作品解説
15世紀中期、東欧の小国ワラキアの君主であったヴラド三世が主人公の漫画である。
ヴラド三世と言えば、ブラム・ストーカー作『吸血鬼ドラキュラ』のドラキュラ伯爵のモデルとして有名だが、この漫画は史実の彼を描写している貴重な歴史漫画である。
物語は、ハンガリーの支援を受けてヴラドが復位したところから始まっている。
南にオスマン帝国、西にハンガリー、強国に挟まれながら生き抜く小国たちの熱い歴史が描かれている。
KADOKAWAが発行している漫画誌『ハルタ』で現在連載中。
単行本は現在6巻まで発売されている。
登場人物
ヴラド三世
主人公。ワラキアの君主。
君主が傀儡と化していたワラキアの貴族政治に革命を起こすべく、数少ない腹心たちと共に中央集権化を進めていく。
表情筋があまり動かず、常に敬語で喋る物静かな男に描かれているが、ここぞというときには微笑を見せてくれる。
シュテファン
ヴラドの従兄弟であり、隣国モルダヴィアの君主。
1巻初回から登場。父が暗殺されて以来ヴラドと共に亡命生活を続け、そのままワラキアでも世話になっていた。ヴラドとの信頼関係は厚く、行動が制限されていたヴラドに代わって情報を集めることも。
しかし君主としての頭角を現し始めたヴラドは手始めにシュテファンを支援し、見事彼をモルダヴィアの君主へ返り咲かせた。
マーチャーシュ
フニャディ家の当主であり、ハンガリーの君主。
2巻からの登場。トランシルヴァニアを治める有力大貴族であったが、この『ヴラド・ドラクラ』ではヴラドの介入により内紛が起こり、彼がハンガリー国王に選出された。
彼の父ヤーノシュ・フニャディにヴラドは師事していたことがある。
メフメト二世
オスマン帝国の皇帝。ファーティフ(征服王)とも呼ばれる。
3巻からの登場。最後の砦であったコンスタンティノープルを陥落させ、ローマ帝国を滅亡させた。そのままバルカン半島の制圧をも目指し、ヴラドのワラキアへ大軍を率いて攻めてくる。
この『ヴラド・ドラクラ』では、オスマン帝国に人質として出されていた若きヴラドが、皇子であったころのメフメトと出会っている。
ラドゥ三世
ヴラドの弟。
5巻からの登場。幼いヴラドと共にオスマン帝国で人質になっていたが、そのまま帝国に留まり、兄と袂を分かつ。
ヴラドとの戦争から手を引いたメフメトに呼ばれ、ワラキアを手中にすべく、ついに舞い戻ってきた。
ストイカ
ヴラドが初めて得た腹心の臣下。1巻第2話から登場。
長男に疎まれて出家させられていた次男であったが、ヴラドが介入し、還俗してストイカ家の当主に就いた。
その後はヴラドの手足となり、表向きはアルブ側の貴族としてスパイを務め、政敵の情報を集めていく。
リナルト
ヴラドの父の代から仕える忠臣。1巻第3話から登場。
主君を失い隠遁生活を送っていたが、ヴラドに再び呼び出されて内膳長として復帰。
ヴラドに的確な進言をしつつ支えてきたのだが……。
チェルニク
公親衛隊の長。1巻5話から登場。
アルブ派に弾圧されて盗賊騎士として落ちぶれていたが、反アルブのヴラドの元に馳せ参じて名誉を回復する。
それからはヴラドの身辺警護を務め、戦では親衛隊の指揮をとり武力面をサポートする。
イロナ
ハンガリーから嫁いできたヴラドの妻。3巻から登場。
ワラキアとハンガリーの同盟条件として、ヴラドと政略婚した。シラージ家の娘で、マーチャーシュの親戚でもある。
よって関係に溝があるヴラドとマーチャーシュの仲介人としての活躍が多い。
アルブ
ワラキアの有力大貴族。1巻初回から登場。
狩りの好きな老人で滅多に公室評議会には現れないが、ワラキア貴族の重鎮で実質の支配者である。
彼の影響力はたびたびヴラドの障害となって立ちはだかる。
コドレア
アルブ派の太政官。1巻第2話から登場。
公室評議会の重鎮であり、ヴラドをお飾りの公として扱い、政事を進めていた。
慣習を重く見ている保守派。
ウドリシテ
アルブ派の若手貴族。1巻初回から登場。
オスマンが貢納金を課してきたときには威勢の良さを見せた強硬派。
とある人物とコネクションのある男で、アルブはそこを買っている。
ダネスティ
ワラキア公継承権を持つダネスティ家の当主。2巻からの登場。
ハンガリーの支援を得て、ヴラドのワラキア公の地位を揺るがそうと常に狙っている。
彼の父ヴラディスラブは初めて即位したばかりのヴラドを失脚させた。