イルミューイ
いるみゅーい
アビスにいた先住民の少女。決死隊の案内役として彼らに付いて行った。
人見知りで警戒心が強いが、年相応に甘えたがりでもあり、懐いた人物には抱きついたりいたずらをしたりするなどの無邪気な面が見られる。そんな性格からか、彼女が作中で名前を呼んだのはヴエコとベラフのみ。
警戒している時や驚いた時に「シャアン」という声を上げる癖(?)がある。
部族内での子をたくさん産むほど偉いという考えのもと、イルミューイの母はたくさん子を産んだことから身分が高く、かつてイルミューイはそのたくさんの兄弟の中で唯一の女の子だったことから家族に可愛がられていた頃もあったが、検査により子供を産めない身体ということが判明してからは家族や部族の同胞の態度は一変し、役立たずと言われるようになり、半ば厄介払いされており、原作者のつくし卿のツイートでは追放される前に自分から飛び込んできた(決死隊について行った)ことが明かされている。
当初は現地の言葉でしか話せなかったが、ベラフから彼らの言葉を教わったことで決死隊と同じ言語で会話できるようになった。
彼女の背中にはおそらく虐待による生傷と子供が産めない体であることを示す内容の入れ墨が彫られている。
同行後はヴエロエルコに母性を感じて懐くようになり、また彼女からも大切に思われるようになったことで共に過ごすにうちに欠けたもの同士が補い合うようにして擬似親子のような唯一無二の関係を築いていく。
「代わりとかじゃない ヴエコがいい…」
「離したりしないよ… イルミューイ…」
決死隊は厳しい道のりを超え深界六層へ行き着いたが、そこで後にも先にも行くことは叶わなくなってしまった。
この地を第二の故郷とすることにした決死隊と共にイルミューイは過酷ではあるものの皆で助け合いながらの日々を過ごす。
その中で深層六層の原生生物にしては大人しいヤドネをヴエコたちと共に可愛がるようになるが、そのヤドネは別の原生生物に捕食されてしまう。その際、ヴエコにヤドネの骨か爪牙を加工した形見の首飾りを作ってもらい、以降その首飾りを身につけるようになった。
しかし、イルミューイをはじめとした複数の隊員が突如謎の病を発症。その原因を調査すると、飲用水として使用していた水の正体が水に擬態することで自身を口にした宿主に寄生し、生息範囲を広げる原生生物『水もどき』であることが判明する。
それに寄生されたイルミューイは激しい下痢・発熱の症状が現れるようになり、ヴエコの必死の看病の甲斐なく熱が下がらないまま著しく衰弱していく。
そんな中、別行動していた食糧調達隊が変わり果てた姿で帰還する。生き絶えた彼らの荷物から見つかった『遺物』を干渉器は願いを叶える卵である《欲望の揺籃》と呼び、雑多で複雑な大人ではなく子供であれば遺物の効果が正しく発揮される可能性が高いと告げる。
変わり果てた仲間たちを見ていたヴエコは一旦躊躇するが、その直後にイルミューイの病態が悪化。彼女の左手が激痛を伴いながら溶けた鋼のように変形してしまう。苦しむイルミューイの姿を見て決意したヴエコはワズキャンに《欲望の揺籃》を彼女に使えないか直訴し、そして使用許可が無事に降りたことでイルミューイに《欲望の揺籃》を使用した。しばらくして、彼女は元気に回復し、起き上がって動けるようにもなった。
……ように見えた。
脈も元に戻り、元気に回復したように“見える”イルミューイ。しかし、彼女の変形した左手はそのままであり、彼女に使用した《欲望の揺籃》は胸に半ば埋もれるようにして同化しかけている上に回復したイルミューイは自分が何を願ったのかは覚えておらず、痛みだけでなく空腹すら感じなくなった彼女に生じている何かしらの変化にヴエコやベラフは悪い予感を覚える。
かと言ってなす術もなく、そのままイルミューイの様子を見守っていたが、彼女の肉体は徐々に変形を始めてしまう。大きな動物の耳、体を覆う毛皮のヒダのようなものが現れ始め、イルミューイの体は半ば『成れ果て』のようになっていった。
そして数日が経過した後、突然イルミューイの叫び声が響き渡る。
「みて… ヴエコ…」
「ほら… ほら…」
「あかちゃん…」
その叫び声に慌てて駆けつけたヴエコが見たのは“小動物の様なモノ”を《欲望の揺籃》があった胸に空いた穴から産み落とし“出産”の苦痛の名残りを表情に残しながらも笑みを浮かべるイルミューイの姿だった。
しかし、その「赤子」には消化器官がなかったため、食べることも飲むこともできずにイルミューイの手の中で弱っていき翌日に息を引き取った。動かなくなった「赤子」を抱きしめて激しく泣きじゃくるイルミューイだったが、その後も胸の穴から2人目、そして3人目と「赤子」を次々と産み落とし、そして2人目も、3人目も、その次も、産まれては死んでいった。その度に願いを奪われる悲しみに打ちひしがれて涙を流すイルミューイだったが、そんな彼女を気遣い支えていたヴエコにもついに『水もどき』の症状が出てしまう。
その後、ワズキャンは症状を抑える『料理』を仲間に振る舞ったことでヴエコ含め全員が一命を取り留めた。
彼らに振る舞われたのはイルミューイの子供達であり、どうやらその肉を食べる事で症状の進行を抑える事が出来るようであった。
また生きた子供の方が効果が高いためワズキャンは産後すぐに子をイルミューイから奪い取るという行為を繰り返していた。
ヴエコが回復した時にはイルミューイは既に人の形を失って言葉も話せなくなっており、それでも感情がある程度残っていたのか生まれたばかりの我が子を愛おしそうに抱きしめたり、ワズキャンに子を取り上げられた時は悲鳴のような声をあげたりしていた。
そんな彼女の子を救うどころか、自分も結果的に子を食べることに加担してしまい苦悩するヴエコに対しても優しく抱きしめて慰めるようなそぶりをしていた。
生きる為に子供達を奪われ続ける日々が続く中、いつしか決死隊から信仰を受けるようになっていたがイルミューイはいつしか悲鳴すらあげなくなっていた。
そして大きく形を変えた彼女は層の中心部へと向かって行った。
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