概要
獣相とは、漫画「メイドインアビス」に登場する、ある特異な生まれを持つ者を指す言葉である。
高位の探窟家白笛の一人である神秘卿スラージョの言葉を借りれば、獣相とはすなわち「生まれながらの成れ果て」だという。
詳細
メイドインアビスの舞台である深淵の大穴「アビス」には、穴に入ってから上に向かって移動する者に悪影響を及ぼす上昇負荷という怪現象が存在する。
影響は穴に降りた深さによって次第に深刻化していくのだが、特に深界6層と呼ばれる深度に達すると「肉体が異形に変わり、人間性を失う」という恐ろしい症状を引き起こし、人間は成れ果てと呼ばれる存在に文字通り成れ果ててしまう。
こうして人間が上昇負荷によって後天的に変化させられる「成れ果て」に対して、獣相はアビスで生まれた者の中で極まれに生じる、言わば先天的にアビスの呪い、あるいは祝福を受けた者。
その特性は人間性を失って動くこともままならなくなる通常の成れ果てとは大きく異なっている。
劇中に登場する面々を見る限り、いわゆる獣人のような姿であったり、特殊な身体能力を持っていたりする模様。
スラージョが率いる探窟隊「呪詛船団(ヘイルヘックス)」のメンバーは、スラージョ以外の全員が獣相だと言われている。
扱い
黎明卿ボンドルド曰く「生まれた時から供物にされる」「存在していないはずの者」であり、アビス探窟の拠点となる街オースでは厳しく秘匿され、その情報は白笛などの限られた者にしか明かされていない。
アビスの情報収集に余念がない主人公リコですら、見たことも聞いたこともなかった。
実態はどうあれ「深界6層に達した者が負う名誉の傷」として介錯の対象と扱われる成れ果てとは異なり、獣相は見つけ次第とにかく処分するような厳格な決まりがあるらしい。
断片的ながらその秘匿の理由に触れたスラージョは、壮絶な表情を浮かべながら「探窟史の恥部」とだけ言い放って話を打ち切った。
作中に登場する獣相
ヤタラマル
呪詛船団の戦闘番にして輸送・設営・調理番代理も任される器用な人物。
精悍な顔立ちの礼儀正しい男性で、人間とほぼ変わらない体形をしているが、その皮膚は毛皮や甲殻が入り混じったような複雑な質感をしている。
ニシャゴラ
呪詛船団の切り込み番を担当する用心棒の女性。恰幅のよい猫か熊の獣人といった外見だが、耳の代わりに太く艶やかな角が生えている。オッドアイ。
普段はスラージョと似た大きく前をはだけた服を着ているが、もともと肌を晒すのに抵抗は無いのか、入浴の場面ではその豊満な体にレグを挟んで思いっきり赤面させた。
凄まじい怪力の持ち主で、レグとの戦いでは「オーゼンのようだ」と言わしめさせるほどの勢いだったが、本人曰く「本気のオーゼンはこんなものじゃない」とのこと。
シェルミとメナエ
呪詛船団の狙撃番を担当する小柄な双子。普段はダボダボの服と顔の遮蔽板で全身を覆っているが、中身は犬耳っぽいものと副乳がある小さな子供。
胸の膨らみがある方がシェルミで、無い方がメナエ。手足に「ワークス」という道具を装着しているらしいが…。
フラパム
呪詛船団の倉庫番という役目を与えられている、不規則な位置に三つの目があるモフモフしたウナギっぽい生き物。呪詛船団メンバーの中では一番ヒト型からはずれた姿で、スラージョの肩に襟巻のように巻き付いている。
ネヨーゼル
呪詛船団の本来の料理番を担当している人物。64話のイドフロント突入時には居たのだが、6層に着く頃にはすでに居なくなっていた。
呪詛船団がボンドルド率いる祈手(アンブラハンズ)を強行突破して6層に降りようとした際、ネヨーゼルは殿を買って出たのだがあっさりと捕縛され、しかも彼を助けようとスラージョが白笛を使用したところエレベーターである「祭壇」が起動してしまい1人置いて行かれてしまった模様。
「ここは任せて先に行け」的な流れでありながら生きてはいたが、哀れ祈手らによって中を弄くり回される事となった。
その後、巫女及び神秘卿捜索の命を受けた祈手の死装束リメイヨ付きという条件はあるものの五体満足で解放され、スラージョを追って六層に向かう事となった。リメイヨからは「チンカス」と散々な渾名で呼ばれつつ、双方の役割についてツッコミを入れるなど妙な間柄。
メイニャ
5層の前線基地兼研究所「イドフロント」で飼われていた小動物。
獣相という言葉が出てくるずっと前から登場していたが、スラージョの見立てによると「人工的な獣相を作ろうとした副産物」らしい。