概要
アメリカの半導体メーカー・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が開発しているGPU、およびそれを搭載したビデオカードのブランド名である。
AMD公式では「レイディオン」読みだが、日本のユーザーの間では「ラデオン」や「ラディオン」のようにローマ字読みされることが多い。
歴代の主な製品
R100 世代 (7xxx)
R100
初代RADEON。RAGEシリーズの後継として登場。カリスマエンジンと名付けられた新しいアーキテクチャを採用し、0.18μmで製造された。メモリバス幅128bit。
RV100
廉価版RADEON。メモリバス幅64bit・ハードウェアT&Lユニットの省略・ダイサイズ縮小等により、性能の低下と引き換えに低価格化を実現した。
RV200
改良版RADEON。R200の技術をフィードバックし、0.15μmで製造されたが、DirectX 7 対応に留まった。
HydraVisionにより、マルチモニターに対応。
R200 世代 (8xxx/9xxx)
R200
DirectX 8.1対応。0.15μmで製造され、Vertex Shader1.1・Pixel Shader1.4各2基・パイプライン4本を持つ。
RV250
R200廉価版。Vertex Shader・パイプライン半減。
RV280
RV250を、AGP 8xに対応させた物。Vertex Shaderは2基。
R300 世代 (9xxx/X3xx/X5xx/X6xx/X10xx)
R300
Vertex Shader2.0・Pixel Shader2.0に対応した、DirectX 9.0世代 (メモリバス幅256bit)。T&Lは省略され、Vertex Shader4基・パイプライン8本。廉価版は、メモリバス幅128bit・パイプライン半減。0.15μmで製造される。
R350
R300改良版。R300のノイズを軽減している。
R360
R350改良版。内部温度が確認可能となった。
RV350
R300を0.13μmで製造し、メモリバス幅128bit・パイプライン半減によって低発熱化・サイズ縮小を行ったもの。
RV360
RV350に、低誘電層間絶縁膜技術 (Low-K) を使用して、性能向上・省電力化を行ったもの。
RV351LX
RV350を0.11μmで製造することで低コスト化を行ったもの。X1050を冠したものでも、RV370と異なりこちらはAGPネイティブとなる。
RV370
RV360を、PCI Expressに対応させ、0.11μmで製造することで低コスト化を行ったもの。
RV380
RV360を、PCI Expressに対応させ、同時に高クロック化したもの。
R400 世代 (X7xx/X8xx)
R420
Vertex Shader2.0b・Pixel Shader2.0aに対応した、DirectX 9.0世代RADEON。メモリバス幅256bit・GDDR3対応、0.13μmで製造され、Vertex Shader6基・パイプライン16本。
R423
PCI Express対応版R420。
R430
0.11μmで製造される、R423。パイプライン12本・DDRの廉価版もある。
R480
R423改良版。0.13μmで製造される。
RV410
R430の廉価版。メモリバス幅128bit・パイプライン半減の8本。DDRメモリにも対応。
R500 世代 (X1xxx)
R520
OpenGL 2.0対応。ATIのDirectX 9.0c世代のグラフィックカードである。2005年10月にローンチされ、このシリーズはいくつかの拡張が持ち込まれている。つまりアンチエイリアシング付きのHDRレンダリング用途で必要とされる浮動小数点レンダーである。
R600 世代 (HD 2xxx/HD 3xxx)
R600
DirectX 10.0 に初めて対応し、 DirectDraw の対応はしない。また、AMDにとってピクセルシェーダとバーテックスシェーダを統合したユニファイドシェーダを用いた2番目のグラフィックス製品でもある(初代は Xbox 360 に採用された Xenos)。このプラットフォームによる製品名は HD 2400、HD 2600、HD 2900 である。シェーダアーキテクチャにVLIW命令を採用している。
RV670
R600 を基に、DirectX 10.1 に新たに対応するほか様々な変更が加えられている。この世代からはハイエンドで新しいアーキテクチャを採用し、ミドルレンジ、ローエンドと派生製品を作っていくのではなく、$200~300のミドル(正確にはアッパーミドル)チップをダイサイズを抑えて作り、ハイエンドは CrossFire を使用して競合他社に対抗している。そのためハイエンドの製作コストが下がるだけではなく、ミドルレンジやローエンドの新アーキテクチャ採用チップの登場が早くなっている。この世代では世界初の55nmプロセスが採用された。この世代より XT や Pro 等の表記は外され数値は絶対性能順になっている。PCI Express 2.0 に対応。
R700 世代 (HD 4xxx)
RV670 を基に強化が行われた。RV770 アーキテクチャではストリームプロセッサ (SP) 及びテクスチャ ユニットが増強され高負荷時に強くなった。更に今までの高解像度、AA 時に弱いという弱点は ROP (RBE) の 強化で克服している。またリングバスが廃止されたことなどにより、チップ面積や電力あたりの性能が以前の世代に比べ劇的に向上している。その上でアッパーミドル (RV770) 以上のチップでは GDDR5 に対応して高性能化を図った。またこの世代からは新たに UVD 2 が搭載されており、専用ソフトでアップスケール(解像度の大きいディスプレイで拡大してもジャギーなどを抑えて綺麗に見える機能)が可能になっている。RV770 は2008年6月発売以来、高い描画性能と比較的安価な価格設定により好調な売行きを記録した。2008年8月に発売された HD 4870 X2 では海外のベンチマークで発売当時の単体カードでは最速を記録した。HD 4850、HD 4870 は 800 のストリーム プロセッサを搭載しており、GDDR3、GDDR5 のビデオメモリをそれぞれ使用している。R700 は合計 1600 のストリームプロセッサを搭載しており、GDDR5 のビデオメモリを使用している。
Evergreen 世代 (HD 5xxx)
Cypressは RV770 を改良し、世界で初めて DirectX 11 に対応した。ストリームプロセッサ (SP) とテクスチャユニットを前世代のちょうど 2 倍搭載し、より高いクロックで動作する新しい GDDR5 メモリの採用によってメモリ帯域やそれに関する性能も強化されている。また ROP 数も比例して 2 倍に増えたことで高負荷時のパフォーマンスが更に向上した。 HD 5870 のフルロード時最大消費電力は前世代 HD 4870 より増加したが、可変クロック機能を導入し、アイドル時にはコア クロック、メモリ クロック共に低下させることで、消費電力の低減に成功した。また、CrossFireでのアイドル時にはスレーブ側カードを完全に停止、シングルカード CrossFireの HD 5970 ではアイドル時に片GPUを停止させるなど、省電力設計に気を配っている。 当世代より OpenCL に最適化した設計がなされた。 全モデル3画面以上の出力を可能とする Eyefinity 技術を搭載する。
Northern Islands 世代 (HD 6xxx)
開発コードネームはカリブ海の島々に由来している。 Evergreen と同じく 40 nm プロセスで製造されている。Caymanとそれ以外ではシェーダ構成が違っており、2つのアーキテクチャから成り立った世代である。 またDisplayPort 1.2やHDMI 1.4が搭載され、動画再生支援も UVD3.0 に対応し MPEG-4 MVC (Blu-ray 3D)、DivX、Xvid 形式の動画が新たにサポートされた他、MPEG-2の対応も強化された。Eyefinityも改良されており、HD 6800、HD 6900シリーズではリファレンスモデルで5画面の同時出力が可能となっている。HD6750、HD 6770は前世代HD 5750、HD5770のリネームであるが、Blu-ray 3D対応、HDMI出力1.4aとなっている。
Southern Islands 世代 (HD 7xxx) / Sea Islands 世代 (HD 8xxx)
28nm プロセスで製造されている。PCI Express Gen3、DirectX 11.1に対応した。HD 8xxx は HD 7xxx のOEM 向け製品である。
Volcanic Islands 世代 (Rx 2xx)
Southern Islands 世代 (HD 7xxx) / Sea Islands と同じく 28 nm プロセスで製造されている。DirectX 11.2に対応した。「Volcanic」とは英語で「火山島」を意味する。
Radeon RX 500シリーズ
Polaris(ポラリス)アーキテクチャはGCN(グラフィック・コア・ネクスト)アーキテクチャの第4世代目として登場した。このシリーズから「DirectX® 12」や「Vulkan™」などの最新APIに最適化された。
製造プロセスは14nm FinFET。
- radeon RX 550
- radeon RX 580
RX 5000シリーズ
RDNAアーキテクチャ
新たなアーキテクチャである「RDNA」(Radeon DNA)を採用し、TSMC社の7nmプロセスで製造された。
これまで使われてきた「GCN」アーキテクチャは、ゲーム用途も科学計算用途(コンピューティング)も一つのアーキテクチャでこなしてしまおう、という思想で設計されたものだったが、その半端なやり方のせいで、競合のGeForceとは性能でも電力効率でも劣ってしまっていた。
この事態を受け、ゲーム特化のアーキテクチャとして作り直されたのが「RDNA」である。
GeForceに先んじて、一般消費者向けビデオカードとしては初となるPCI Express 4.0に対応。
GeForce(当時はRTX 20シリーズ)より電力効率で優れていたが、実性能では追いつくことが出来ず、7万円以上のハイエンド製品も出せず仕舞いだった…
- RX 5700 XT
- RX 5700
- RX 5600 XT
- RX 5500 XT
RX 6000シリーズ
RDNA 2アーキテクチャ
TSMCの7nmプロセスで製造されたという点では、前作RX 5000シリーズと同じだが、回路設計は新しくなっており、電力効率と動作クロックが大幅に引き上げられた。
これまでのRadeonは、GeForceに対して性能で後れを取っていたが、この改良のおかげで、同世代のGeForce(RTX 30シリーズ)と対等に渡り合える実力を手にすることができた。
また、このシリーズから初めてレイトレーシングに対応する。
同じAMD社のCPUである、Ryzen 5000シリーズ搭載という条件付きではあるが(※)、GeForceにはリアルタイムレイトレーシングの性能こそ劣るものの、スペックは大きくは変わらず、ワットパフォーマンス(電力効率)では優位に立っている。PS5やXbox Series X/SのCPUやGPUを請け負った実力は本物であった。
但し、PCゲームではソフト側が最適化されていないと性能を生かしきれないこともあったため注意。
※Ryzen 5000シリーズと組み合わせた際に、本来よりも高い性能を発揮するとのこと。具体的にはCPUがPCI Expressバスを通してこれのVRAM全体にアクセスできるようにする技術「SAM」によるもの。
なお、SAMの仕組み自体はAMDが独占しているわけではなく、元々は今まで誰も使ってこなかったPCI Expressの標準機能を、AMDが初めて使い始めたというだけのことであり、順次IntelやNVIDIAのような競合他社でも対応する予定である。
- RX 6900 XT
- RX 6800 XT
- RX 6800