ディアナ・ソレル
でぃあなそれる
人物
月の民ムーンレィスの女王で、ソレル家の若き当主。
公称年齢は19歳だが、統治者として1~2年の公務と100年単位のコールドスリープを繰り返して長い時間を生きてきた人物であり、その実年齢は不明である。
月の民からは女王として半ば神格化されるレベルで崇められており、その絶大なカリスマ性は地球と月の間で戦闘が起こった時も、ムーンレィスを勇気づけ、希望を取り戻させる力があった。
人柄も高潔かつ誠実で心優しく、為政者としての責任感も非常に強いが、少しばかり世間知らずな面もあり、地球の文化に興味を抱いていた。意外と茶目っ気がある女性で、自分と瓜二つのキエル・ハイムと二人きりになった際は服を交換し、それが2人を入れ替わるキッカケとなった(なお、二人の間に関連性はなく、容姿が似ていたのは単なる偶然である)。
また、100年前に一度地球に降りた時の想い人であった初代ウィル・ゲイムの面影のある三代目ウィルを一目見て思わず抱きついてしまう等、少女のような一面も持つ。
一方、既に家族も親族もおらず、側近の女官や知人にも親しい者もいないため、物語開始時点では心を許して接することができていたのは親衛隊隊長のハリー・オードくらいしかおらず、その真意を誰にも理解してもらえない「孤独な女王」でもあった。
だが、キエルとして振る舞う中で出会った元ムーンレィスの少年ロラン・セアックや、キエルの妹ソシエ・ハイム、リリ・ボルジャーノ、その他の地球の人々達と触れ合う内に心からの友人や仲間を得ていき、特にロランからは「女王ディアナ・ソレル」としてではなく、やがて一人の女性として愛されていくことになる。
作中の経緯
正暦2345年にコールドスリープを繰り返すことが常態化しているムーンレィスに、人生を全うすることによる『生きる喜び』を与えるため、ディアナ・カウンターを率いて300年来の悲願であった「地球帰還作戦」を実行する。しかし、様々な行き違いや不幸な巡り合わせが重なり、月と地球の間で戦争が勃発してしまう。
さらに地球に降下したムーンレィスには、文明に劣る地球人への差別感情や戦争の狂気に触れたことでタカ派となってディアナに従わなくなる者や、逆に彼女のカリスマ性が高すぎたために忠誠心の高さを暴走させる者たちも多く、彼女自身も事態を目の当たりにするまで部下たちの忠誠を妄信していたこともあって、自身の思惑に反して戦争へと招く一因となってしまった。
その中で、自らと瓜二つの容姿を持つキエル・ハイムと出会ったことにより、時折彼女と入れ替わりながら戦争の惨状や自然の豊かさ、地球人の世俗の暮らしに触れていったことで成長し、戦争の現実と向き合い、月と地球の間の停戦と和平に向けて奮闘していく。
物語中盤では、地球帰還作戦反対派であり女王暗殺計画と月の支配権奪取を目論んだアグリッパ・メンテナー及びギム・ギンガナム一派配下のミーム・ミドガルドに拉致されて地球を脱するも、その道中で脱出。改めてアグリッパ一派に対抗するために、ロラン達と共に月へ向かい、月市民に恐怖を抱かせることを恐れたアグリッパの反対を押し切り、月地球双方に対し、人類の戦争の歴史である「黒歴史」を白日の下に晒す。予想通りムーンレィスはパニックとなるが、ディアナは市民に呼び掛け、冷静さと希望を失ってはならないと説き、事態の拡大を防いだ。
そして物語最終盤、ついにギンガナム艦隊が地球への侵攻を開始すると、ミリシャとディアナ・カウンターにこれの殲滅を命じる。物語の中で、彼女が明確な戦いの意思を示したのはこの時だけである。
戦争終結後はキエルに女王の役目を譲って、ロランとともに地球で隠遁生活に入り、その後はコールドスリープを行うことなく余生を送った。
この時、1000年以上に渡る長い年月の間に何度もコールドスリープを繰り返してきた影響で、容姿に変化は無くともディアナの肉体の質は既に老人同然であった(作中では杖をつく・声の調子がややしわがれているといった具合に仄めかされる程度だったが、準備稿段階ではもっとはっきり肉体的に老化を描いていたという)。
富野監督によると、ディアナとロランが共に暮らし始めたのは、彼女がロランに自分の最期を看取るよう「女王として許した」のではなく「対等な人間として頼んだから」だとのこと。
その理由について富野監督は「 ロランがディアナの本当の初恋の男の子に似ていたとか、そんな簡単な理由だったのだろうけれど、そういうささやかな感情を大切にすることは決してつまらないことなんかじゃないことを本作を通して描きたかった 」という旨を述べている。