ジャッジキル
じゃっじきる
ジャッジキルとは、カードゲーム等の公式対戦において、
審判員がルール違反・反則行為をした選手を失格に出来る権限を利用し、
対戦相手を失格にする事で勝利を得るという盤外戦術である。
- 相手がルール違反行為をする。
- 審判を呼ぶ。
- 相手のルール違反を指摘する。
- ルール違反による相手失格により勝利。
上記手順で行われる。
通常、ルール違反があった場合にジャッジを呼ぶ事は選手の正当な権利であり、
ジャッジが選手に失格処分を下すことも正当な役割である。
「ジャッジキル」を狙うために、ルールやカードテキストの穴を突いて
相手がついうっかりルール違反をしてしまうように仕向けたり、
処理が複雑なマイナーカードを使い相手が処理を間違うのをわざと指摘せずにおく、
ターン終了宣言等をわざと言わないなど、相手のシャッフルの仕方や
些細なミスに難癖をつけるなど、実際に行うのはマナーの悪い行為と言える。
こうした事情から、積極的にジャッジキルを実行するようなプレイヤーは
少数に留まっているものの、カードテキストや大会ルールなどに曖昧な点があり、
処理を間違う可能性や事実上遂行不可能になる可能性があるカードが出てくると
「このカードを使って〇〇した時、相手が××できなければジャッジキルになるのではないか」と、
一種の思考実験のように語られる事もある。
ジャッジキルは、ルール違反を誘発するようなプレイングを行ったり、「こうするつもりだったのに相手が……」のような事後報告という形で行われる。
言うまでもなく、ジャッジの役割は試合を公正かつ円滑に進行することである。
ジャッジは、ルールについての確認と、不正を防ぐ目的で呼ぶべきである。勝ち手段として利用するのは本来の役割を妨害するもので、厳に慎まれなければならない。
また、このような行為がまかり通る背景として、ゲーム側の違反指針の未整備も挙げられる。
下記の様な事態を放置した場合、それを悪用するプレイヤーが現れる。
- 意図しないミスと故意の不正を同列に扱う
- 「注意」「警告」などの軽い罰則がなく「失格」などの重いものしかない
- 世界大会とカードショップのローカルな試合の違反指針が同じで、初心者が多い大会でもプレイミスに重い罰則が適用されてしまう
- 裁定のおかしいジャッジを通報するシステムがない
- 罰則適用後に違反行為と関係者を精査するシステムがない
各カードゲームには違反指針があり、対処方法が異なる。
遊戯王OCG
ルールが競合した場合の裁定がカードごとであり、カードに書かれていない裏の効果があるカードも多い。また、その解釈も統一されておらず、ひどいときにはオフィシャルに問い合わせるたびに回答が異なることがある。そのため、裁定が混乱する原因になっている。
遊戯王では長らく大会での罰則が「そのデュエルで敗北となる」以外なかった事や、
大会ルールが明文化されていなかった事もあり、様々な盤外戦術ができてしまうのでは、という指摘があった
(例:先攻で自ターンが終了した直後にトイレに立ち、試合時間ギリギリに戻ってくる「トイレワンキル」、それに対する対策として相手のカードの何か一枚を抜いておき「デッキ枚数制限を破っている(デッキ枚数は40〜60枚だが、特殊なデッキ形態でなければ40枚にしてあるはずなので39枚はルール違反)」と主張し逆にキルし返す「窃盗ワンキル」等)。
これ以外にも、「マインドクラッシュ」や「強烈なはたき落とし」の効果を悪用し、
相手が特定のカードをプレイしてから「自分はスタンバイフェイズにこれらのカードを使用するつもりだった」と言い張り、
相手の手札をピーピングする、効果によりハンデスを成立させるという悪質な行為が横行し、
デュエリストの間でもこうした盤外戦術が問題視されるようになった。
悪質なケースでは、相手がきちんとフェイズ以降の宣言をしたり、それに同意していても
後から言っていない、自分は同意していないと言い張る事で無理やり巻き戻しや
相手の反則を捏造しようとする非常にタチの悪いプレイヤーが出た例もあり、
こうした負の側面をして「ジャッジキル」という言葉が使われるようになった。
なお、現在使用されているランキング大会ルール規定ではそもそも
「ジャッジを呼び相手に罰則を適用するように求める」行為自体が反則行為の一つとなっており、
「プレイヤー同士が気がつかずに処理を行ってしまったものはデュエルを巻き戻さない」という
一文が加わった事で故意に何かを見逃したり見送って利益を得る盤外戦術は封じられている。
その他、「相手にわざと誤解を与えるプレイングをする」事や「威嚇したり急かす」事、
「故意に遅延行為を行う事」が反則行為の一つとして数えられており、
もしカードの処理を間違ってしまった場合のジャッジによる処分も今までの
「デュエルの敗北」だけでなく、故意でない軽度なものであれば「注意」、
何度か繰り返した場合は「警告」など段階ができた上で基準が公開されており、
先達であるMTG等を参考に整備され直している。
MTG
TCGの中では、最もルールと違反指針の整備が行き届いている。
そのため「ジャッジキル」と言われかねない行為はめったに起こらないが、日本選手権98において過度に厳しい裁定が行われ、類似の行為が多発した過去がある。
カードの相互作用は「総合ルール」と「オラクル(最新のカードテキスト)」、論理学の知識があれば共通の解釈ができるようになっている(できない場合、未解決問題となる)。
また、違反指針は明文化されており、罰則の種類も「警告」「ゲームロス」「マッチロス」「失格」のように細分化されている。また、故意の不正には厳しいが、プレイミスには寛大である。したがって、ジャッジを揚げ足取りの道具として使うことはルールレベルで難しくなっている。
ルール適用度も競技レベルに応じることになっている。そのため、大きな大会では厳格に、初心者が多数集まる大会では寛大にする(プレイミスは巻き戻せばよい)ことが可能。
特徴的なこととして、対戦相手の違反を見逃すことは、一部の例外を除き違反に当たる。
有利の取れない不正の見逃しは警告、とれる場合は失格の対象であるため、適用度の高い大会では相手の盤面にも注意を払う必要がある。
同じく、遅延行為についても非常に厳しい。
引き分けを取るために意図的に試合を遅らせた場合は失格。意図しない場合も警告の対象である。
上記とは別に、動作が複雑すぎるカード及びコンボに対し、『ジャッジを殺す』という意味でジャッジキルと称することもある。
十数年の歴史でルールが複雑化・特定カードとの奇妙な相互作用が放置され続けている遊戯王でよく見られる。
MTGでも、思考実験として、そのようなことが議論に上がることがある。有名な例では、《オパール色の輝き/Opalescence》と《謙虚/Humility》を一緒に出したらどうなるか、など。
現在ではルールが整備されるとともに、未解決問題は速やかに対処されるようになっているため、実際の試合で問題になることは少ない。
このようなルール上混乱するようなカードは、ジャッジの裁定が異なった場合に不利になることが多いので、公式戦で利用するべきではないとされている。
なお、近年では「ジャッジが積極的に不審な判断を行い、選手を失格にする」という
斬新なジャッジキルというかキラージャッジな案件が発生しており、世界中のプレイヤーから問題視された。
遊戯王・MTG・ポケモンカードなど、国際的にプレイヤーが多い大会で2017年~2019年に相次いで発生しており、
デッキチェックを既にパスしているにもかかわらず、試合中に突然デッキチェックで中断からの
マークド(カードに何らかの印をつける行為)での反則とする、
さして長考しているわけでもないのに長考で注意をしまくる(数倍の時間を使っている対戦相手にはしない)などの
はたから見ると大変に胡散臭いジャッジの行動が見られた。
しかも、これらのカードゲームで共通して失格処分にされているのが日本人選手である事などから、
ジャッジの人種差別的感情や使用言語・人種による贔屓、選手のスポンサーとなっている企業に対する嫌がらせ、
特定選手による買収・八百長などが存在しているのではないか・・・という批判が世界中から殺到した。
MTGの発行元であるウィザーズ社はこれ以前から起こっていたジャッジが関わった疑惑のある
リーク問題なども含め、競技の大前提である公平性・ジャッジへの信頼が揺らいでいる事を
非常に重く受け止めており、「ジャッジアカデミー」というジャッジの教育・認定及び管理を行うための団体が独立する事となった。
遊戯王でも、前述のランキング大会規定の改定・罰則規定/基準の公開などを行っており、
プレイヤーによるジャッジの不正な利用及びジャッジによる曖昧な判断を防ぐ動きが見られる。
なお、ポケモンカードでは以前よりフロアルールとして罰則規定自体は公開されているのもの、
問題が起こったWCS2019大会の次の大会にあたるWCS2020が諸般の事情により
中止されてしまった事などにより、大会ルールの改正・厳密化が行われるかなどは現段階で不明なままである。