概要
戦友・鬼頭千万太(きとうちまた)の遺言で、獄門島を訪れた金田一耕助が殺人事件に巻き込まれるストーリー。芭蕉や其角の俳句に見立てた連続殺人が行われる。『犬神家の一族』とならび戦後色が強い作品。
作品の根幹に関わる部分に関するとある事情から有名な作品でもある。
あらすじ
金田一耕助は、戦友・鬼頭千万太(きとうちまた)の遺言で、彼の故郷である獄門島を訪れる。
千万太は戦争を生き抜いたものの、引き揚げ船内でマラリアで病死してしまい、死の間際、金田一に「獄門島へ行ってくれ。俺が帰ってやらないと、三人の妹たちが殺される」と言い残し、自分の故郷に行って、妹たちを守ってほしいと頼んだのである。
獄門島は封建的な因習の残る孤島で、島民は島の因習に縛られて暮らしていた。島には本鬼頭(ほんきとう)と分鬼頭(わけきとう)という二つの網元がいて、互いに対立していた。
金田一は千万太の実家である本鬼頭家を訪れる。そこで千万太の妹の三姉妹(月代、雪枝、花子)と、千万太の従妹の早苗と出会う。本鬼頭の当代当主で千万太の父・与三松が発狂して座敷牢に入れられていて、月代たちが年齢のわりにいまだに幼く未熟なために、本鬼頭の家は早苗が切り盛りしていた。
金田一はあまりにもエキセントリックな月代たち三姉妹を見て、自分が容易ならぬ役目を背負ったことを実感する。戦友の願いを叶えてやりたいと思う金田一の気持ちと裏腹に、やがて第一の殺人事件が起こってしまい…。
登場人物
金田一耕助
私立探偵
磯川常次郎
岡山県警察部の警部。
清水
獄門島駐在巡査。
本鬼頭家の先代当主。現在は故人。晩年は老いによる病と後継者問題に悩んでいたことから、島民には「太閤(豊臣秀吉)」と呼ばれていた。
鬼頭与三松
嘉右衛門の息子で本鬼頭家当主。道楽三昧の末、現在は精神病を患い、座敷牢に閉じ込められている。与三松が当主の仕事をできない状態のため、早苗が当主代理を務めている(本来は長女の月代がすべきなのだが、性格的に未熟で任せられなかったためと思われる)
お小夜
与三松の妾で女役者。月代、雪枝、花子の母。現在は故人。
鬼頭千万太
与三松と正妻(故人)の息子で本鬼頭家の跡取り。金田一の戦友で、共に戦争を生き延びるものの、帰りの船の中で病死。彼の必死の遺言で金田一は獄門島に赴いた。ある理由で自分が生きて帰らないと妹たちが殺されるため、なんとしても戦争から生きて帰ろうとするなど、妹思いの兄だった。
与三松の長女。お小夜の娘で千万太の腹違いの妹。祈祷が得意。美人だが、18歳という年齢のわりに、かなり幼くエキセントリックな性格。
鬼頭雪枝
与三松の次女。お小夜の娘で千万太の腹違いの妹。17歳。姉妹同様エキセントリックな性格。
鬼頭花子
与三松の三女。16歳。お小夜の娘で千万太の腹違いの妹。
鬼頭一
千万太の従弟で本鬼頭分家の男子。
本編のヒロイン。一の妹。月代たち三人姉妹に代わって本鬼頭を切り盛りしている女性。
勝野
嘉右衛門の妾。頼りない性格のため、家のことは早苗に任せて彼女に頼り切っている。
鬼頭儀兵衛
本鬼頭のライバルである分鬼頭の当主。嘉右衛門の功績は評価しているが、嘉右衛門の悪ノリな遊興は嫌っていて、付き合いの場に出るのを断っていた。そのことで嘉右衛門の怒りを買い、長年対立している。分鬼頭は本鬼頭をしのぐ勢いにあることから、島民からは「権現様(徳川家康)」と呼ばれている。
鬼頭志保
儀兵衛の妻。野心家な女性で、最初は本鬼頭家の嫁になるつもりだったが、脈がないと思いきや、分鬼頭の儀兵衛にすり寄り、彼の妻になった。さらに鵜飼章三を使って月代たち三姉妹を誘惑して家の金品を持ち出して貢がせるなど、本鬼頭をひっかきまわしている。そういった様子から、島民からは「淀君」と呼ばれている。
鵜飼章三
分鬼頭の居候で復員軍人。美青年。志保の命令で、月代たち三姉妹に言い寄り誘惑して金品を貢がせたりしていた。事件解決後、御役御免とばかりに志保にあっさり見切られて追い出され、金田一が乗った船に一緒に乗って島を出た。
荒木真喜平
獄門島村長。本鬼頭の後見人の一人。
了然
千光寺の和尚。本鬼頭の後見人の一人。
了沢
千光寺の典座。
村瀬幸庵
漢方医。本鬼頭の後見人の一人。
竹蔵
本鬼頭に所属している潮つくり。
清公
床屋。