概要
CV:塩沢兼人
「余はオーベルシュタインを好いたことは、一度もないのだ。それなのに、かえりみると、もっとも多く、あの男の進言にしたがってきたような気がする。あの男は、いつも反論の余地もあたえぬほど、正論を主張するからだ」-銀河帝国皇帝・ラインハルト・フォン・ローエングラム-
ローエングラム陣営の参謀にして冷徹・冷酷で知られるマキャベリスト。
登場時はイゼルローン駐在艦隊司令・ゼークト大将直属の参謀であったが、名誉を重んじ、部下からの進言を聞きいれない彼を見限り、後に銀河帝国側の主人公ラインハルト元帥府の総参謀長となり、ローエングラム王朝成立時には帝国元帥となり、軍政を統括する軍務尚書に任じられた。
先天的な持病から眼を光学コンピューターを内蔵するサイボーグ義眼に置換しており、その無機物的な視線からとかく威圧的で冷徹なイメージを相手に抱かせている。
主要キャラクターであるキルヒアイスとロイエンタールを結果的に死なせたこともあって、読者の間でも賛否両論のある人物である。
人柄
作中、最も徹底したマキャヴェリズム(目的のためならあらゆる手段は正当化されるという思想)の持ち主。どのような事態を解決するにも、倫理や感情によって揺らぐ事は無く、解決の効率性のみを優先させる。多くの人命を救うためなら少数の犠牲を容認し、自分自身も犠牲の例外ではない。その徹底したマキャヴェリズムは、朋友としてラインハルトと接するキルヒアイスや、矜持によってたつロイエンタールとしばしば対立し、最終的に彼らの死の間接的原因ともなっている。
彼は徹底して”正論”に基づいた行動を取り、尚且つ仕事に私情を挟まない「無私の人」であった。彼を嫌う同僚達もその点だけは認めていたが、それゆえに多くの反感を買った。
能力
彼が最もその力を発するのは国営、軍務においてである。ラインハルトが戦術面に優れるのに対し、彼は策謀や政策の面に力を発揮している。また第七次イゼルローン攻略戦における描写から戦術面の才能も人並み以上にあるようだが、ラインハルトの参謀となってからは潜めている。
また、キルヒアイス亡き後人事面においてもラインハルトの補佐役として活躍している。主な例としてはゴールデンバウム王朝の幼帝・エルウィン・ヨーゼフ2世の出奔後にはわずか1歳の女帝・カザリン・ケートヘン1世の擁立を進言、ブラウンシュバイク公の忠臣・シュトライト准将の高級副官就任を政治的に利用するために容認、ラインハルトに見出されることがなければ世に出ることはなかったであろうアイゼナッハ上級大将の推薦を行う一方、人材登用の失敗とされるレンネンカンプ上級大将の新領土高等弁務官就任には柔軟性のなさ、ロイエンタール元帥の新領土総督就任には権限の大きさから反対しており、結果として彼の見る目のたしかさを証明することとなった。
しかし、彼が登用した秘密警察の長・ハイドリッヒ・ラングはアドリアン・ルビンスキーとつながりをもち、みずからの栄達のため反国家的な動きを示してロイエンタールを反逆に追い込むなどマイナスの一面も大きい。
だが、オーベルシュタインはこれらの反国家的な動きを察知していながらもあえて放置した上でまとめて排除する方向に仕向け、それが最終的には国家の安寧に繋がっているのも否定しきれない事実である。
愛犬
拾ったダルメシアンの老犬を育てている。軟らかく煮た鶏肉しか食べないため、オーベルシュタイン自ら鶏肉を買いに出ることもあるという。諸提督たちは「人間には嫌われても犬にだけは好かれる」といってからかった。
ナンバー2不要論
本人が名付けたものではなく周囲による命名。オーベルシュタインは組織におけるナンバー2の存在を認めず、ナンバー1の下で数人のナンバー3が互いを牽制することで権限の均衡を保つことが望ましいと考えており、ナンバー1に次ぐ1人の人間が特権的に権勢をふるうことが組織に良くない影響を与えるという持論を持っていた。キルヒアイスの拳銃保持や、皇妃の権限など組織内部における特権をことごとく排除した。マリーンドルフ伯がラインハルトに結婚を勧めた際も、マリーンドルフ伯が娘を皇帝と結婚させようとしているのではないかと疑ってかかったほどである。
略歴
イゼルローン駐留艦隊幕僚
イゼルローン駐留艦隊司令のゼークト提督の幕僚を務め、正しい助言を行うがゼークトにことごとく却下される。そのため艦隊は要塞に帰ることもできずに敗れ、トールハンマーの直撃を受けたゼークト提督は戦死。オーベルシュタインは敗北を見越して脱出艇にて艦を去る。しかし上官を見捨てて脱出したことが帝国内で問題となり、オーベルシュタインはラインハルトに助けを求める。
皇帝は帝国軍三長官に責任を求め、空席をラインハルトに譲り渡そうとしたが、しかしラインハルトはオーベルシュタインの助命と引き換えにこれを辞退した。
この際、オーベルシュタインはラインハルト個人に対する忠誠を制約している。
リップシュタット戦役
ガイエスブルグ要塞に籠城する貴族連合とラインハルトの戦いの際、貴族連合に参加していたオフレッサー上級大将を利用して貴族連合に不信感を植え付けた。オフレッサーの部下をことごとく処刑し、オフレッサーのみを無事貴族連合に帰還させることで、貴族連合の参加者たちにオフレッサーの寝返りを疑わせるという辛辣なものであった。オフレッサーはブラウンシュヴァイク公の眼前で大暴れしたのち射殺された。
ヴェスターラントの虐殺
貴族連合軍を指揮するブラウンシュヴァイク公が自らの荘園ヴェスターラントの反乱に対し熱核兵器を打ちこもうとした際、ラインハルトに虐殺の黙認を進言した。オーベルシュタインはヴェスターラントの虐殺の映像を政治宣伝の材料として使用。それが功を奏しオーベルシュタインの放った工作員がガイエスブルグ要塞守備兵の離反工作に成功し要塞主砲を封じ込め、戦闘の短期終結に寄与した。結果、戦役が長引いた場合にガイエスブルグ要塞が第二のイゼルローンと化し、さらに多くの人命が失われる可能性を予防した。
ラインハルト暗殺未遂
リップシュタット戦役後、ブラウンシュバイク公の部下・アンスバッハ准将がラインハルトと謁見した際、死体にカモフラージュした銃砲によってラインハルトを襲撃した。
謁見が行われたのは、拳銃所持が許されたキルヒアイスの特権をオーベルシュタインの進言とラインハルトの判断によって排した直後であった。そのためキルヒアイスはアンスバッハの凶行を銃によって防ぐことができずラインハルトをかばう形で死亡する。
その際、オーベルシュタインは事件を利用して、同様にラインハルトの失脚を企むと予測されるリヒテンラーデ公を首謀者に仕立て上げることを提案。ミッターマイヤーら諸将の賛同もありリヒテンラーデ公から国璽を奪う事に成功した。
同盟滅亡
バーラトの和約後、同盟領において高等弁務官を務めていたレンネンカンプに、ヤンを謀殺するよう進言する。レンネンカンプはかつて戦場においてヤンに敗北した経験からオーベルシュタインの進言を受け入れて、同盟にヤン・ウェンリーの受け渡しを要求するが、同盟もまた陰謀によってこの事態を回避しようとして、ヤンの暗殺を企む。
ヤン艦隊一同は、自己防衛的措置としてレンネンカンプを人質にハイネセンを脱出するが、虜囚となる事を良しとしないレンネンカンプは監房で自害してしまう。
しかしレンネンカンプの死は帝国が同盟を完全併呑する口実として利用される事になった。
ロイエンタールの反乱
ロイエンタールの反乱の際には、オーベルシュタインとラングが帝政を壟断する者であるとしてロイエンタールに名指しで非難されている。
オーベルシュタインはラングを連れロイエンタールの元へ処罰を受けに赴くという道を提案した。自らを犠牲にして和解の道を示し、兵の犠牲を最小限にしようとしたが、ラインハルトはこれを拒否。ラインハルトにかわりミッターマイヤーがロイエンタールとの戦端を開いた。
オーベルシュタインの草刈り
同盟滅亡後、旧自由惑星同盟の要人を逮捕し、イゼルローンとの交渉材料に用いている。イゼルローンに対し無血開城を求めた。
この際、オーベルシュタインとビッテンフェルトらが口論となり、その中でオーベルシュタインがラインハルトを強く非難しする。ロイエンタールの反乱やヤンへのこだわりなどから起きた一連の戦役について、私的な感情によって多くの兵を死地に追いやるラインハルトを謗ったものである。この言を受けビッテンフェルトはオーベルシュタインにつかみかかった。
ラグプール事件
旧自由惑星同盟の要人を収監していたラグプール刑務所で暴動がおこった。先の事件によるオーベルシュタインとビッテンフェルトの配下の摩擦が原因となり、指揮系統は大いに乱れ多数の死者、重軽傷者を出す。ラインハルトはオーベルシュタインのこの失態を強く叱責し、オーベルシュタインとビッテンフェルトを和解させた。
この際、オーベルシュタインは逃走中だったルビンスキーを逮捕している。その方法は全宇宙の医療カルテを調べ上げるという気の遠くなる作業だった。
最期
ラインハルト崩御の夜、オーベルシュタインは地球教の残党を呼び寄せるためラインハルトが回復しつつあるという情報を流す。ラインハルトを暗殺せんとフェザーンの仮皇宮に乗り込んだ地球教徒の手榴弾によって瀕死(OVAでは左脇腹をえぐられ、傷口から内臓と肋骨が露出している)の重傷を負う。医師達が緊急の手術を行おうとするも、すでに自分が手遅れである事を察しており「助からぬ者を助けようとするのは偽善であり労力の無駄だ」と拒む。そして医師達に向け遺言を告げる。「ラーベナルトに伝えてくれ。犬には柔らかい肉を与えてくれ、もう先は永く無いから好きにさせてやるように……」と言い残す。最期の言葉は『ラーベナルト』という単語に困惑を抱いた医師達に対する「ラーベナルトは我が家の執事だ……」という事務的なものだった。
後日の地球教の証言から、オーベルシュタイン自身が、オーベルシュタインの立つ部屋にラインハルトが居るとの偽情報を流した結果だと判明する。
関連タグ
ラインハルト・フォン・ローエングラム アントン・フェルナー ダルマチアン オスカー・フォン・ロイエンタール ハイドリッヒ・ラング