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第二次世界大戦のさなか、イギリス軍が世に問うた「勝った側の駄っ作兵器」。

→ 詳細は「wikipedia:パンジャンドラム」へ

概要

フランスへの上陸作戦にあたり、ドイツが建設した「大西洋の壁」のコンクリート製防護壁を爆破するための案が募られ、上陸用舟艇から射出して防護壁まで陸上を自走する爆雷が提案された。

1.8tもの爆薬の入った円筒の両側に直径3mほどの車輪があり、取り付けられたロケットの噴射で回転して前進する仕組みになっている。

実験は海水浴客で賑わう保養地・ウェストワード・ホー!で行われたが、砂浜で空回りする、どこへ転がるか予測不能、ロケットが脱落、重すぎて水没、などのトラブルが相継ぎ、9回の実験は全て失敗。海軍首脳を招いての実験では迷走したパンジャンドラムが見学しているお偉方の方へ突っ込んできて、皆逃げ惑うなど散々な結果に終わり、開発は中止された。

評価

しかし、これはドイツ側に

「イギリスが大西洋の壁を爆破するための兵器を開発している」→「こちらが防備を固めた地点を狙っている」→「上陸地点はパ・ド・カレー!」

……と思わせるための欺瞞作戦の一環であり、海水浴客の見守る中、大騒ぎで行われたパンジャンドラムの実験はすぐにドイツ側の知るところとなり、十分にその役目を果たした。

米英軍の上陸予定地は防壁を爆破する必要のないノルマンディー海岸である。

名前の由来

パンジャンドラムという名前はサミュエル・フットの詩「The Great Panjandrum himself」のタイトルに由来する。

この詩の作成経緯も中々にぶっとんでおり、一度聞いたセリフは全部覚えられると自慢したチャールス・マックリンに対して、作ってきたもの。

つまり、覚えられない様に作られた詩であり、造語や脈絡のない文章が多数含まれている。

なおパンジャンドラムは結婚式に出席した人物の名で、頭に小さな丸ボタンを付けている。

パンジャンドラムという単語はギリシャ語の接頭語「Pan」とラテン語の接尾語「rum」を使って作った、特に意味は無い造語……とのこと。

この詩は後に挿絵付きの本として出版され、その挿絵から「威張りん坊」や「自慢屋」の代名詞として使われたとか。

補記

2008年、ノルマンディー上陸作戦65周年の記念行事の一環としてパンジャンドラムのリバイバルが行われてしまった。

あるぇー!? なんで動くの?

現在ではコンピューターシミュレーションなどでロケットの直進力の回転力変換をある程度予測して製作することができる。

回転力としてロケットを使う事自体は完全な間違いではなく、遠隔操作により瞬間的に大きなトルクを得られることから現代においては不発弾の固着した信管の除去に『ロケットレンチ』という道具が使われている。ただしこれが可能なのは、対象となる爆弾や砲弾が固定されているからである。

問題は当時の技術力が全く追いついてなかった事ではなく、ロケットで本体を回転させて前進させること自体に無理があった。

「自走式陸上爆雷」という発想そのものはそうキテレツではなく、ドイツのゴリアテ、フランスのspécial Kやクロコダイル(spécial Kはドイツに接収され、ゴリアテの原型となった)、アメリカのローリングボムが有名で、日本にもタイヤ爆弾がある。

イギリスでもヴィッカース社によりキャタピラで走る自走爆雷ビートルが1939年から1943年にかけて研究された。ゴリアテ同様に胴体左右に無限軌道を持つ構造で、上陸用舟艇に使用するための水陸両用型、対戦車トラップ型も実験が行われていたが採用されなかった。

トーマス・エジソン

トーマス・エジソンはパンジャンドラムと同じ仕組みのヘリコプターを考案したが、開発は失敗に終わった。

宮崎駿

この事実を知っていたのかいないのか、後に名作(ただし、シリーズ全体のファンからの評価は必ずしも芳しいとはいえない)と呼ばれる『ルパン三世 カリオストロの城』でカリオストロ伯爵の乗るオートジャイロのローター旋回補助動力としてこの機構を採用。

……ただし、ヘリと違ってあくまで推進プロペラ用のメインエンジンが主動力であり、この機構はローターの回転を促進してSTOL性を向上させるためのものにすぎない。

ネビル・シュート

当時海軍中尉だったネビル・シュートが開発に参加しており、「パンジャンドラム」という名前も彼がサミュエル・フット「偉大なパンジャンドラム」から引用してつけた。操作の為のワイヤーが追加された際にはシュートが操作を行った。ネビル・シュート財団のサイトにもパンジャンドラムの記事がある。

なお、彼はパンジャンドラム以外に火炎放射装甲車コカトリス、対空火炎放射器といった兵器の開発にも参加している。

パンジャンドラムのアイデアはシュートの同僚が出したというが、誰なのかは不明。(バーンズ・ウォリスなのでは?)

ネビル・シュートは作家としても成功し、核戦争後の世界を描いた「渚にて」などを遺した。

創作物における扱い

戦場ジョークを元に各国の様子を描いた漫画『Axis Powersヘタリア』の中でアーサー・カークランド(イギリス)がパンジャンドラムを作ろうとして怪我をする場面がある。

怪奇創作サイト「The_SCP_Foundation」の日本支部で生まれたSCPオブジェクト、「SCP-066-JP」で、「ミニブラックホール・SCP-066-JP-1より射出される金属塊の画像」という設定で横転したパンジャンドラムの写真が使われている。

FPSゲームBF1942のMOD、FHSWでは操作可能兵器として登場する。

類似するキャラクター・兵器

ファンタシースターオンライン2には「アンジャドゥリリ」という敵キャラが登場する。形状や語感などから「モチーフはパンジャンドラムなのでは?」とプレイヤーから指摘されることがしばしば。

ヴィジランテ8には、パンジャンドラムを武器とするキャラクターが登場する。

形状的はパンジャンドラムというよりタイヤ爆弾に近いが、障害物も何のそのでそこそこの追尾能力もあり超高性能。

スターウォーズ≪クローンの攻撃≫には、「ヘイルファイヤードロイド」(別称ホイールドロイド)と呼ばれる兵器が映画終盤のジオノーシスの戦いに登場している。大型戦車の割に軽量で機動力も高い。

ガールズ&パンツァー劇場版には、廃業した遊園地観覧車の軸を破壊し、転がして大学選抜チームに包囲された大洗連合チームを救出する奇策が出てきた。→詳細は観覧車先輩を参照。

機動戦士Vガンダムには、アインラッドという1輪形乗用サブフライトシステムが登場。作中ではなかなかに高性能だが、どちらかと言えばパンジャンドラムを意識したジャンクなガジェットとして、バイク戦艦同様演出上の悪意な意味合いが強い。

マジンガーZには、類似した形状のダムダムL2という機械獣が登場。両輪には無数のスパイクを持ち、さらに両端にドリルという痛そうな武装を持つ。

ぼくらのには、「ドラム」という主攻撃が転がりという「敵」のヌイグルミ(各平行世界代表の巨大ロボット)が登場している。単に転がっているわけでは無く、空間に対して回転しているというオーバーテクノロジー過ぎて原理が全くわからない存在である。

ブレイブウィッチーズには、ネウロイの巣「グリゴーリ」というパンジャンドラムを横に倒したような形状の超大型ネウロイが登場。

アーマードコア6にはヘリアンサスというC兵器が存在するが、こいつの形状と攻撃方法がまんまパンジャンドラム。ファンからはルビコニアンパンジャンドラムという蔑称…もとい愛称で呼ばれている。

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