概要
円谷プロダクションが制作、東宝が配給する予定だった怪獣映画。
企画時期は、1970年頃。72年公開の『怪獣大奮戦ダイゴロウ対ゴリアス』の前後と思われる。
現存する脚本は、金城哲夫と満田かずほの両氏が執筆。監督は東條昭平、特技監督は佐川和夫の予定で、舞台も沖縄を想定していた。
あらすじ
月面のクレーターに降り立ったアメリカの月面探検隊は、クレーターから巨大な宇宙怪獣「レッドムーン」が出現するのを確認し、脱出した。
地球は琉球のハブ島に棲む東江実少年は、東京の鈴木一平少年と、互いにヘビが好きな事から文通仲間であった。東江少年はハブ島のハブが、木の根の汁を吸い寿命を延ばしている事を突き止める。
東江少年からそれを知った一平少年は、東京から記者の叔父とカメラマンの助手を連れて島を訪ねる。そしてその汁が、怪獣「エラブス」の尻尾から出るものだと知った。
エラブスは非常におとなしく、地底に逃げ込んでしまった。
東京には、月から飛来したレッドムーンが大暴れしていた。光化学スモッグが苦手と知り、それを用い追い払う計画を立てる都知事。
ハブ島では、詐欺師のオナシスがダイナマイトでエラブスを仕留めようとしていた。その汁を妙役として売り出そうとしていたのだ。
エラブスは次第に凶暴化し、米軍も巻き込んで迎撃作戦が立てられるが、ことごとく失敗する。
東京のレッドムーン対策も滞り、政府はレッドムーンとエラブスとを対決させる事に。レッドムーンを南のハブ島へ誘導し、エラブスと対峙させる。
しかし、レッドムーンとエラブスは、互いに一目ぼれしてしまった。そしてそのまま、戦うことなくジャングルの奥へ、二匹で連れだって姿を消した。
人間が攻撃しない限り、怪獣たちも暴れない事を知り、米軍と自衛隊は撤収した。
夏が来た。東江少年はジャングルの奥で、レッドムーンとエラブスの子供怪獣・ハーフンを発見した。親子で平和に生活している怪獣たちだったが、オナシスが怪獣が戻って来た事を知り、ハーフンを殺害してしまった。
レッドムーンとエラブスは怒り狂い、初めて明確に人間に敵意を示し攻撃。村を襲い、人間を襲い、出動した米軍をも一蹴する。
だが、そこにゴジラが出現した。レッドムーンとエラブスの前に苦戦するゴジラだったが、逆転し、エラブスに止めを刺す。そしてレッドムーンの翼も半分焼いた。
「月に返してやれ」という少年たちの声を聞き、ゴジラは攻撃をやめ、レッドムーンは月へと逃げ帰るのだった。
解説
資料によっては、「(本作は)『ダイゴロウ対ゴリアス』に続く第2弾」という記述も見受けられるが、満田氏は「1970年に、アメリカ統治下の沖縄を訪れて金城と執筆した」と証言している。
また、そのラストも、『倒されるのはレッドムーンの方で、エラブスの方が見逃され、ジャングル奥へと姿を消す』という資料や記述も見受けられる。
本作は沖縄出身の金城氏の作風が、色濃く出たものになっている。
登場怪獣
- レッドムーン
月面クレーターから出現した宇宙怪獣。
獰猛な顔をしており、背中の翼で宇宙空間と大気圏内を自在に飛行できる。
片方の目を閉じていたため、隻眼と思われていたが、開いたその目から強力な怪光線を発射する。
弱点は光化学スモッグ。地球に飛来後に東京を襲撃したが、光化学スモッグで弱体化している(都知事はこれを利用して、大量に光化学スモッグを発生させ、レッドムーンを葬ろうとした)。
後にエラブスと対決させようと、人間に南へ誘導され、ハブ島へとたどり着く。そこでエラブスと対峙するが、互いに一目ぼれして愛情表現を。
以後、暫くの間は人間社会への攻撃もする事無く、エラブスとの間に子供・ハーフンをもうける。
しかしハーフンを殺され激怒。エラブスとともに暴れまわるが、ゴジラによって致命傷を負い、そのまま宇宙へと逃げ帰った。
- エラブス
琉球列島の孤島・ハブ島に古代より棲息していたらしい怪獣。その尻尾から出る液体は、ハブの寿命を延ばす効果があり、秘薬として人間の詐欺師に狙われていた。
非常におとなしい性格で、人間に追われても地下に逃げ込むだけでなにもしなかった。しかし上記の詐欺師に、ダイナマイトで危害を咥えられて怒り、凶暴化。米軍の攻撃も無力化する。
米軍の毒ガスなどの化学兵器を用いられても堪えず、逆にその毒ガスを自身の武器として反撃した。
このため、レッドムーンと戦わされそうになるが、誘導されてきたレッドムーンを見て一目ぼれし、沈静化する。
レッドムーンとの間にハーフンをもうけ、大人しく過ごしていたが、上記の詐欺師にハーフンを殺害されて激怒。レッドムーンとともに明確に人間への敵意を見せ、毒ガスを用いての攻撃をしてきた。
出現したゴジラと戦い、止めを刺される。
- ハーフン
レッドムーンとエラブスの間にできた子供怪獣。詳細は不明だが子供らしく小さな体躯で、主人公の少年たちに発見される。
しかし、上記詐欺師に殺害されてしまった。
関連タグ
:「円谷が製作」「親子怪獣が登場」「身勝手な人間に翻弄される怪獣」など、共通点が多い。