概要
元々「空亡」と「妖怪」という言葉を並べて扱ったのは、荒俣宏(博物学者、小説家、神秘学者、妖怪評論家、タレント)による『陰陽妖怪絵札』(フィギュアとカード付き)だった。そこでは「百鬼夜行絵巻」の最後の場面で、太陽が「空亡という時期」を利用して夜明けをもたらすことが述べられている。
>空からころがり落ちてくる火の玉のような太陽は、まさに闇を破る万能の力といえる。
>太陽は、夜の闇を切り裂いて夜明けをもたらすとき、空亡という「一日の暦の切れ目」を
>ついて、夜の中に割りこんでいく。この空亡の隙間は、どんな妖怪にも塞ぐことができない。
原義における「空亡」
干支は、十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)と十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)の組み合わせであり、10と12の最小公倍数である60通りの組み合わせで出来ている。
例えば「甲子、乙丑、丙寅、丁卯、戊辰、己巳、庚午、辛未、壬申、癸酉」にとっては十二支の戌と亥が余る。
「癸酉」の次は「甲戌」でありここからの10通りの組み合わせにとっては申と酉が余る。
その次の「甲申」からは午と未、「甲午」からは辰と巳、「甲辰」からは寅と卯、「甲寅」からは子と丑が余る。
このように「戌亥」「申酉」「午未」「甲午」「辰巳」「甲辰」「寅卯」「子丑」という6通りの空亡がある。
空亡の期間は干支の力が欠けて弱くなると考えられている。
「甲子、乙丑、丙寅、丁卯、戊辰、己巳、庚午、辛未、壬申、癸酉」のどれかの年に生まれた者(六星占術でいう土星人)にとっては戌年と亥年が空亡の年になる。
空亡の年は占いの種類によっては「天中殺」「大殺界」「0地帯」などと称されている。
干支は年だけでなく、月、日、刻にもあり、それぞれに対応した空亡の月、空亡の日、空亡の刻がある。
妖怪「空亡」の発生源
常闇ノ皇(とこやみのすめらぎ)
その後、カプコンのアクションゲーム『大神』のラスボスとして登場したこのキャラクターは、設定資料集で「デザインしたときは空亡と言う名前で、実際にいた妖怪だ」「百鬼夜行絵巻のラストで妖怪を押し潰す最強の存在」と解説された。
『大神』の主人公は干支の力を使う太陽の神であり、設定資料集によると「空亡」は干支の力を失わせる「0番目の干支」の意味を持つとされ、球体の姿は元ネタの赤い丸がモチーフであるとともに0も意味している。
つまり、元ネタでは太陽が「空亡の時刻」を使って闇を切り裂き夜明けをもたらすが、『大神』では太陽が闇そのものである「妖怪・空亡」を切り裂いて夜明けをもたらすという形にしている。
なお、百鬼夜行のラストで暗雲のような妖怪が現れる物もあるが、小松和彦が2007年7月に発見したもので『大神』の設定に影響は与えてない。