概要
1938年、ポルシェ設計事務所は、陸軍兵器局の要請に応じてフォルクスワーゲン・タイプ1を軍用車に応用する研究を開始した。
- オープントップであること
- 総重量950kg、うち車輌自重550kg、積載量(乗員3名と貨物)400kg
- 生産性が高いこと
- 大量生産が可能であること
- 軍用車輌だが、民間用にも簡単に転用できること
1939年の終わり頃にこれらの条件を満たした試作車を完成した。角形車体の発展型試作品はTyp62(62型)と名付けられた。
Typ62の評価試験の結果を受けて改良型のTyp82(82型)が採用された。
量産は1940年からKdF市(「歓喜力行団車市」の意。現・ヴォルフスブルク市)のフォルクスワーゲン製造会社で開始され、10万台の製造が指示された。また、他の用途に発展させるための基礎として、Typ87(87型)の試作も開始された。
軽量であるため、排気量985cc、出力23.5馬力の小型エンジンで二輪駆動にもかかわらず不整地走破性も良好だった。
「キューベル」とはドイツ語でバケツを意味し、直訳すると「バケツ自動車」になる。これはもともと座席にバケットシートを採用していたことから「バケットシート自動車」と呼んでいたものが省略され、スチール製でプレス加工の武骨な外観がバケツに例えられたこともあって定着したとされている。
元々はバケットシートを採用した軍用車両は軒並みキューベルワーゲンと呼称されていたが、生産数が多かったことからドイツ語圏外ではもっぱらTyp82の通称として知られている。
派生形式
- Typ82E
キューベルワーゲンのシャーシにタイプ1に似たセダン・ボディを載せたもの。言うなればオフロード対応のビートルである。
戦後もTyp51という名称でしばらく生産が続けられていた。
- Typ87
四輪駆動型。1941年にシュトゥットガルト市で6両のみが生産されたとされている。
フォルクスワーゲンのクランクシャフトを使用したポルシェ製1,086ccエンジンを搭載しており、これをもとにしたエンジンが戦後にポルシェ356にも搭載されている。
四輪駆動プロジェクトは水陸両用車のTyp128/Typ166シュビムワーゲンに移行したため生産は少数にとどまった。
戦後に英軍の管理下で2台が組み立てられている。
- Typ92 荷台付貨物車(Pritschenwagen)
トラックの車台を載せた貨物車タイプ。
- Typ174 突撃ボート(Sturmboot mit VW-Motor)
- Typ287 指揮車(Kommandowagen)
kdfタイプの車体を載せた指揮車形。
登場作品
- アニメ『うる星やつら』
劇場版オリジナルの第2作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』で登場。面堂終太郎の愛車で塗装は白。
- アニメ『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』
第1121小隊に2台が配備され、主人公たちの足として使用されている。塗装はダークイエロー。
- ゲーム『グランツーリスモ5』
自動車ディーラーで購入可能。シュビムワーゲンも登場している。