概要
社会学(Sociology)は社会の状態、社会現象、その中での人々の行動、及びそれらの変遷を対象とし、統計・データなどを用いて実証的に分析する学問。
同じく社会を対象とする経済学や政治学などとは研究対象が被ることが多い。経済学は経済的主体(個人や企業など)が常に経済合理性に則って行動すると仮定するのに対し、社会学は規範や価値、文化といったものに注目し、時には「非合理的」に行動する人々に光を当てる。また政治学は国家や政府のシステムを扱い権力の行使に焦点を当てるのに対し、社会学はどちらかといえば企業や任意団体、日常生活の文化などを扱うことが多い。
名前の似た社会科学(social science)とはイコールではない。平たく言えば社会科学に経済学や政治学や経営学や法学が含まれるということになる。経済学、政治学のほか、統計学、心理学と関係が深い。また現代経営学におけるマネジメント理論やマーケティングには社会学の成果が大いに取り入れられている。
発祥
社会学(仏:sociologie)という概念はフランスの学者・オーギュスト・コント(1798-1857)が提唱した。「社会」(Society)の語源であるラテン語societasは「親交」などを意味する言葉である。
思想としての社会主義(仏:Socialisme/英:Socialism)は社会学とは別物だが、コントはユートピア社会主義者のサン=シモンに師事しており、またコントの学問はカール・マルクスに多大な影響を与えているので、全くの無関係というわけでもない。
歴史
社会学は「社会」が自明でなくなった時に始まった、といえる。19世紀のヨーロッパでは各地でいわゆる「市民革命」がすすみ、身分制度が各地で崩れゆくなか、それまでの人々の行動を決めてきた秩序が自明な物ではなくなっていた。社会学はこの中で改めて「人々が集まった時に何が起こるのか」「そもそも人はなぜ秩序を保てるのか」という問いを元に成立する。
初期の影響を与えた研究者として知られるのはフランスのエミール・デュルケームである。もっともよく知られているのは「自殺論」である。各国やフランス国内の統計データを元に、個人の性質や心情に由来する説明に反論を加えたうえで、自殺理由を類型化した。この時彼が注目したのが「アノミー」(無規範)状態である。彼は個人的な理由を越えてアノミー状態が人々の自殺を招く場合があると論じ、この解消のために、かつてフランス革命の際に解体された、人々が帰属意識を持つ中間集団の再構築が必要とした。この時彼は、「社会」が機能不全の状況にあるという前提に立つ。
一方、「もしよく見られる特徴が人々の行動を貫いていたらどうなるのか」という点から「理念形」を構築し、人々に理念や行動の共有が与える結果を見ようとしたのがドイツのマックス・ヴェーバーである。もっともよく知られている『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』では、初期プロテスタントについての資料や書き残した手紙などからプロテスタンティズムがどのような理念や前提のもとにあったのか、という「理念形」を仮説だて、それをもとに、当時のドイツで「利益」を軽んじるはずのプロテスタントがなぜ商人や工業に進出しているのかという問いに答えようとした。
以上2名は本分野においても特に古典として知られるが、基本的に文化、集団による営みや傾向がなぜ生じるのかを問題とするという点は現代まであまり変わらず、現在に近いところでは社会システムとして捉える理論がいくつか登場している。
主な概念
・社会
社会学において最も基本的といいうる概念だが、定義自体はかなり幅広い。一般的には多くの人々が集団として動く何らかの仕組みを指す。ただしこの点が曲者であり、どの範囲を仕組みと呼びうるか、社会の成員とは何か、社会的な現象と個人的な現象の境はどこかなど議論の点は多い。
・理念形
ある仮定を元に、その仮定が成り立っていたらどのようになるのかを構築してみたもの。現実の現象を把握するための一種のモデルとして用いられる。
・機能主義
社会が何等かの「機能」を果たすいくつかの要素から構築されているという考え。ただしこの場合、「機能」は誰が指摘するのかという問題=機能が恣意的に指摘されるのでは、という問題がある。
・システム理論
社会を何等かの仕組みとして捉える試み。機能主義での試みとして知られるパーソンズ、システムをあくまで観察と情報のやり取りによって見いだされるものととらえるルーマンなどいくつかの試みがある。