概説
TCGにおいて、不要になった自身のカードを置く「捨て山」を意図的に増やすテクニックの事。
捨て山の名称はカードゲームによって「墓地」であったり「トラッシュ」であったりと様々だが、基本的に使用後のカードや戦闘で敗北したカード、もしくはコストとして消費したカードを盤面から除外し、捨てる先である。
捨て山に送られたカードは当然プレイヤーが自由に手を付けることを許されなくなり、そのままでは二度と盤面へ帰ってこないカードである。万が一キーカードが捨て山へ送られようものなら敗色濃厚だろう。
そのためここへカードを送ることは、プレイヤー自ら行う場合はコストやペナルティなど何らかのデメリット効果に他ならないし、対戦相手が行うなら当然一種の攻撃手段である。まして、自ら好んで捨て山へ大量にカードを送るような行為は自殺行為だろう。
と、TCGに疎い人からするとそう映るだろう。
しかし、同時にカードゲームにはこの捨て山からカードをサルベージできる、あるいはサルベージとまではいかなくとも捨て山にあるカードによって何らかの効果を発揮するカードが付き物であり、極端なところでは捨て山に置かれることで真価を発揮するカードすら珍しくはない。
そうした手段があまりにも充実した結果、第二の山札と表現されるほどに、それどころか手札と遜色ない資源として活用可能なゲームも多く存在するのである。
それらのカードゲームでは捨て山へカードを送ることが、デメリットどころかむしろ圧倒的なアドバンテージとなるため、かかる行為を指して「墓地肥やし」と呼称するのである。
そのため、大幅な墓地肥やしが可能なカードや任意のカードを捨て山へ落とせるカードは使用規制が掛けられる事も多い。
使用禁止にまでなっている例としては、遊戯王OCGの「デッキから選んだカード5枚のうち相手が選んだ1枚を残してすべて墓地に送り、選んだカードのうち4枚も墓地に送られるプレイヤー側の苦渋の選択と思わせてどうやってもアドを取られるお相手サイドに苦渋の選択を強いる『苦渋の選択』」やデュエル・マスターズの「相手か自分のお好きなカード1枚を問答無用で山札から墓地へ送れ、当然相手に対して発動することなど滅多に無い『ロスト・チャージャー』」などが挙げられる。
また、この状況にまで至ると捨て山に送られることがペナルティやコスト、攻撃手段として機能しなくなるため、「ゲームから除外する」といった処理やサルベージ困難な別の捨て先がルールとして再設定されるという本末転倒なケースも往々にして見られる。
もっとも、更にインフレが進むとこれですらあまりデメリットにならなくなるケースも見られるのだが…
以下、捨て山を活用するカードの一例
- 墓地にあるカードの枚数を参照として能力値が上がる
- 墓地のカードをフィールドや手札へ再利用する
- 墓地のカードを別の場所へ移動させる事をコストとして要求する
- 墓地へ行った、墓地にある場合に効果を発揮する
墓地肥やし戦術があるTCG
※情報が足りないため、追記募集中
遊戯王OCG
初期の(第1~2期)頃においては、「天使の施し」や「死者への手向け」で「青眼の白龍」等の大型モンスターを捨てて「死者蘇生」等で復活させる“捨て蘇生”戦法くらいであった。
第3期には「カオス・ソルジャー-開闢の使者-」や「混沌帝龍-終焉の使者-」が登場し、その特殊召喚コストとして注目された。
明確な転換期は第4期で、「黄泉ガエル」を筆頭に“墓地で発動する効果を持つモンスター”と、墓地肥やしを基本戦術とするカテゴリ「ライトロード」が登場した事によって墓地利用の価値が大きく上がる事となる。
以降も多少の流行り廃りはあるが、墓地肥やし戦術を主としたデッキが環境の主流として台頭するケースは多く、特にインフェルニティは手札0枚から大量のモンスターを蘇生しいていくというTCG全体で見ても異次元の動きをするデッキとして知られる。
アニメ作品でも、第4~5期に放送されていた『遊戯王デュエルモンスターズGX』の頃から取り入れ始めており、特にヘルカイザー亮が罠カード「パワー・ウォール」でデッキのカードを投げ捨てる姿は印象的である。
遊戯王ラッシュデュエル
遊戯王OCGの子作品と言える本作でも墓地は重要な要素となっており、特にアニメ『遊戯王SEVENS』の主人公である王道遊我の切り札「セブンスロード・マジシャン」は、墓地の属性数を参照とした自己強化効果を持つため、墓地を肥やす事を意識した立ち回りは多い。
デュエル・マスターズ
商品第一弾収録の「ボルシャック・ドラゴン」を始め墓地利用カードは初期からあったが、不死鳥編期でリアニメイトカードが充実した事で本格化する。
一例としては
- バトルゾーンのドラゴンが破壊されると自身をリアニメイトする「黒神龍グールジェネレイド」
- 墓地のクリーチャーが6枚以上あればコスト0で召喚できる「百万超邪 クロスファイア」。
- 墓地からの回収能力を持ち、なおかつ条件を満たせばリアニメイト能力と化す「魔光蟲ヴィルジニア卿」。
- 墓地にカードを溜めつつ、墓地の呪文を唱える「邪眼皇ロマノフⅠ世」や「邪眼皇ロマノフⅡ世」。
- 墓地のクリーチャーを進化元として重ねて出せる「大邪眼B・ロマノフ」
- 「∞龍 ゲンムエンペラー」をはじめ、代替コスト能力「ムゲンクライム」により手札のみならず墓地からも召喚できる「チーム零」のカード達
といった墓地肥やしと相性の良いクリーチャーがいくつか存在する。
Magic The Gathering
こちらでの墓地肥やしから勝ちを狙うデッキとしては以下のような例がある。
- 墓地にマナコストの重いクリーチャーを落とし、それを場に戻すカードを使いマナコストを踏み倒す。
- 墓地のカードを参照とするカード、あるいは墓地のカードをコストとするカードの効力を最大限発揮させるために墓地にカードを貯める。
- 事前にクリーチャーを墓地に貯めておき、戦場のクリーチャーと墓地のクリーチャーを入れ替えるカードを使い盤面をひっくり返す。
- 条件を満たすと墓地から戦場に戻る効果を持つクリーチャーを事前に墓地に貯めておき、まとめて条件を達成して盤面制圧する。
と言った墓地を活用するデッキはいくつか存在する。
また、エキスパンション(拡張パック)ごとにキーワード能力が登場するのが常だが、その中には墓地利用を意識したものも多数存在する。以下はその一例。
能力名 | 効果 | 登場セット |
---|---|---|
発掘 | ドローする代わりにライブラリーのカードを指定された枚数だけ墓地に置くことで回収する | ラヴニカ・ギルドの都 |
探査 | コストを支払う代わりにカードを追放し、それはコスト(1)を支払う | 未来予知 タルキール覇王譚 |
フラッシュバック | カードごとに定められたコストを支払らい追放することで、墓地にある状態から使用できる | オデッセイ・ブロック 時のらせん・ブロック イニストラード・ブロック |
脱出 | カードごとに定められた枚数の墓地にあるカードを追放しコストを支払うことで、墓地にある状態から使用できる | テーロス還魂記 |
特に発掘は墓地肥やしを何度も行えると言った点から壊れ能力の一つとして有名で、また探査を持つドローカードは最新弾がメインのルールでは使えるものの、過去のカードも使用可能なルールでの使用が禁じられると言った事案も起こっている。
カードファイト!!ヴァンガード
クランファイト単位ではグランブルー、Dシリーズ導入後の国家ファイト単位ではストイケイア程度だが双闘が主軸の頃はクラン関係なく行われていた。
この「双闘」は相手のヴァンガードがグレード3以上の際に「ドロップゾーンからカード4枚を山札に戻す」ことで成立するからである。
それ以降もドロップゾーンを活用するカードは幾度か登場しているが、無理矢理大量に稼ぐ必要があるのは2022年7月第1週時点ではグランブルーと双闘程度である。
余談
ホビー商品であるTCGには販促としてタイアップ漫画、あるいはアニメ作品が付き物だが、これらは小学生を中心とするやや低年齢層向けの作品になりがちなこともあり、登場人物のルール理解や戦法の解釈が初心者に寄ったものになることが多い。
そして、この手の作品にはカードの効果を使用し相手のカードを次々と捨て山へ送ることで盤面を混乱させ、更にはデッキ破壊やそこからのライブラリーアウトによる勝利を狙う敵プレイヤーが往々にして登場する。これらの作品では『カードとの絆』といったテーマが描かれることもあり、多くの場合これらの敵と対峙した主人公は捨て山へ送られるカードたちを苦渋の表情で眺め、場合によっては卑怯者だの正々堂々と戦えだのと罵ることすらある。
一方、次々と相手のカードを捨て山に送る光景が絶大なアドバンテージの贈り物にしか見えず、相手が時間を要する割に絶望的なリスクを抱えてしまう戦術を取っているように感じた大きなお友達はこう呟くのである。
「墓地肥やし助かる」と。