曖昧さ回避
- 85と87の間の自然数。
- ラドンの元素番号。記号は「Rn」。
- 第23回電撃文庫大賞受賞作→『エイティシックス』。
- トヨタ自動車がかつて生産していた乗用車「カローラレビン/スプリンタートレノ」の型式AE86の略称。
- 同じくトヨタ自動車が生産するクーペ型乗用車。車名は上記にちなむ。本稿で詳述。
概要
86とは、トヨタとスバルが共同開発したFRスポーツカーのトヨタ版の商品名である。形式名称は"DBA-ZN6"、コンセプトモデル時代の名称は”FT-86”で、AE86と区別するためにこれらの名称で呼ぶ人も多く、中には『ズンロク』(ZN6に由来)と呼ぶ人もいる。
なおトヨタの公式では、カタカナで『ハチロク』はAE86、数字で『86』は現行86という区別をしている。
AE86型「スプリンタートレノ/カローラレビン」を意識したネーミングである。メカニズム的な部分でのAE86との共通点は「軽量なFRクーペのスポーツカー」というコンセプトだけであり、見た目はもちろん排気量やメカニズム、車の大きさ、基本デザインなどはAE86とは全く異なる(当然ながらカローラファミリーでもない。)。しかしAE86のように「安くて、速くなくて、運転しやすくて、改造しやすい」スポーツカーを目指したため、86の名が与えられた。
定期的に「86はスポーツカーではない」という意見が上がるのは、戦闘力については改造前提の部分が多く素の状態では歴代の2.0L級スポーツカーに見劣りしてしまうという面が大きい。
また「若者に手が届く値段じゃ無いのでは?」という批判が起きているが、もともとトヨタはAE86に憧れを持つ中高年者にこの車を買ってもらい、それを見た若者・子どもにも「かっこいい車がある!いつか乗りたい!」と思ってもらうために作っている。つまり「10年後20年後の車好きを増やす」ための長期計画の一環であるとのことである。加えて発売開始から5年以上経った今は値段も100万円以下の個体も珍しくなくなってきており、若者にも手が届くと言えるスポーツカーになった。
同価格帯の現行スポーツクーペは極めて少ないため、モータースポーツではエントリー/プロ、サーキット/ラリー/ジムカーナ/ドリフトと乗り手・戦場を問わず幅広く使用されており、事実上86/BRZ専門となってしまっているクラスも珍しくない。
2013年からは『86/BRZレース』も開催されており、ワンメイクレースとしては国内トップクラスの規模を誇る。
かつて頭文字Dで人気を博したAE86だが、この86も頭文字Dの続編であるMFゴーストで主人公のカナタ・リヴィントンが使用している。またこれに伴いカナタ仕様の86のプレゼント企画などのようなコラボレーションも開催されている。
86とBRZ
基本設計・企画をトヨタが、細部の設計はスバルが担当。エンジンはスバルの水平対向エンジン「FA20型」にトヨタの直噴・ポート噴射併用システム「D-4S」をブレンド、ミッションはトヨタ系のアイシン精機製、サスペンションなどの足回りはインプレッサで、デフなどの駆動系はアルテッツァ、という混血の双子が86とBRZである。なおスタイリングやデザインに関してはスポーツ800(ヨタハチ)や2000GTを参考にしている。
ショートストローク型の多い水平対向エンジンだが、FA20型はボア×ストロークが86×86(この数字になったのは全くの偶然らしい)のスクエア型となっており、D-4Sの効果も相まってスポーツカーにしては燃費が良い方(12km/Lくらい)である。
一方で「200馬力は馬力詐欺」と言われることがあるが、これはシャーシダイナモで計測した場合で、エンジン単体を測るエンジンベンチだときちんと200馬力出る。
ちなみに開発当時はトヨタが「せっかくスバルの株買ったんだし、何かこの提携を活かした企画をしたいっすね~」ということで企画案をスバルや他社から募っている状況で、またトヨタの開発責任者・多田哲哉も「ミッドシップならウチのエンジンでなんとかなるが、それだと特性がピーキーになって運転しづらくなる。運転しやすいFRで、安全基準をクリアしつつ低いスタイリングを実現するには水平対向しか無い」と考えており、スバルと共同開発をするのは必然であったといえる。
なお時々誤解されているが、トヨタにとって水平対向エンジン車は86が初めてではなく、むしろスバルより先に水平対向エンジン車を作っていた歴史がある(スポーツ800もその一つ)。
共同開発ということもあり「ほとんど同じ車」ではあるものの、やはりメーカーの違いを反映した故か外観が少々異なっている。たとえば、86専用色はオレンジで、BRZ専用色はインプレッサでお馴染みWRブルーマイカ。
当然メーカーエンブレムがトヨタかスバルかで違うし、そのほか灯火類の位置なども違いがある。ほとんどのトヨタ車はエンブレム周りがエンブレムに合わせて凹まされているが、スバルエンブレムの取り付けを想定し、86ではあえて凹まされていない。
なお生産に関しては(GRMNを除き)富士重工業が一貫して行っているため、形式名称も「DBA-ZN6」とスバルの命名方式が採用されている(BRZは「DBA-ZC6」)。フレームにはSUBARUと刻印がされており、その上トヨタエンブレムの裏側にまでSUBARUの刻印がされていたりする。「これはトヨタ車のエンブレム付けたスバル車だ」「スバルのOEM車」と言う声もしょっちゅう聞かれる。スバルが無資格検査で問題になったときも、トヨタ車で唯一86がリコールを受けている。
ちなみに86のカタログにはトヨタとスバルのジョイントベンチャーであることが喧伝される一方で、BRZのものでは(D-4S関連以外)トヨタのトの字も出てこないのが興味深い。でも圧倒的に数が売れている(4倍)のは86である。
乗り味については、86が軽快感を全面に打ち出しているのに対し、BRZは安定性に振ったチューニングがされている・・・と一般的に言われている。……メーカーイメージ的には逆な気もするが、近年の両社における経営方針的には間違っていないのかもしれない(だいたいこの人のせい)。ただしトップギアのジェレミー・クラークソンとスティグは、86/BRZに乗り味の違いは感じられなかったとしている。
BRZではtS、86では14R60やGRMNという限定車両が発売され、それぞれのメーカーの思想を色濃く反映したセッティングがされている。
2017年の"GR"ブランド発足以降は「GR」「GR SPORT」グレードもそれぞれ発売されている。なおGRの「GRMN」「GR」「GR SPORT」3グレードが全て揃っているのは他にはヴィッツだけである。
また以前はカスタムベースグレードもかなり違いがあり、86「RC」はインパネのパネルが一部ない、エアコンの設定がない、バンパーの塗装もなし、さらにはいわゆる「鉄チン」ホイールなど、完璧に競技指向であった。一方のBRZ「RA」はHID標準装備、カラードバンパー、エアコン(メーカーOPT)設定ありなどと若干はストリートユースも考慮されている。しかし86のRCは後に廃止された。
2020年8月に現行形の新車受注終了が発表された。最後までレーダークルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ(アイサイト)は装備されなかった(スバルの担当者によると、フロントウインドウの高さや角度のバランスが悪く、アイサイトの装着は困難とのこと)。なお、トヨタ・スバルの両社は2019年に提携拡大時の発表で次期モデルの開発を公式に認めている。