概要
元々は「ベルセルク」と呼ばれる、北欧神話に登場する異能の戦士達の事を指す。
英語表記では“Berserker(バーサーカー)”と書き、元々のノルウェー語では“Berserk(ベルセルク)”と書く。
また、英語では“Berserk”だけで「怒り狂う」と言う意味の動詞扱いにも成り、日本語ではしばしば“狂戦士”と訳される。
一般には英語の“Berserk”をドイツ語読みした物を「ベルセルク」と解釈されているが、本来はノルウェー語の「ベルセルク」が先に有り、それを英語読みした物が「バーサーカー」である事に注意。
日本では、ファンタジー物の小説の翻訳などで英語表記の「バーサーカー(Berserker)」が定着してしまった為に、この様な誤解が定着している。
北欧神話のベルセルク
軍神オーディンの祝福をうけた戦士達。
戦いに際しては正に鬼神の如く戦うが、戦いが終わると暫くの間茫然自失となる。
ベルセルク達は自身の中に熊や狼の様な野獣が乗り移ったと考え、その状態で戦っている時には敵味方の区別さえもつかなく成った。
その為、王達もその戦力を大いに期待してはいたが、決して自分達の護衛としては近付けなかった。
名前の由来は古ノルド語で、
- 「熊(ber)」の「上着(serkr)」を着た者
- (鎧などを)何も着ない者
~の2つの説がある。
ウールヴヘジン
北欧神話には、他にもベルセルクと同様の勇猛な戦士に「ウールヴヘジン(úlfheðinn)」が存在する(ウルフサルク、ウルフへズナルとも)。
名前の由来は「“狼(úlfr)”の“上着(heðinn)”を着た者」を意味しており、ベルセルクと同様に軍神オーディンの祝福を受けた存在で、文字通り狼の様に勇猛に戦ったとされる。
ウールヴヘジンは鎧等を一切身に着けずに、狼の毛皮のみを羽織って狼その物に成り切って、相手に噛み付いて戦ったとも言われている。
また、北欧神話に登場する英雄シグムンドや英雄シンフィヨトリは狼に変身して戦ったと言われ、これらの伝承や神話が中世のヨーロッパ社会に伝わり、その過程で所謂“狼男伝説”が生まれていった…と言う解釈もある。
イメージの変遷
12~13世紀の歴史家スノッリ・ストゥルルソン(Snorri Sturluson)は、
「ハーラル1世(ノルウェー王)の親衛兵はベルセルクであり、如何なる武器を使っても傷付けられない」
と述べている。
この記述がイギリスに伝わり、本来は職業や階級を表していた「berserk(ベルセルク)」という言葉が、やがて英語表現での「go_berserk(バーサークする=我を忘れて怒り狂う)」という表現の語源と成った。
ストゥルルソンはアイスランド出身の政治家でもあり、その言葉には当時の北欧社会では大きな影響力を持っていた。
やがて時代が下がるに連れて、ベルセルクという言葉は「無法者」や「野蛮人」と言う意味合いが強くなる。
これは中世ヨーロッパ社会の多くがそうであった様に、北欧でも兵士は戦時のみにその土地の豪族や農民が武器を取って戦う、あくまでも一時的な戦闘者である事が普通であった為。
所謂“職業軍人”としての戦士階級で有ったベルセルク達が、「戦争=殺人」のみで生計を立てている異常な集団と目されていたからである。
様々な作品に登場する「バーサーカー」・「ベルセルク」
北欧神話に登場する神々や英雄達の名前をモチーフとしたコミックや小説は数多い。
『ベルセルク』 | 三浦建太郎のコミック作品。第一話のラストシーンにおいて、ガッツの壮絶な戦いぶりを見たパックが「…狂戦士(ベルセルク)…」という言葉を残しており、作品を通してガッツそのものを指している言葉とも言える。 |
---|---|
『Fate/stay night』 | TYPE-MOON制作のPC用ゲームで、「バーサーカー」というキャラクターが登場する。尚、近年ではpixivサイト内で「バーサーカー」という言葉を用いた場合、専らこのゲームキャラクターの事を指す場合が多い。詳しくは「バーサーカー(Fate)」へ |
『バーサーカー(小説)』 | SF小説シリーズ。遠い銀河から襲来し、全ての生命体を殲滅する為に活動する、人工知能を搭載した無差別殺戮兵器の事を、人類側がバーサーカーと呼称する。本作に限らず、自己複製する殺戮機械といった存在は様々な作品に登場する。 | フレッド・セイバーヘーゲンの
『サイバーナイト』 | トンキンハウスからPCエンジン用RPGとして発売された本作に登場する敵キャラクターの総称。銀河中心域に生息する珪素生物であり、戦闘機械群。見境無く攻撃を仕掛けている様に見える事からソードフィッシュの乗員が北欧神話からの引用でバーサーカーと命名する。 |
『ロードオブヴァーミリオン』 | スクウェア・エニックスのアーケード用カードゲーム。シリーズ初代から登場する女戦士キャラ。彼女の戦う姿を見た古兵からオーディンの加護を受けていると称されたりもする。詳しくはバーサーカー(LoV)へ |
ゲーム内職業としてのバーサーカー
RPGやシミュレーションゲーム等において、「バーサーカー」という名称が職業名として用いられている事がある。
特に前述の通り、近年の日本国内でのヲタクシーンで「バーサーカー」という言葉を用いた場合、『Fate』シリーズのバーサーカーを指す場合がほとんどである。
『Fate』シリーズのバーサーカー
クラス能力は「狂化(バーサーカー化)」。身体能力が強化される代償として、理性や思考能力、言語能力、技術などが失われる。
クラス名であると同時に、作品内のキャラクター名としても用いられる。
ファイアーエムブレムシリーズのバーサーカー
作品によって呼び方は変わるが、山賊や海賊、蛮族と言った荒くれの上級職。
使用武器は斧。力と速さが高く、必殺の一撃を得意とする。
何かしらの形で必殺率に補正が入っており、敵として対峙すると事故が怖い。
封印の剣では必殺率+30%だったが、あまりにも強すぎたせいで烈火の剣以降では15%に下方修正された。
その後、スキルが実装される作品に成ると、命中率が下がる代わりに必殺率が上がる「一発屋」、HPが半分以下になった際に必殺率が大幅に上昇する「怒り」等がバーサーカーのスキルと成り、より複雑な戦略が求められる様に成った。
基本的には男ユニットだが、最近では女バーサーカーも出現した。
女神転生シリーズのベルセルク
『デビルサマナー』で初登場した悪魔。種族は妖鬼(『真・女神転生デビルチルドレン』では妖魔にカテゴライズされており、デザインも全く異なる)
野獣の毛皮を見に纏うサイケデリックなボディペイントの戦士として表現されている。
峰がギザギザとした赤い刀剣でワイルドに戦うのが特徴で、属性は意外にもNEUTRAL-CHAOSで表されるが、恐らく獣と人の姿を行き来する存在であるからだろう。
主に物理攻撃を得意としており、以降も『ディープストレンジジャーニー』、『デビルサバイバー2』、『ペルソナQ2』等の外伝作品で活躍。
特にデビサバ2では大阪に住む召喚者である和久井啓太の悪魔として登場(CV:小野友樹)。狂戦士が由来にしては高所から落ちた新田維緒を優しく受け止めるなど主人の命令に忠実かつ理性的。
一般的なバーサーカー
共通して見られる特徴は肉弾戦において無類の強さを誇り、常人の数十倍の身体能力を有する。
また、痛みや疲れを感じず、理性を失い、敵味方関係無く周囲の敵性存在を殲滅するまで暴れ回る事が多い。
暴走する変身ヒーローの様なもので、バーサーカーである状態と常人に近い状態を切り替える事が出来る者もいる。
また、凶暴性や狂気性の強調として、戦闘時以外は物静かだったり、極端に優しそうだったりする。
ゲームによっては、魔法等といった特殊能力は使え無くとも純粋な戦闘能力は最強クラスとして扱われ、戦闘と魔法の両方をハイレベルでこなす勇者と対の職業と見なされる事もある。
その他のバーサーカー
- 『ドラゴンクエスト』シリーズのモンスター。→バーサーカー(DQ)
- 『ファイナルファンタジー5』のジョブ名。高い攻撃力とHPを持つがコマンド入力出来ず、戦闘が終了するか自身が戦闘不能と成るまでひたすら戦う。
- 『オウガバトル』シリーズのクラス名。
- 『ウィザードリィ・エンパイア』に登場する職業(ベルセルク・狂戦士)。固有武器に「竜殺し」があり、先に挙げた三浦建太郎のコミックのパロディと思われる。
- 『カルドセプト』シリーズに登場する無属性クリーチャー。敵に与えたダメージが一部自分に返ってくる。
- TCG『デュエル・マスターズ』における種族の一つ。→バーサーカー(デュエル・マスターズ)
- 『スプラッターハウス』の海外リメイク作品『SPLATTERHOUSE』のバーサーカーモード。主人公リックが変身し、一定時間無敵状態で暴れまわる。
- 『究極超人あ~る』に登場するロボットの一種。通称晩餐会。前述のセイバーヘーゲンの小説に登場するバーサーカーのパロディ。
- 『ファイアーエムブレム』シリーズの「山賊」、「海賊」、「蛮族」の上級クラス(「狂戦士」と表記される事もある)。シリーズによっては必殺率に補正がある場合もある。
- 『悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス』でシャーロットが習得できる魔法の1つ。一定時間攻撃力が大幅に上がる代わりにその間は下記の状態異常の「バーサク状態」と同様に攻撃しか出来なく成る。使いどころに困る魔法だが、非常に有用なアイテムを得る為に必要。(そのアイテムを得る条件に「全ての魔法を習得する」というものがある為)
- 『ウルフファング』に登場する装甲機兵(ロボット)の一種。そのデザインとカラーリングからプレイヤーの間ではドムと呼ばれる事もある。所謂中ボスであり、"I can not be harmed!"(俺を倒す事はできないぜ!)の台詞と共に現れる。常に腕で防御態勢をとっており、この間はダメージを与える事が出来ないが、接近時にジャンプしながらビームソードで斬りかかる瞬間が唯一の攻撃のチャンスと成る。但し、不用意に近づくと貫手によるカウンター攻撃を行ってくる。ステージによっては、グリーンとオレンジの2機のバーサーカーによる挟撃を受ける事もある。
- 『サモンナイト』の登場人物ユエルの上位クラスとして「ベルセルク」がある。
- 『白猫プロジェクト』の職業の一つ。
- 『BanG_Dream!』の登場人物朝日六花の異名が「ギター狂戦士(バーサーカー)」である。
- 『キングダムハーツ』シリーズの敵キャラクター。ノーバディの記事の該当内容を参照。
- 『仮面ライダーシリーズ』に出てくる暴走形態⇒暴走フォーム
- 『F-ZERO ファルコン伝説』の登場人物⇒バーサーカー(F-ZERO)
- 『山里亮太のまさかのバーサーカー』。朝日放送テレビで放送されたバラエティ番組。各業界で活躍する著名人に過酷なロケを強いた時、どの様な潜在能力を発揮するかをクイズ形式にした番組。潜在能力を発揮した状態を番組内で「バーサーカー」と呼んでいる。但しクイズ形式とは言うものの、実際の所はほとんど大喜利である。
状態異常としての導入
昨今のRPG等でもステータス異常の一種として導入されるケースが増えている。
老舗としては『ファイナルファンタジー』シリーズが、コントロール不能になって通常攻撃しかしなく成る状態異常「バーサク」を導入したあたりであろうか(勘違いされがちだが、このバーサクが初めて登場したFF2では操作不能になる事はなく、単純に物理攻撃力を上げるだけのバフ系魔法だった)。
以降、他のRPG作品でも"コントロール不能に成ってひたすら攻撃ばかり繰り返す状態異常"として「バーサク状態」や「激昂状態」「暴走状態」というステータス異常が導入される様に成っている。
ネタとしてのバーサーカー
女児向けアニメ『ドキドキ!プリキュア』に登場する四葉ありすは、そのお嬢様らしい落ち着いた雰囲気に似合わず、過去にある一件で途方もなくブチ切れていた事が判明、一部ファンの間ではバーサーカーの一種だと見なされている。【武神ありす・四刃ありすも参照】
また、最近の研究で鎌倉武士団が戦狂いのバーサーカー集団だった事も明らかに成っている。
関連タグ
- 四葉ありす:上述の通り。
- go_berserk:beatmaniaIIDXの家庭用に収録された楽曲。
- ヤンチュアノサウルス:古代王者恐竜キングでのショルダーネームが「オリエンタル狂戦士(バーサーカー)」。
- アンガーマネジメント:バーサーカーと相反する要素。