CV:久野美咲
概要
アビスにいた先住民の少女。決死隊の案内役として彼らに付いて行った。警戒している時や驚いた時に「シャアン」という声を上げる癖(?)がある。
子供を産めない身体であるため、部族の同胞から役立たずと言われ半ば厄介払いされていた。原作者のつくし卿のツイートでは、追放される前に自分から飛び込んできた(決死隊について行った)ことが明かされている。当初は現地の言葉でしか話せなかったが、ベラフから彼らの言葉を教わったことで決死隊と同じ言語で会話できるようになった。
彼女の背中には、おそらく虐待による生傷と、子供が産めない体であることを示す内容の入れ墨が入れられている。
同行後はヴエロエルコに母性を感じて懐くようになり、また彼女からも大切に思われるようになったことで、共に過ごすにうちに欠けたもの同士が補い合うようにして擬似親子のような唯一無二の関係を築いていく。
「代わりとかじゃない ヴエコがいい…」
「離したりしないよ… イルミューイ…」
決死隊は厳しい道のりを超え、ついに深界六層へ行き着いたが、そこで後にも先にも行くことは叶わなくなってしまった。この地を第二の故郷とすることにした決死隊と共に、イルミューイは過酷ではあるものの皆で助け合いながらの日々を過ごす。その中で、深層六層の原生生物にしては大人しいヤドネをヴエコたちと共に可愛がるようになる。そのヤドネは別の原生生物に捕食されてしまうが、ヴエコにそのヤドネの骨か爪牙を加工した形見の首飾りを作ってもらい、以降その首飾りを身につけるようになった。
しかし、水に擬態する原生生物『水もどき』に寄生されてしまい、激しい下痢、発熱の症状が現れるようになり、ヴエコの必死の看病の甲斐なく熱が下がらないまま著しく衰弱していってしまう。
イルミューイが衰弱していく中、ちょうど別行動していた食糧調達隊が変わり果てた姿で帰還する。生き絶えた彼らの荷物から見つかった『遺物』を干渉器は願いを叶える卵である《欲望の揺籃》と呼び、雑多で複雑な大人ではなく子供であれば遺物の効果が正しく発揮される可能性が高いと告げる。変わり果てた仲間たちを見ていたヴエコは一旦躊躇するが、イルミューイの病態が悪化、左手が激痛を伴いながら溶けた鋼のように変形してしまう。苦しむイルミューイの姿を見て決意したヴエコはワズキャンに《欲望の揺籃》を彼女に使えないか直訴し、そして使用許可は無事に降りた。
イルミューイに《欲望の揺籃》を使用してしばらく、彼女は元気に回復し、起き上がって動けるようにもなった。
「みてヴエコ! ぜんぜんいたくない!」
溶けた鉛のように崩れた左手が治らぬまま。
脈も元に戻り、元気に回復したように“見える”イルミューイ。彼女に使用した《欲望の揺籃》は胸に半ば埋もれるようにして同化しかけていた。回復したイルミューイは、自分が何を願ったのかは覚えていなかった。痛みだけでなく空腹すら感じなくなった彼女に生じている何かしらの変化に、ヴエコやベラフは悪い予感を覚える。
そして、その予感は的中した。
彼女の肉体が、徐々に変形し始めたのである。大きな動物の耳のようなものや、服のように体を覆う毛皮のヒダのようなものを始めとして、いうなればイルミューイの体は『成れ果て』のようになっていった。
そして数日が経過した後、全員が寝静まっていた中、突然イルミューイの叫び声が響き渡る。
「みて… ヴエコ…」
「ほら… ほら…」
「あかちゃん…」
その叫び声に慌てて駆けつけたヴエコが見たのは、“白い小動物の様なモノ”を《欲望の揺籃》があった胸に空いた穴から産み落とし、“出産”の苦痛の名残りを表情に残しながらも笑みを浮かべるイルミューイの姿だった。
しかし、その「赤子」には消化器官がなく、食べることも飲むこともできずにイルミューイの手の中で弱っていき、翌日に息を引き取った。動かなくなった「赤子」を抱きしめて激しく泣きじゃくるイルミューイだったが、これは地獄の序盤に過ぎなかったのである。
1人目の「赤子」が亡くなったあと、イルミューイの元を訪れたヴエコが見たのは、胸の穴から2人目の「赤子」を産み落とした彼女の姿だった。
そして2人目も、3人目も、その次も、生まれては死んでいった。その度に願いを奪われる悲しみに打ちひしがれて涙を流すイルミューイだったが、そんな彼女を気遣い支えていたヴエコにも、ついに『水もどき』の症状が出てしまう。
その後、ワズキャンは症状を抑える『料理』を仲間に振る舞ったことで、ヴエコ含め全員が一命を取り留めた。
大丈夫!皆にも振る舞ったさ!
彼らに振る舞われたのはイルミューイの子供達である。どうやら、その肉を食べる事で症状の進行を抑える事が出来るようであった。
また生きた子供の方が効果が高いためワズキャンは産後すぐに子をイルミューイから取り上げるという行為を繰り返していた。
ヴエコが回復した時にはイルミューイは既に人の形を失って言葉も話せなくなっており、それでも感情がある程度残っていたのか、生まれたばかりの我が子を愛おしそうに抱きしめたり、ワズキャンに子を取り上げられた時は悲鳴のような声をあげたりしていた。
そんな彼女の子を救うどころか、自分も結果的に子を食べることに加担してしまい苦悩するヴエコに対しても、優しく抱きしめて慰めるようなそぶりをしていた。
生きる為に子供達を奪われ続ける日々が続く中、いつしか決死隊から信仰を受けるようになっていたが、イルミューイはいつしか悲鳴すらあげなくなっていた。
そして大きく形を変えた彼女は層の中心部へと向かって行った。
以下ネタバレ
成れ果て村『イルぶる』
村とはイルミューイの成れ果て、決死隊の願いによって生み出された黄金郷であった。
彼らがその身を食わせる事で彼女の一部として永遠の命を得ており、価値を与え続ける事で存続している。
そして彼女の最後の願いで欲望の揺籃から新たな命ファプタが誕生した。
食されたイルミューイの子供達は村人たちへの恨みを忘れてはおらず、満を辞してファプタが帰還した際には彼らを根絶やしにすると宣言。末の妹であるファプタに無念を託した。