立ってくれ、ホワイトドール!ガンダムと呼ばれたんだろっ!
CV:朴璐美
概要
∀ガンダム(ターンA)のメインパイロット。
かつて地球を離れ、月面都市に居を移した人類の子孫「ムーンレィス」の一人。
月の女王ディアナ・ソレルが地球へ帰還するに先立って、ムーンレィスが異なる環境や社会に適応できるかの実験のために地球へやってきた。
地球に降りて早々にうっかり川で溺れそうになってしまったところをソシエ・ハイムとキエル・ハイムの姉妹に助けられ、その縁でハイム鉱山での仕事を紹介された。
その後、鉱山での働きぶりと機械への強さを見初められてハイム家に執事として雇われ、順調に地球での生活に適応。すっかり地球を気に入り、他のムーンレィスたちが地球へ帰還できる日を楽しみにしていた。
しかし、いざ地球帰還作戦が実行されると、地球人とムーンレィスとの間で予期せぬ諍いが勃発。「ホワイトドール」の石像に封印されていた謎のモビルスーツ「∀」に乗り込み、なし崩し的に地球側のミリシャに立って戦うことになってしまう。
出自
正暦2328年11月2日生まれらしい。出身はゲンガナムのベイザム地区。下層階級である運河人でもあるが体質が遺伝的に弱く漁をして生活し続けていくことは難しいと言われた。
両親については不明で出自についても小説・漫画と、メディアによって微妙に異なる。
佐藤茂の小説版では、下層階級出身ということで技術者である両親との血縁は無いらしい。福井晴敏の小説『月に繭地には果実』では、キースと同じ孤児院で育った孤児。あきまんの漫画『∀ガンダム 月の風』においては、父親タムプーヤ・セアックはかつてユニバーシティの教授職も勤めた黒歴史の専門家(考古物理学者)で、発掘のために放浪生活を送っているのを見かねた叔父夫婦に引き取られて育てられたという経歴だと言う。
人物
年齢は17歳(本編開始時は15歳)だが、本編開始前にコールドスリープを行っている為、その期間は年齢にカウントされていない。
テレビシリーズのガンダムで女装をした主人公としては二人目の人物。
ちなみに一人目は意外な人物である。
pixivタグでは『ロラン』の方が多く、演じた朴璐美もお気に入りキャラと公言しているほど。
中性的なビジュアルに褐色の肌、銀髪、エメラルド色の瞳を持つ神秘的な雰囲気の少年。
月に住んでいた時は虚弱体質だったが、地球で生活するようになってからは克服して体力をつけたようである。
性格は木訥で優しい少年である。暖かい心の持ち主であり、元ムーンレィスであるが文明の遅れている地球人を軽蔑することなく、地球人とムーンレイス間の平和と共存を毅然として希求し、その対立を解消するべく命がけで奔走する。
ニュータイプ等の特殊能力は持ってはいない(ただし小説版ではソシエとともにニュータイプ能力らしき力を発揮している)が、非常に器用で機械に強く、何よりも健やかな精神と優しさ、『人の命を大事にしない者となら誰とでも戦う』との確固たる信念を一切迷うこと無く貫き通す心の強さを持っている。
また、物事を整理する処理能力も早く、友人のキース・レジェに「お前はグエンの言いなりになってるだけだ」と注意された時も比較的早い段階で結論を導き出し独自の行動に移っている。
このためガンダム主人公の中でも精神面においてかなり大人で、珍しく挫折や葛藤というものをほとんどしていない。ただし「成長しない」のではなく「成長し切っている」という表現の方が相応しい。代わりにその役割はヒロインのソシエやキエル、ディアナなどが果たすこととなった。
一方他人の恋心に対し鈍感な一面があり、ソシエのアプローチに気付かなかったりする事も。
モビルスーツの操作技術に関しては話が進むにつれ成長して行き、ムーンレィスのエース級パイロットとも互角以上に戦った。
また、劇中では∀ガンダムの両手から背中を橋代わりにさせたり、胸部サイロに牛を格納し運んだり、手首を洗濯機・放熱時の送風を乾燥機代わりにしたりと、兵器であるモビルスーツを作業機械として、真の平和利用のために多用していることからも性格と信念がうかがえる。
ロランの宝物はブリキの貯蓄ちょきん・・・・じゃない金魚のメリーさんであり、肌身離さず持ち歩いている。このメリーさん、ロランが全裸をさらすときには大事なところを視聴者の熱視線から(時には攻撃もしつつ)守り抜いた守護神である。
名言集
「地球はとてもいい所だ!みんな早く戻ってこーい!!!」
第1話『月に吠える』より。
ビシニティの男(つまり名実ともに地球人)として認められる成人式の前の夜、地球の素晴らしさとそこに住む人々に感動したロランは夜中起き出し、自分が地球に降りた時に乗ってきたフラットの隠し場所にやって来て月に向かって叫ぶ。
「これが…これがディアナ様のなさることなんですか…?」
第3話『祭の後』より。ディアナ・カウンターとイングレッサ・ミリシャの予期せぬ戦闘の余波に巻き込まれて無惨な死を遂げたハイムの旦那さんと、その遺体を前に泣き崩れるソシエを目にして。
大好きな人たちと地球で仲良く暮らすというロランの夢は、戦争という現実に残酷な形で打ち砕かれてしまった。
開戦の発端は双方の事情説明の不備やタイミングの悪さ、不幸な巡り合わせが重なった末の悲劇であって、決してディアナの意図するところのものではなかったのだが、戦災に巻き込まれる末端の人々にとって上の事情など知る由も無かった。
「男に生まれてきて、くださいよォ…………!」
第5話『ディアナ光臨』より。飛行船からメシェー&ソシエのプロペラ機に飛び移るという離れ技をやった際、股間をしこたま強打して悶絶しているのを二人に叱責されて。
残念ながら、女性にはわからない痛みがある……と思いきや、あるにはある!!
「地球は戦争するところじゃないでしょーッ!!」
第6話『忘れられた過去』より。ディアナ・カウンターとミリシャの小競り合いの中、マウンテンサイクルから発掘されたガンダムハンマーを振り回しつつ。
全くである。
「同じ人間じゃないですか…。子供だっているんですよ!助けてあげてもいいじゃないですか!『死ねばいい』なんて酷い、酷過ぎます!」
本作屈指の名エピソード、第8話『ローラの牛』より。
帰化したムーンレィスの民間人・クーエンが飢える家族のためにロラン達に協力してもらい、やむにやまれず無人の村から乳牛を勝手に持ち出したのを、ムーンレィスに怒る地球人の農民達からむごい罵倒と中傷で責められているのを見て。
当のクーエン自身が「地球にはもともと生活していた人々がいて、自分達がここへ戻ってきたせいで土地を追いやられている」という現実を理解しているだけに切ない。
「僕は、僕はもう・・・我慢していられないんだ」
「僕はね……僕は、ムーンレィスなんです……ムーンレィスなんですよーっ!」
同じく『ローラの牛』より。ムーンレィスの帰還民と地球人の諍いを見ていてとうとう堪忍袋の緒が切れたロランは、ついに自らの出自を叫んだ。
月と地球、両方を愛するロランにはどうしてもこの状況を許す事が出来なかった。
「僕は二年前に月から来ました。けど、月の人と戦います!だけども、地球の人とも戦います!人の命を大事にしない人とは、僕は誰とでも戦います!!」
同じく『ローラの牛』より。それまで戦う事への迷いを見せていたロランだったが、「人種に囚われず、『人命の尊さ』を守る為に戦う」ことを決意する。ロランの優しい人柄が垣間見える台詞であり、実際に彼は本作を通してこの信念と行動理念を貫き通して見せた。
「『機械人形って、パイロットとか人が見えないから戦える』って言いますけど」
「僕、今日は『あの機械人形にはどういう人が乗っているんだろう?』って想像しちゃったんですよね」
第19話『ソシエの戦争』の最後辺りより。
自分の空回りと失敗に落ち込むソシエに、ロランは戦場にて敵であるとはいえ他人の命を奪わざるを得ない苦悩を吐露する。
そんなロランに対してソシエは「それでも戦えるんだ…。すごいんだね」と声を掛けるが、彼は「違いますよ。コイツ、ホワイトドールがすごいんですよ…」と返すのであった。
『機動戦士ガンダム』におけるアムロ・レイの「相手がザクなら人間じゃないんだ!」の対比となる台詞である。
「ギャロップへ…ホワイトドール出動しますが、戦闘出動ではありません。“洗濯出動”に行かせてもらいます」
第21話『ディアナ奮戦』より。
戦場看護師の仕事に奮闘するキエル(に入れ替わっているディアナ)を手伝うべく、ロランは∀を「出撃」させ、マニピュレーターや排気の熱を上手く使って洗濯から乾燥までやってのけた。『∀ガンダム』の作風を大きく象徴する台詞であり、ロランが∀を兵器ではなくあくまでも人間のために役立てる『機械(道具)』として捉えていることが窺えるシーン。
「冗談言わないで下さい! 百年も二百年も毒を撒き散らすものなんです!」
第27話『夜中の夜明け』より。
ロストマウンテンで核弾頭が発掘されてしまい、ディアナ・カウンターの技官と共にロランは双方に戦闘を止めて逃げるよう警告して回る。しかし、核兵器なんて見たことも聞いたことも無い地球人達にはピンと来ず、「強力な敵の秘密兵器」程度にしか考えられなかった。
「人の英知が生み出したものなら、人を救ってみせろ!」
第39話『小惑星爆裂』より。∀の胸部マルチパーパスサイロ内部に隠し持っていた核ミサイルで月面に落下する小惑星を破壊したときの台詞。
核兵器を人を殺すためではなく、純粋に人命を救う事のみに使ってみせた。
余談だが、TVシリーズの歴代主人公の中で核兵器を使用したのはロランのみである。
「馬鹿野郎が…」
第49話「月光蝶」より。
恋人フラン・ドールのお腹に自分の子供がいるのを知っていながら、∀を持ち出して出撃したジョゼフ・ヨットの身勝手さにロランは毒付く。
少数民族の出自というコンプレックスゆえの野心をグエンに唆されたジョゼフは、ギム・ギンガナムのターンXを討つことで手柄を挙げるべく出撃したのだが、何よりも命を重んじるロランにとって彼の行為は妊娠したフランを置き去り同然にする独り善がりにしか見えなかった。
「人が、安心して眠る為には!」
ロランは取り戻した∀に乗り込み、ギンガナムの駆るターンXとの最後の対決に臨む。
この簡単な一言にロランの戦いの動機、信念、願いが全て集約されている。
「∀はホワイトドールと言われて、人々に崇められてきた物なんです!その本体が機械であれば、使い方次第ではみんなの為にだってなります!」
第50話「黄金の秋」より。最終決戦、ギンガナムと対峙したロランは、戦いを止めるよう叫ぶ。
ここに到るまでのロランの戦い方や∀の使い方を見ていれば非常に説得力のある台詞であるが、既に己の闘争本能に呑み込まれつつあるギンガナムには届かなかった。
「ディアナ様、また明日」
ラストシーン。戦いが終わり、「黄金の秋」の後に「白銀の冬」が訪れ、人々がそれぞれの未来に向かって動き出す中、ロランとディアナは共に地球の山小屋で隠遁生活に入る。ディアナの左手の薬指には小さな銀色の指輪が光っていた。
寝室のベッドで眠りにつくディアナの寝顔を確認しつつ、彼はドアを閉める。「おやすみなさい」ではなく「また明日」なのは、二人が「いつもどおりの明日」の大切さを誰よりも知っているからだろう。
二人でまた山を散歩したり、釣りをしたりしよう。夜にはロランお手製のスープで食事をしよう。そんないつもどおりの、ささやかな明日。
この台詞を最後に、『∀ガンダム』の物語は幕を下ろす。
キャスティングについて
ガンダムシリーズにおいて初の「女性声優が演じる男性主人公」となったため、ファンの間では「主人公にしてメインヒロイン(♂)」と言われる事があるが、『∀』以外の事例は少なく、『ガンダムビルドファイターズ』シリーズの2作品(一作目における小松未可子演じるイオリ・セイと國立幸演じるアリーア・フォン・レイジ・アスナ、二作目における冨樫かずみ演じるカミキ・セカイ)、『SDガンダムフォース』のシュウト(中の人同じじゃねえか)がいる程度。『ウルズハント』のウィスタリオ・アファムも同様だが、中の人はタレント・女優である。
『機動戦士ガンダム0080』の主人公であるアルフレッド・イズルハはゲーム『クライマックスU.C.』以降は比嘉久美子が演じているが、これはオリジナルキャストである浪川大輔が出演当時12歳であり、声変わりした事で「当時と同じコンディションで演じる」事が不可能になってしまったため(浪川自身は「大人になったアルが少年時代を回想する」という設定で同作の映像ソフトのCMにて二度アルを演じている)。
関連イラスト
関連タグ
ジュドー・アーシタ:女装の先輩であるガンダムの主人公。
ゼハート・ガレット:敵勢力より地球に潜入した銀髪褐色の繋かり。
スレッタ・マーキュリー:こちらは正真正銘のガンダムの女主人公。