墓地肥やしとは、コナミのTCG『遊戯王OCG』のテクニックのひとつである。
概説
対戦型カードゲームには、不要になった自身のカードを置く「捨て山」が存在する。
この捨て山を遊戯王OCGでは『墓地』と称する。
墓地肥しとは、捨て山にカードを次々と送り込んで、「墓地」を起動条件とするカード効果を狙う戦術、またはそれを絡めたコンボを指す。
何故墓地にカードを捨てていく?
『遊戯王OCG』では、「相手モンスターの攻撃やカード効果でライフポイントが0になる」以外に、「デッキ(この場合は未使用の山札)のカードが尽きたターンで勝利できなければ敗北となる」ルールが存在する。
さらに自身のターンが回るごとに、必ずカードを1枚ドローしなければならない。
そのため墓地へカードを送る枚数が増えることは、自身の寿命を削るリスクを増加させることも意味する。
しかし遊戯王OCGには「墓地効果」という、墓地に送られて初めて特殊な性能を発揮するカードが多数存在する。
一例をあげると――
- 墓地にいるとき、対象となる別のモンスターカードを強化する。
- 墓地から指定したカードを手札orフィールドに復活させる。
- 墓地にある特定の名前や種族のカードの枚数だけ、能力値が上がる。
- 墓地から復活することで、通常では発揮されないカード効果を現す。
このように遊戯王にとって墓地は第二の炉心というべき重要な戦術拠点であり、墓地効果をうまく活用することで、相手の不意を突いた高度な戦いを演じることが可能となる。
相手からしても、墓地効果を不用意に許すと自身が組む戦術を阻害されるばかりか、殊と次第によっては調子よく攻めていたはずが一発逆転で大敗を喫する危険性すら待ち受けている。
特に墓地肥やしが流行し始めた当時に登場した魔法カード「苦渋の選択」は、一見すると「5枚のカードから1枚相手に選ばせ、あとは墓地に送る」とリスク効果が高そうに見えるが、実際は「デッキの残りカードを確認しつつ、墓地効果を持つor墓地効果の対象になるカードを墓地に捨て、さらに余分なカードを処分してデッキの圧縮を図る」という、とんでもないチート級アイテムとして、登場から間もなく禁止カードへと指定され、今なお永世禁止級という扱いを受ける。
類似例でいえば「天使の施し」も同様で、「自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる」と一見すればリスクが目立つが、これを墓地肥やしに転用するとやはり「苦渋の選択」のダウンサイジング版以外の何物でもなくなってしまう。こちらも準制限カードになって以降、制限と禁止の狭間を行ったり来たりして帰ってこない。
これのダウンサイジング版の「おろかな埋葬」(モンスターカードを墓地に1枚捨てる)さえ制限カードにされたあたり、墓地肥やしが使い方次第でどれだけ凶悪な戦術に化けるか分かって頂けるかと思う。
この墓地効果の応酬の末、遊戯王OCG公式は新たに【除外】という、「そもそも墓地にさえ送らせず安易に復活もさせない」というシステムを導入することで、墓地効果無双に歯止めをかけることになった。
もっとも今度は除外効果の応酬のおかげで、遊戯王OCGのバランス自体がまた崩れてしまうことになったわけだが……。
メディア作品での扱い
アニメ作品でも、主人公たちがエースモンスターを墓地効果で強化したり、墓地から復活させてその効果で逆転勝ちをもぎ取るなど、痛快かつ爽快感に満ちたドラマを生み出す仕掛けとしてよく活用されている。
特に墓地に送られたモンスターたちのパワーを、切り札となるモンスターに集約させて強敵を撃破するパターンは、王道ながら遊戯王アニメのお約束として好評を博している。