概要
戦車や装甲車など、硬質な防御を持つ標的の装甲に穴をあけるための弾丸。
現代では徹甲弾の多くは「弾体」と「装弾筒(サボット)」の二重構造として弾体を装弾筒をカバーして(装弾筒は砲口付近で外れ弾体のみが飛んでいく)高速の弾体で装甲を貫く構造(APDS)となってるか、重金属の弾芯を軽金属の弾体で包み高初速を得る(HVAP)構造となっている。
これは昨今の装甲の技術が向上し、かつてのような単純に硬い弾頭か軟鉄キャップ付きの硬い弾頭を(現代の徹甲弾の弾速と比べて)低速でぶつけただけでは装甲を破ることが困難になったことに由来する。
装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS弾)は従来の徹甲弾と異なる思想で設計されている。
構造は軽金属の風防と内部に貫徹体(弾芯)を持つ矢状の弾体と弾体に巻き付くように取り付けられた装弾筒で構成されている。
発射後に空気抵抗により装弾筒を固定していた部品が破壊されて装弾筒は分離し、運動エネルギーは弾体へと集中する。
超高速で飛翔した弾体は着弾と同時に風防は潰れて侵徹体と装甲の両方が塑性流動を起こして相互侵食し、侵徹体は変形しつつ装甲へと侵入していく。
風防が装甲への食い付きをよくして跳弾を防ぐ役割を持っており、更に原理上跳弾させる為には装甲とほぼ水平に近い角度で着弾しなければならず、弾くことはほぼ不可能となっている。
これより戦車等の避弾経始は意味を成さなくなってしまった。
グレネードランチャー等の低速の砲弾では運動エネルギーによる貫徹は目標によっては難しく、HEAT等の化学エネルギー弾が用いられることがあるが、その場合でも徹甲弾と扱われる事もある。
主に砲(戦車/戦艦)に用いられる。特に上記のタイプの徹甲弾は戦車砲に用いられる。
弾芯には重金属や鋼鉄などの重く硬い金属を使用しており、中には劣化ウランを使用したものも存在する。
劣化ウランは侵徹時に先端部分が先鋭化しながら侵攻するセルフシャープニング現象を起こす、侵徹時に溶解・飛散して酸化(燃焼)して焼夷効果を発揮する、ウラン濃縮時に出る廃棄物の再利用なので原料コストがかからない、産出国が限られるレアメタルであるタングステンを使用していない、といった利点から使用されている。
しかし、生産コストが非常に高いため(大気中で弾芯に加工すると上記の焼夷効果により燃えてしまうので窒素など不燃性の気体中で加工しなければならない)砲弾のコストはタングステン弾芯とほとんど変わらないとされる。
このことから、戦後処理問題の一つとして、劣化ウラン(及び酸化ウラン)やタングステンを使用した徹甲弾による放射性物質や重金属による土壌汚染が浮上することとなった。
(湾岸戦争後のイラクでの放射性物質に関しては核施設での略奪により高濃度のウランが廃棄され土壌汚染されている地域もあるので劣化ウラン及び酸化ウランの飛散による放射性物質としての土壌汚染に関してはデータは不足気味である)
類似品に、対人用の「スチール・コア弾」という弾頭の芯に鋼鉄を使用したもの、軽装甲目標向けにタングステンカーバイト等を使用したものなどがある。
ガンアクションもので人間が使用している徹甲弾は、おそらくこちらと思われる。
過去に使用された徹甲弾には現在は廃れた構造に対応するために一府変わった作りとなっているものある。
口径漸減砲であるゲルリッヒ砲の徹甲弾は弾芯はタングステン合金を用いていたが周囲を柔らかい金属で覆うというHVAPに近い構造であったが、砲口に近づくほどに口径が狭まる砲身に対応するために変形しやすい形状となっているという違いがあった。