刺股
さすまた
武器または捕具の一種。
二股の穂先を持つ棒で、江戸時代に防犯・警備の観点から開発された。
現在でも、公共施設に侵入した不審者の確保に適しているとして再注目されている。
刺股とは、武具あるいは捕具の一種である。
概説
「指叉」、「刺叉」とも書かれるが、ひらがなで記述することもある。
2mを超える長い柄と二股に分かれた大きなU字の穂先を持ち、この股の間に人の胴体をはめ込み、相手を地面や壁に向かって押さえ付けて身動きを封じる。
穂先の側面は棘付きの鉄板で補強され、日本刀を持った相手と打ち合っても簡単に穂先を切られないよう工夫されている。
非殺傷を目的としてはいるものの、金属製の穂先を持つため、扱い方次第で相手に致命傷を負わせてしまうこともあり得る。
俗に突棒・袖搦と合わせて「三道具(みつどうぐ)」と呼ばれた。
江戸時代に発明されたもので、武器を持てない町人たちによる治安維持組織である「辻番」などが用いたほか、火消しが延焼防止のため家屋の破壊に使用した。
現代への復活
明治時代以降、消防機関・警察機構の発達により刺股は徐々に姿を消し、防犯よりも野生動物の捕獲などに使用され、すっかり表舞台に姿を見せなくなった。
一応、警察の使用する捕具としては生き残り、全体を強化プラスチックやアルミニウム製に替え、穂先をより大きい半円形に変える等の進化を遂げた。
しかし21世紀になった現代、「非殺傷」「中距離からの牽制」「捕縛を目的とした構造」の3点から、刺股に再び注目が集まり、自治体や公共施設における緊急対処に刃物を持った犯罪者への対策に導入されている。
現在では警察が主体となって、各自治体や特に学校機関に対して刺股の取り扱い講習を実施しており、凶悪犯の侵入に対して警察の出動要請と共に、複数人による刺股を始めとした防犯装備での対処を全国で指導しがなされている。