巽征丸
たつみせいまる
人物
「飛騨からくり屋敷殺人事件」の登場キャラクター。
(ドラマ版では第1期第6話『首無し村殺人事件』、第5期8話『首狩り武者殺人事件』)
礼儀正しく母親想いの好青年であるが、前妻・綾子の子である龍之介・もえぎ・隼人ら義理の兄弟からは嫌われている。
前当主・蔵之介の遺言により家督と財産の相続人に選ばれるも、それにより「首狩り武者」を名乗る者に命を狙われる。
以下、ネタバレ注意
本事件の第二の犠牲者であり、首狩り武者の祠で生首が発見された。
真相
実は征丸は紫乃の息子ではなく、前妻の巽綾子の実子である。
紫乃は高校の頃、綾子に手酷く苛められており、その後の人生も不幸続き。言い寄られて関係を持った男にも捨てられ、一人出産した病院で、偶然綾子を見かける。
同時期に妊娠・出産したのに自分と綾子のあまりの境遇の違いを恨んだ紫乃は、「息子にだけは惨めな人生を歩んでほしくない」という思いに囚われ、嬰児交換を行ったのである。
赤ん坊には罪はないと思ってか、その後は入れ替えた綾子の子を「征丸」として大事に育て上げる。しかし本当の息子である「龍之介」の姿を近くで見たいという一心で、巽家の使用人となり、再び綾子に虐げられる日々を送りながらも、成長した龍之介を見守っていた。そして綾子が急逝し、蔵之介に見初められて後妻の座に収まった。
しかし龍之介ら三兄妹と征丸は折り合いが悪く、蔵之介が「征丸に全財産と家督を相続させる」との遺言を遺した事で両者の関係はさらに悪化。今まで後妻の子だからと馬鹿にされてきた征丸は、ここぞとばかり蔵之介を嘲笑う。
そしてこの瞬間、紫乃は18年間手塩にかけて育ててきた征丸を殺害する事を心に決めた。
動機は二つ。一つは「本当の自分の子である龍之介に家督を相続させる為」。嬰児交換までして龍之介に幸せになって欲しいと願い続けてきたのに、征丸が相続したのでは今までの苦労が水の泡になる。
そして二つ目は「その嘲笑う顔がかつての綾子そっくりだったから」。18年間我が子として育ててきた征丸が、所詮綾子の子供だったと気付いた時、綾子に虐げられ日陰の人生を歩んできた憎しみが、遂に爆発してしまったのだ。
かくして征丸は、何一つ落ち度がないにもかかわらず実の母親(だと思っていた育ての母)に殺害され、首を切られるという哀れな最期を遂げた。上述の二つ目の動機となった笑い顔も、自分や母を虐待した巽家への、単なる意趣返しだったであろうに。
金田一シリーズの被害者の中でも屈指の悲惨さは現在でも語り草である。
『金田一少年の事件簿外伝犯人たちの事件簿』では彼の生首を模した物体を征丸ジェットコースターのアイコンにされ、ますます哀れみが増した(元ネタはきかんしゃトーマスだろうか)。