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概要編集

第二次世界大戦中にドイツが開発した兵器。

当時占領下にあったフランスで開発されていた兵器(spécial K)が元ネタとされている。


身も蓋もないことを言ってしまえば「リモコン操作で敵陣や敵戦車に突っ込ませる自走式の爆弾」。元々は地雷原除去(地雷原で爆発させて地雷を誘爆させ、除去する)などに使われていた兵器である。

小型の戦車のような外見の車体に75kg~100kgもの爆薬が詰め込まれている。


ゴリアテ(とイカ娘)


100kgの爆薬を搭載できる能力を持つゆえ、爆薬を降ろせば上のイラストのように人間一人を乗せる(載せる)こともできる。

動力は初期モデルはモーターによる電気式だったが、信頼性の面で問題があるため後にガソリンエンジンによる内燃式に変更された。


ゴリアテの堅実性編集

実はこの手の「自走する爆弾・爆雷」という発想はドイツ(と、その元ネタを作ったと言われているフランス)以外もしていた。

例を挙げれば、

などがあげられる。


しかしゴリアテはこいつらと比較しても非常に堅実な部類の兵器であると思われる。

ゴリアテは、

  • 動力は電気モーター或いはガソリンエンジンで無限軌道を駆動する
  • リモコン操作が可能

という点がある。

まずパンジャンドラムであるが、これは「論外」の一言。

動力は周囲に付けられたロケットエンジンの噴射力で本体を回転させ、前進するというもの。

パンジャンドラムの項目の方が詳しいが、ロケットエンジンというかロケットは基本的には直進しようとするものであり、車輪を回すものではないのである。

一応ロケットレンチというものが不発弾の信管除去に使われているが、これは飽くまで「信管を回して外す」ものであり「何かを回転させて前進させるもの」ではない。

そもそも噴射力で車輪を回すということ自体がおかしく、同じ要素を活用するならロケット砲みたいな兵器を考えた方が現実的だと思う。まあそこは英国だからという点で大目に見ておこう

次に我らが日本のタイヤ爆弾。こいつはタイヤに爆薬と圧縮空気を大量に詰め、圧縮空気の噴射で転がして敵陣に突っ込ませるというシロモノ。はっきり言ってやっていることはパンジャンドラムとほとんど変わりない

さて、最後にローリングボムであるが、こいつは「内蔵したレシプロエンジンで球型の本体を回して前進する」という(飽くまでパンジャンドラムやタイヤ爆弾と比べれば)動力だけなら堅実な方法を採用している。

しかし、こいつは球型(直径3mのトゲボール)なので凸凹した地形ではどこに転がるか分からない。転がって移動するという方法にも無理があるのである。

何よりこの3つはどれも誘導手段が存在しない、発進したらそのまま転がすしか無い兵器なのである。

変なところでバランスを崩して自分の方に戻ってくるなんてこともあるかもしれない。


これらを考えれば、ゴリアテが如何に堅実な兵器だったかがわかるだろう。


ちなみに自走爆雷ビートルは二つあるキャタピラを電気モーターで駆動する堅実なつくりとなっているが、なぜか研究のみで終わっている。


クロコダイルは安全に塹壕などを突破する戦車の代替として開発され、ゴリアテに似た有線操縦を行えたが実践に投入する前に戦争が終わってしまった。

V.P.38は非常に大型であったものの無線操縦を行えたが、無線の混線という問題が残っていた。未完成のままドイツによるフランス侵攻を受け、侵攻後も研究は続けられていたが後に破棄されている。

spécial Kはハーフトラックの発明者であるアドルフ・ケグレスによりV.P.38の欠点を改修する形で開発されるも、ドイツに接収されてしまう。


無線操縦戦車「長山」は長山大尉が個人的に開発したもので、農耕用トラクターを元に改造された。有人操縦も可能だが、戦場までの輸送に使用するもので、実際の戦闘には車体に爆薬を搭載して無線で操縦し、敵トーチカ等に爆薬を設置後に帰ってくる、もしくは搭載された機関銃及び爆薬筒の発射による攻撃が主な使い方となっていたが試験のみで実戦投入されることはなかった。

遠隔操縦器材「い号」は八九式中戦車を無線操縦化したものが原型となっており、発動機を電動式に変更し、有線化して正式化。専門部隊である立工兵第27連隊に集中配備されたが実戦投入されることは無く、機材は焼却もしくは爆破処分され、車両類は埋没処理や利根川に投棄された。

余談ながら、リモコン操作の戦車はソ連でも研究されており、対フィンランド戦では火炎放射機搭載型のものが投入されている。


ZHDT-3は鉄道魚雷の名のとおり、鉄道のレール上を走行して敵装甲列車への攻撃に使用するもので、遠隔操縦式とはいえ特に語るものはない。

レール上を走るだけなので。

一応道路上でも60km/hほどで走行可能。


欠点編集

  • 有線式なのでケーブルが切断されると止まってしまう(無線はフランスのV.P.38のように混線による誤作動があるので一長一短ではある)
  • 履帯とは言え全高が足りないので、12cm以上の段差があると進めない
  • 時速10km未満
  • 小銃弾で破壊できてしまう脆弱さ
  • 重量数百キログラムで運搬に不便
  • 当時の実録音声付き映像がないので確証はないが、小さくて強力なエンジンと戦車同様のキャタピラから推測すると駆動音は大きいはずなので小型兵器の割に隠密行動は不可能。

とまぁ、いろいろと欠点はあるのだが、最大の問題は値段だろう。

ガソリン型が1000ライヒスマルク、電動型に至っては3000ライヒスマルク。ビートルが三台買える値段である。

この値段に加えて上記の通りの脆弱性。戦場において目標を達成できるのは極々わずかであるのでコストパフォーマンスが悪い。


当時としても、その珍妙な形態から珍兵器扱いを受けており、米兵が鹵獲したものを、爆薬を除去した後に上に乗ったまま操作して嬉しそうに遊んでいる写真が残っている。

故障して行動不能になったゴリアテに向けて、米兵が面白半分に手榴弾を投げ込んだら文字通りの「自爆事故」につながって1部隊が壊滅してしまったという笑えそうで笑えない例もあるとか。

アメリカ何やっとんねん。


しかしながら、無人なので少なくとも自爆事故を起こさない限りは自軍に被害が出ない上、何より神出鬼没で小型で発見しにくいなどの点で前線での評判は悪くなかったそうな。

敵にとっても無視できるものではなく、特にポーランド軍からはなんだかんだで恐れられた兵器でもある。


そして、21世紀……。編集

 20世紀の大戦から科学技術が進歩し、現代の先進国の軍隊は無線遠隔操作(ラジコン式)の兵器の導入と開発が進められ、ドローンと呼ばれることが増えている。特にドローンが目覚ましい活躍を見せた2022年のウクライナ侵攻以降、ドローンの活用法と対ドローン戦術が重要なテーマとなっている。

同様に遊ぶ為に作られたラジコンの存在もあり、分野によっては事業用としての利用も進められている。


 ある昭和のロボットアニメの主題歌に「良いも悪いもリモコン次第」という歌詞があった。道具をどう使うのかは人間に委ねられているのだ。



登場作品編集

名前と実態のギャップと「無人戦車」というインパクトから、ゲームやアニメに登場することも多い。


一定時間経過すると使用可能になるリモコン爆弾として登場。

制作決定の特報で大挙して姿を現しファンを驚かせた。

本編では爆弾に代わりソナーを搭載して大洗女子学園の艦内に隠された戦車を捜索。

艦底に隠されていたMk.IV戦車を発見した。

  • 超戦車イカヅチ前進せよ!/鋼鉄の雷鳴

名前のみ登場。10両のT-35による一斉射撃で日本軍戦車隊を追い詰めたソ連軍に対し、主人公はゴリアテと「い号」を参考にした遠隔操作式戦車にオイ車の張りぼてを被せて囮にした。

  • 戦闘親衛隊

新谷かおる作品の戦場ロマン・シリーズ(一話完結)

第二次大戦末のヨーロッパにて、一致団結した米軍とドイツ軍が守る村を襲う脱走兵集団の兵器として登場。防衛戦の最中、コントロール線を見つけた米軍兵の一人が辿っていくうちに略奪兵の逆襲を受けるという悲劇的な演出がある。

連載当時の日本語訳資料から『ゴリアート』と表記されている。

PS2「新コンバットチョロQ」に登場。

独立したタンクではなくタンクに装備できる武装パーツとして登場。自動的に敵を追尾するタンク爆弾を射出する。1発ずつしか発射できず、地上でしか使えないが威力は複武装の中では最強クラス。


関連項目編集

ナチス・ドイツ ロボット ラジコン

地雷犬ソ連側が開発(?)した自走式爆弾。低コストである反面、操縦が効かないという、ゴリアテとは対照的な性質であった。

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