上級国民
じょうきゅうこくみん
概要
特権階級などと大体同じ意味を持つ言葉。
政治家や役人などの権力者、富裕層、大物芸能人および(それらを経験した高齢者)や親族など、不祥事が表沙汰にならないか、なりにくいと考えられている人々をまとめて呼称した言葉。
日本では戦後の憲法改正以後、天皇・皇族を除いて特別な身分を有する国民は存在せず、貴族などの設定は憲法によって禁止されている(以前は華族などがあった。現在でも外交官、在日米軍関係者など一部の外国人には法で特権が認められている)。
しかし、身分制のない国家でも閨閥関係などで事実上の特権は受け継がれ、貴族の様な階層を形成していることがある。現代日本におけるそうした格差社会、あるいは一部を加筆特権的な雰囲気・空気を皮肉る意味でこの言葉は使用される。
既に一般に広まった類似語(公的に制度化されていないものを身分階級のように称する語)としては独身貴族などがあげられる。
成り立ち
この言葉はネット黎明期からあったとか、ネット普及前からあったという説があり、発祥は不明。
広く認識されたのは2015年の東京オリンピックエンブレム騒動(佐野研二郎氏のデザインに対する盗作疑惑・ならびに氏の他のデザイン物における無断流用(トレス)発覚騒動)がきっかけ。
この件で佐野氏のエンブレム採用中止を決めた記者会見において、五輪委員会の審査会の話を紹介する形で「一般国民」という語が度々紹介された。
要約すると、(エンブレムについて)「デザイン界としてはオリジナルデザインだと認識しているが、一般国民には理解しにくいものがあった」という趣旨のものであった。 「デザイン界の専門家」に対する「一般国民」(デザインの専門家以外―いかなる特権階級であっても―)という意味でその言葉を利用したのだが、どうにもこの内容は「上から目線」であると認識され、そのことが「一般国民」の対比として「上級国民」と皮肉を込めて言われるようになってしまった。
転じて
この時点では「上級国民」とは(上から目線の)「専門家」を指す言葉だったと言える。しかし、如何とも汎用性に乏しく、対して言葉自体の分かりやすさからすぐさま意味が転用されるようになる。
その後は概ね上述したような金持ち・政治家・権力者(またはそれらを経験した高齢者)など漠然とした範囲に対する批判と皮肉を込めたネットスラングとして一定の使用を得ている。
(しかし「上級国民」と我々が呼んでる時点で問題の人間を優遇させてしまっているのかもしれない)
2019年4月に発生した東池袋自動車暴走死傷事故で、被告人が自身の責任を全否定し、当該の自動車メーカーのトヨタ自動車に責任を転嫁してきたことから「高齢だから減刑される」と、幅広く知れ渡ることとなった。
ちなみに「実際に容疑者の立場や地位によって減刑されるのか」という点については「それの当事者でないとわからない」としか言いようがない。
そこら辺の事情は実際に審理に参加した者でもない限りわかるはずもないが、その被告に下された判決が他の人間からして不十分と受け取られた場合「身分によって減刑が適用されたんだ」「高齢者だから減刑された」という印象を抱かれがちなのもこの言葉が引用される一つの要因になっているものと思われる(ただし、資産および人間関係の都合から法律に関する準備と用意がしやすく、結果的に裁判で有利になりやすいというのはあるかもしれないが)。