ラムティーガー (Rammtiger)とは第一次世界大戦中に開発された工兵戦車である。ラムは衝角を意味する。基本的には市街戦において敵の立て籠もる建造物やバリケードを破壊する目的で開発された。「まさか」という感じだが、この姿で建造物に体当たりすることで対象をを破壊する珍兵器である。
基本的な設計はポルシェティーガーことVK45.01 (P)の車体に専用の鋼板を被せたものになっており、武装は車体前方機銃のみで事実上の体当たり専用機となっていた。鋼板は瓦礫が積もらないように傾斜を付けた形に構成され、前部には操縦席からの視界を確保するために穴が切り取られており、「キャタピラの付いたUFO」というような異様な雰囲気を醸し出している。VK45.01 (P)は後にティーガーIとして実用化されることになるVK45.01 (H) との競作に敗れた試作戦車だが、比較審査の結果が出る前にヒトラーの先走りにより量産命令が下ってしまっており、砲塔より先に車体の生産準備が進められた上に量産命令が撤回されてしまった結果、車体だけが未完成状態で100両分も余っていたものである。この車体の大半(90両)は廃品利用的にエレファント重駆逐戦車の製造に流用されることになるが、一部はラムティーガーの製造に使用されることになる。ラムティーガーは1943年前半に3両のみが製造された。これらの車両は試験にのみ使用され、実戦を経験することはなかったとされている。
このような車両が開発された背景として、当時のドイツでは市街戦に使える大口径砲を搭載した自走砲が不足していたことが背景にあると思われる。大口径砲を装備したものはオープントップ式なので頭上から攻撃を浴びる市街戦ではまともに使えず、密閉式の突撃砲は105mm砲が限度だったため頑丈な建物に立て籠もられると詰みだった。このため急遽15cm砲を密閉式戦闘室に装備した3号15cm自走歩兵砲が開発されていたが、短期間で開発したため完成度が低く性能は不十分だった。1942年後半に行われたスターリングラードの戦いにおいて市街戦用車両の不足はドイツ軍の深刻な欠陥として認識されるようになった。この種の兵器の準備が十分に整ったのはブルムベアの量産が始まった1943年春になってのことだった。
関連項目
- ゴリアテ(兵器) ラムティーガーと同じ課題を爆弾を自走させて解決しようとしたもの。