概要
白堊紀後期の中国に生息していたティラノサウルス科の獣脚類。山東(シャントン)省の諸城(ジューチョン)で2009年に発見された。
名称
学名:Zhuchengtyrannus Hone, Wang, Sullivan, Zhao, Chen, Li, Shuan Ji, Qiang Ji & Xu, 2011
中国名:諸城暴龍
語源は zhū chéng+tyrannos.zhū chéng(ジューチョン)は発見地の諸城、tyrannos(τύραννος)はギリシャ語で暴君のこと。「諸城の暴君」の意味。
一部の文献で「ズケンティラヌス」という表記が見受けられるが、これは日本国内のメディアで一時的に広まったものである。諸城は、ローマ字読みでは「ジュチェング」となり、現地の発音に準ずれば「ジューチョン」となる。「ズケン」は、ローマ字読みでも、英語で広まっている読み方でもない。[1]
恐竜の属名に限らないことだが、一つの外来語をカナ書きする際にも、初期にはさまざまな表記が併存する。「ティラノサウルス」の例のように、表記が移り変わったり、一度広まった表記が覆されることもある。
分類
ティラノサウルス科に分類されている。中でもタルボサウルスに近縁と考えられることから、タルボサウルスと共にタルボサウルス連を構成する。
ジューチョンティラヌス・マグヌス(Zhuchengtyrannus magnus)という一種が報告されている。種小名のmagnusはラテン語で「巨大」の意味。中国名は「巨型諸城暴龍」。
タルボサウルス連 Tarbosaurini
■ジューチョンティラヌス属(Zhuchengtyrannus)
・マグヌス種(Z.magnus)
特徴
全長は推定で10~12mとされている。これは、それまでアジア最大の肉食恐竜とされたタルボサウルスの平均値を上回る。体重は4~5t程度。
発見された46cmの上顎骨には7本分の歯茎があり、歯が7本すべて揃っていた。このことから、歯の生えかわりがおそらく2年以内だったこと、他のティラノサウルス類も同様に、生えかわるペースの速かったことが推測されている。
歯は、左右に厚みのあるティラノサウルスと、比較的薄いアリオラムスとの中間的な形態だった。
生態
諸城では、セントロサウルス亜科の角竜であるシノケラトプスや、ハドロサウルス科のジューチョンゴサウルスの化石が発見されている。これらの恐竜をジューチョンティラヌスが獲物にしていた可能性はある。
実際には、ライオンやハイエナなどの現生の肉食動物と同様、病気や飢えで行き倒れた動物の屍体を食べることも多かったと思われる。捕食者としても、小さく非力な幼体、体力はあるが経験の乏しい亜成体、病気や老衰で弱った個体を狙うことが多かっただろう。
参考文献
[1]「Zhuchengtyrannus」
「A new, large tyrannosaurine theropod from the Upper Cretaceous of China」David W.E. Hone, Kebai Wang, Xing Xu
「世界最大 恐竜王国2012」汎企画21