ヴィシュヌがアスラのヒラニヤカシプを退治するべく地上に降り立った際に変じた姿といわれる第4のアヴァターラ。
ナラ(Nara=人)シンハ(Simha=獅子)の名の通りライオンの獣人となった経緯にはヒラニヤカシプの無敵性が関係している。
ヒラニヤカシプは苦行をブラフマーに認められ、無敵の肉体を得るという願いを叶えた。
具体的には『昼と夜、屋外と屋内の地面と空中で、神・アスラ・人・獣のどんな武器でも死なない』というガチガチのセキュリティである。
ヴィシュヌはヒラニヤカシプの息子で自分の信者であるプラフラーダの協力を得て彼を誘導し、
①昼でも夜でもない夕方の時刻の
②屋外でも屋内でもない玄関で
③神でもアスラでも人でも獣でもないライオンの獣人として
ヒラニヤカシプが調子に乗って割った柱の中から飛び出し、
④地面でも空中でもない彼の膝の上に立ち
⑤一切の武器を使わず徒手空拳で引き裂き
ヒラニヤカシプを殺すことが出来る唯一の状況を作り出した。
言うなれば傷害保険の適用対象外となるTPOを狙い、ライオンの覆面レスラーとして身元を誤魔化し、シャイニングウィザードで闇討ちをかましたのである。