「LastOrder編」を執筆。しかし旧銃夢の再版時における台詞変更で集英社と衝突し、現在は講談社刊行誌「イブニング」に連載の場を移している。
ストーリー
舞台は遠い未来の地球。空中浮遊都市ザレムの下にある荒廃の都市クズ鉄町で幻の格闘技「機甲術」使いのサイボーグ少女ガリィが復活するところから物語は始まる。
退廃と汚濁が渦巻くクズ鉄町で、傷つきながらも成長し戦い続けるガリィはやがて世界の成り立ちと自身の出生の秘密に迫る・・・。
主な登場人物
無印
- ガリィ:主人公。数百年前の残骸から発掘された記憶喪失のサイボーグ。特殊格闘技術「機甲術(パンツァークンスト)」の使い手。
- イド・ダイスケ:元ザレム人のサイバネ医師兼ハンターウォーリア。ガリィを拾い親代わりとなる。
- ユーゴ:ザレムへ行く事を夢見る少年。ガリィの初恋の相手だが…。
- ジャシュガン:サイボーグ球技「モーターボール」のチャンピオン。
- ディスティ・ノヴァ(ノヴァ教授):「業(カルマ)」を研究するマッドサイエンティスト。「ザレム人の秘密」を知っている。
- フォギア・フォア:港町育ちの無骨な男。「対サイバネ骨法」という格闘技を使う。
- ルゥ・コリンズ:ザレムとの司法取引で工作員となったガリィをサポートするザレム人の女性。
- ケイオス:ノヴァの息子。人気ラジオスターにしてサイコメトリー能力の持ち主。
- 電:盗賊団バージャックを率いる巨大サイボーグ。
LastOrder以降
- ゼクス:ガリィを模したアンドロイドの6番目。男性の人格を持ち真の戦士となる事を目指す。
- エルフとツヴェルフ:ゼクスと同じアンドロイドの11と12。能天気で享楽的。
- ピング・ウー:凄腕のハッカー。ガリィ達に協力する。
- ザジ:火星王国議会派の戦士。わけあってガリィ達と共に戦う。
- カエルラ・サングウィス:「星の幼稚園協会」の理事長。本名はヴィルマ・ファキーリで700年も生きている吸血鬼である。
- アーサー・ファレル:かつて隕石落下により壊滅した文明を建て直し宇宙時代を到来させた人物。現在はメルキゼデクの擬似人格として登場する。
- アガ・ムバディ:「太陽系条約調停議会(LADDER)」の議長補佐にして黒幕。世界の秩序と平和のためならば非情な手段も厭わない。
- 刀耳(トージ):超電磁空手八段「虐殺士」の腕を持つサイボーグ空手家。空手の未来の為に空手星建設を目指す。
- 絶火(ゼッカ):「伝説の拳豪」と呼ばれる凄腕の空手家。いかなる勢力にも属さず漢のロマンを追求し続ける傍若無人な男。
- 呑破(ドンファー):絶火のライバルで超電磁空手の創始者。
用語
- クズ鉄町:ザレムの廃棄物を再利用して生活する都市。サイボーグが多く治安が悪い。現在のミズーリ州カンザスシティにある。
- ハンターウォーリア:いわゆる賞金稼ぎ。ハンターの登録コードは脳表面のグリア細胞に刻印される(指紋や虹彩はサイボーグ手術により交換が可能なため)。
- モーターボール:レースと球技を掛け合わせたスポーツ。競技の中ならば殺人すら許容される過激なルールから人気を博している。
- サイボーグ:作中ではサイバネ技術が一般化されており多種多様なサイボーグが存在する。
- バーサーカーボディ:全体がナノマシンで構成されたサイボーグボディ。宇宙戦争で使用され、バーサーカーの名の通りの戦いぶりで破壊と殺戮をもたらしたとされる。
- 競技用ボディ:モーターボールの選手が試合に使用するボディ。車輪を仕込む以外に制限は無いらしく、様々なタイプが登場している。
- イマジノス体:LastOrder序盤にガリィに与えられたボディ。バーサーカーボディの不安定さを修正し、持ち主の意思に応じて変化が可能になっている。
- フィジロイ体:サイバネ技師のヤニが開発したボディ。『ポリティン・ゾル』という物質を体内で循環させる事で強大なパワーを生み出す。絶火とゼクスが使用。
- 武術:サイボーグなどの技術の普及により従来の武術もそれらを活かしたものとして進化した。
- 機甲術(パンツァークンスト):ガリィの使う武術。振動や衝撃波を用いる。
- 対サイバネ骨法:生身の脳にダメージを与えるというサイボーグに対抗する事に特化した武術。
- 空手:超電磁空手や超甲殻空手など様々な流派し、もはや空手なのかどうかも分からないトンデモ流派もある。
- ファクトリー:ザレムで消費されるのあらゆる物資を生産する施設。
- ファクトリー法:クズ鉄町およびファクトリー(ザレム)の勢力圏内における法。ザレムの安寧を第一としている。重火器や飛行物体の使用や所持は最も重い罪とされる。
- デッキマン:ファクトリーの運営を行う筒状のロボット。人間の顔の皮膚と脳が使われているが、飽くまで生体部品であり人間としての意識は無い。固体によって顔としゃべり方が異なる。
- ネットマンファクトリーやクズ鉄町の治安維持を担当するロボット。細身で自律歩行が可能で腕のパーツを換装すればミサイルなどを撃てる。デッキマンに比べると影が薄い。
- バージャック:ザレムの破壊と地上人による国の建国を目指す過激派武装集団。名の由来は「馬借」。
- ザレム:地上を支配する空中都市。住人は生身の人間で選民思想が強く地上人を下等な存在と見下している。
- TUNED(チューンド):ザレムの地上監視局との取引でガリィが勤めた治安維持用の特殊工作員。
- GRシリーズ:TUNEDで集めたガリィの戦闘データを基に作られたアンドロイド。ガリィ(GR-1)を含めて12体存在する。GR-2はガリィ、GR-10はバージャックとの戦いで破壊され、3から5、7から9の6体もゼクスに破壊された。
- ザレム人の秘密:ザレム人は成人を迎えると儀式として脳を摘出し記憶や人格をコピーした小さなチップと交換される。秘密を知った者は粛清対象となる。また、チップには稀にバグの存在するものが生産される。
- イェール:ザレム上空に存在する宇宙都市。
- ユナニマス・システム:イェール住人の脳に埋め込まれたナノマシン「調停機(ピースキーパー)」により攻撃的な感情などを抑制するシステム。
- インキュベーター:ユナニマス・システムにより無意識下に生じたストレスを肩代わりする機械(ピング曰く「公衆便所」)。ザレム人から摘出された脳が使用されている。
- ロボアジール:イェールに寄生するように存在する「ロボットの王国」。
- 金星共和国:太陽系における大国の一つ。バイオテクノロジーが発達しており、あらゆる物がバイオ技術で作られる。住人は遺伝子操作でハンプティ・ダンプティと形容される姿をしている。金星関連の用語はフランス語が使われる。
- 木星連邦:金星と双璧をなす大国。人間はおろか猫や牛までが多面体のサイボーグとなっている。用語にロシア語が使われるなど、旧ソ連を思わせる描写が多い。
- 火星:様々な勢力が混在する星。機甲術の本拠地もここにありガリィの故郷でもある。
- 水星:ザレム人の科学者Dr.ヴァレスの起こしたテロによりナノマシンのみが存在する星
- 太陽系条約調停議会( LADDER ):イェールに本部を置く太陽系各国の議会。
- 森羅天頂武闘大会(Zenith Of Things Tournament):略して「ZOTT」。LADDER主催の格闘トーナメント。優勝チームには独立自治権が与えられるという名目だが、実際は自治権を求める不穏分子を潰し合わせるのが目的であり、勝ち進んでも準決勝でシードである金星か木星のチームによって倒される事になる。また、決勝戦は金星と木星の代理戦争も兼ねている。
- メルキゼデク:ありとあらゆる問題に対する答えを出すために作られたスーパーコンピューター。
- ファタ・モルガーナ:アーサーからヴィルマに託されたものをガリィが受け取った特殊なメモリー媒体。メルキゼデクの失われたキープログラムが記録されており、あらゆる情報にアクセスが可能。
- エクスカリバー:長い歴史の中で失われたメルキゼデクのマスターキー・プログラム
- 不老化技術(メトセライズ):200年前にピングが広めた技術。人が死ななくなった為人口増加の問題が起こり、出産の禁止や子供の存在が違法となるなどの弊害が起こっている。
- V型ウイルス発症者:致死性ウィルスの感染から生き延び、不老不死、吸血、超身体能力などの特殊な能力を得た人間。いわゆる吸血鬼。
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