解説
ラムティーガー (Rammtiger)は、第二次世界大戦中にドイツで開発された工兵戦車。ラムは衝角を意味する。
基本的には市街戦において敵の立て籠もる建造物やバリケードを破壊する目的で開発された。建造物に体当たりすることで対象を破壊する珍兵器である。
車重は60トン弱あり、最高速度は35km/h出るのでかなりの破壊力がある(はず)。
設計
基本的な設計はポルシェティーガー(VK45.01(P))の車体に専用の鋼板を被せたものになっており、砲塔は撤去されており、武装は車体前方機銃が残るのみで事実上の体当たり専用機となっていた。
鋼板は瓦礫が積もらないように傾斜を付けた形に構成され、前部には操縦席からの視界を確保するために穴が切り取られており、総じて「キャタピラの付いたUFO」と評せるような、異様な雰囲気を醸し出している。
開発
ポルシェティーガーはティーガーIの開発計画においてポルシェで設計された試作戦車で、採用されなかった。
しかし、比較審査の結果が出る前にヒトラーの先走りにより量産命令が下ってしまっており、砲塔より先に車体の生産準備が進められた上に量産命令が撤回されてしまった結果、車体だけが未完成状態で100輌分も余っていた。
この車体の大半(90輌)は廃品利用的にエレファント重駆逐戦車の製造に流用されることになるが、一部はラムティーガーの製造にも使用されることとなる。
ラムティーガーは1943年前半に3輌のみ製造された。これらは試験にのみ使用され、実戦を経験することはなかったとされている。
開発の契機として考えられるのは、当時のドイツでは市街戦に使える大口径砲を搭載した自走砲が不足していたこと。
大口径砲を装備したものは上面に装甲が無いオープントップ式が多いため、頭上から攻撃を浴びる市街戦ではまともに使えず、密閉式の突撃砲は口径105mm程度が限度だったため、頑丈な建物を破壊できる程の威力は発揮できなかった。
このため、急遽15cm砲を密閉式戦闘室に装備したIII号15cm自走歩兵砲が開発されていたが、短期間で開発したため完成度が低く性能は不十分だった。
1942年後半に行われたスターリングラードの戦いにおいて、市街戦向きな車輌の不足はドイツ軍の深刻な欠陥として認識されるようになった。この種の兵器の準備が十分に整ったのはブルムベアの量産が始まった1943年春になってのことだった。
関連項目
- ゴリアテ(兵器):ラムティーガーと同じ課題を爆弾を自走させて解決しようとしたもの。