ヒトの子… うつくしい…
美しさとは眼だ
概要
CV:斎賀みつき
深界六層『還らずの都』に存在する成れ果て村にいる三賢の一人。のっぺりとした仮面をつけたような顔と、竜のような細長い体を持つ成れ果て。目の位置にある空洞は口と同じ機能を持つ感覚器。
日差しの差し込む洞窟のような場所で、ピギムゥをはじめとする小さな成れ果てたちと暮らしている。
かつて黎明卿が村を訪ねた際、不死のミーティを欲しがったが譲ってもらえなかったため、724本の手足全て・体長の5割・感覚器の一部を対価として還元し、村からミーティの完全な複製を生成、吸い取り食べるなどして楽しんでいる(通称喫ミーティ)。
それを見るに見かねたナナチが自身の身体と交換を申し出たため、実質的に2人とも手に入れる。ナナチを取り戻しに来たリコに対し、リコの両目・両足・臓腑の半分のどれかを交換条件として提示するが…。
経歴
かつてアビスを目指した決死隊「ガンジャ」、そのリーダーの一人 。強い意志を感じさせる眼差しが特徴の、透き通った美しい瞳の持ち主。顔の左側広範囲に火傷跡のようなものがあるが、これは作者のつくし卿曰く「14歳ぐらいの時に拷問にあい、樹液からできた毒をぬられてああなりました」とのこと。幼少期のベラフらしき人物が単行本8巻おまけページに描かれている。
誠実で高潔な人物であり、メンバーの一人であるヴエコが自虐的になっている際「その眼差しこそが美しさの本質なのだ」といい彼女に敬意を評している。
さまざまな国を旅してきたようで、未知の言語や文字を翻訳するのが得意。そのため、先住民達との交渉役などを担っている。イルミューイにガンジャ隊が扱う言葉を教えたのはベラフであり、イルミューイとヴエコの関係を常に傍らで見守っていたため、イルミューイからはもう1人の親のように思われていた。
実ははっきりとした性別は明かされていない。ナナチと同じく、その判断はつくし卿から読者に任されている。
深界六層にて、水に擬態した原生生物に寄生され衰弱。
その際にワズキャンが調理して振る舞ったイルミューイの大切な子どもを、その耐え難い欲に抗えず食べてしまった。
そのことから強い自己嫌悪と絶望から精神を病んでしまい、かつての誇りさえ失ったように虚な瞳のまま自傷行為をするようになってしまう。
ベラフは以前、イルミューイがヴエコに自分が子どもを産めない体であることを理由に家族に捨てられたことを打ち明ける場面に偶然居合わせており、イルミューイの『願い』を知っていた。そのことがより罪悪感と絶望に拍車をかけたと思われる。
これらのショックによる精神的なものと、食事を拒否し続けた肉体的なものからか、以前の面影もないほど酷く痩せ衰え、最終的には背負ってもらわなければ歩けないほどにまで弱ってしまった。
そして巨大な塔のように肉体が変化したイルミューイがアビス中央への移動を始めた際、置いていくように懇願するも、「いいや 僕らじゃダメなのさ」「苦しみに慣れなかった気高い君じゃあなきゃね」とワズキャンに背負われて運ばれる。おそらく、ワズキャンは後述のベラフの行動を予想しており、ベラフの行動によって他の隊員たちの行動を誘導させようとしていた可能性が考えられる。
そして、イルミューイがアビスの中央にたどり着いた際、項垂れていたはずのベラフは、懺悔の言葉をこぼしながらイルミューイの元へふらふらと歩み寄っていく。
「た 頼む… 私を… 罰してくれ…」
「骨も… 心も 何もかも!」
「喰い散らしてくれ…!!!」
そう慟哭し、呼応したように開いた村(イルミューイ)へと入って行ったベラフは美しい長龍の様な姿へ変化した。それを見た他の隊員達はその姿に感動すると同時に、その美しさから「身を捧げれば許してもらえる」という感情を抱いてベラフの後を追うように続き、そして成れ果てとなっていった。
地獄に慣れ、感覚が麻痺した隊員たちがイルミューイに祈りを捧げるようになる中、高潔だったベラフは最後まで地獄に慣れることなくヴエコと同じようにイルミューイをただの女の子として見続け、それゆえに絶望して壊れてしまった。そんなベラフの人間としての意志は一度ここで終わりを迎え、そして長い年月が過ぎた後にとある形で受け継がれることになる。
以降、重大なネタバレ
実は成れ果てとなった際に、それまでの記憶を村に渡していた。
ファプタの襲来によって村が崩壊し出し、その時に記憶と本来の誠実な人柄を取り戻した。
再び訪れたミーティとの別れに苦悶するナナチに「ここに残るなら君たちを守るように尽くそう」と選択肢を与え、現実から逃げてしまった己を責めるナナチに「嗅がせた記憶が君を微睡ませた」と暗にナナチ1人の責任ではないことを告げるなど、その口調や雰囲気は、片言で人外じみていたものから人間の頃の高潔さや優しさがあるものに戻っている。同時に、ベラフの成れ果ての体は『村の手足(器官)』として作り替えられているため、村の外に出ても他の成れ果てよりわずかに耐えられることが明かされた。
ナナチに自身の記憶を渡して二人を無償で解放すると、ミーティを今度こそ自分の意思で看取ったナナチと共に、自身も村の崩壊により体が朽ちゆくなか、ファプタの元へと向かう。この時点でベラフは感覚のほとんどを失っており、ナナチが持っている匂いの着いた道標を頼りに行動をしていた。
そしてリコたちを襲おうとしていたファプタの前に現れ、たった一度きりの、最後の謁見を果たす。
「はじめまして ファプタ 君に贈り物がある」
「どうか」
「どうか受け取ってほしい」
「まるで親子だな」
「まるでじゃない!」
「なあベラフ」
「イルミューイはな おまえのことも」
容姿
成れ果て | 人間の頃 |
---|---|
ちなみに、人間時代に左の腰に装備していたルーツホルスターは『ほしくず堂』で実際に販売されているものであり、作者のつくし卿も愛用している。
余談
価値は『眼』に宿ると語っており、自身も美しい眼を持っていたベラフだが、成れ果ての姿となった時に目に当たる部分が口のような器官となって眼球を喪失しており、リコがベラフの家を訪ねた際には涙のように2つの口から涎を垂らす場面がある。
イルミューイの大切な子どもたちを食してしまい、故に信念を失って絶望していたベラフにとって、この姿は罰として望んだ「欲」の姿だったのかもしれない。ナナチと読者に衝撃を与えた喫ミーティに関しても、イルミューイの大切な子どもたちを食べてしまっていたからこそ、食べても命を犠牲にすることがない不死のミーティを欲しがったという心理が働いたと考えられる(成れ果て後のベラフの精神状態によって歪んだ“欲”になってしまったが)。
同時に、複数の言語を知り翻訳を得意としていたが、成れ果てとなってからは喋り口調が片言になっている。これはアニメで声がついたことで分かりやすくなっている。
ナナチに記憶を継承した後は段々と元の聡明な喋り方に近くなっている。
とある理由から成れ果て前と後で(見た目はパッコヤンの次、またはワズキャンの“中身”の次程度に名残が残っているが)人格が別人同様になってしまっていたが、ベラフと共に暮らしていた小さな成れ果て達は自ら好んでベラフの側を選んでおり、成れ果てとなった後にもピギムゥ達に好かれる何かが残っていたのかもしれない。
原作にて、ファプタ襲撃直後にナナチが目覚めたシーンで誰かが歌を歌っている描写があったが、アニメ2期9話でベラフが歌う子守唄であったことが判明。「挿入歌『ベラフの子守唄』 歌:べラフ(cv:斎賀みつき) 作詞:つくしあきひと 作編曲:Kevin Penkin」というとんでもなく豪華なクレジットがEDで流れて行ったため非常に話題を呼び、Twitterで『ベラフの子守唄』がトレンド入りした。
この子守唄は成れ果て村の言葉で歌われており、ベラフが人間の頃から知っていた曲(を成れ果て語に訳したもの)だったのか、成れ果ててから知ったものだったのか、または成れ果て村の言葉と酷似している言語を使用していた先住民出身のイルミューイから教わった曲だったのかは不明。
なお、斎賀みつき氏は成れ果て語と言う架空の言語にもかかわらず、30分でレコーディングを終わらせたらしい。
またアニメ2期最終話のエンドカードでは、画面左側でワズキャンやヴエコ共々人間の頃の姿でぎこちない笑顔とダブルピースを披露しているのに対し、成れ果ての姿が本編のお返しとばかりにミーティに食われている衝撃的な絵面が披露され、『喫べラフ』とネタにされた。