砂鬼一家
さきいっか
概要
桓騎軍所属。
常に覆面を被って素顔を見せず凄まじい死臭を見に纏い、斬り取った指や耳で作られた装飾品を身につけた一家。
桓騎軍の拷問係を担当し、「砂鬼に捕まることが中華一の不運」「拷問し遺体を弄ぶ」とされ、桓騎軍の兵士ら中では『ゼノウ一家と並んで桓騎軍の中でも最もやばい一家』と言われている。
拷問係なので戦闘を直接行わない(少なくとも攻撃する描写は見られない)ようで、桓騎軍が攻撃に指示を出す際は桓騎一家が担当している。
ただし最低限の戦闘は行えるように得物や騎馬を所持している。
彼らが倒した敵兵を砂鬼一家が拷問し、情報を桓騎に渡すとともに、利用できれば戦術の一環として遺体を利用することもある。
一家の名前の由来は、一家の一人が桓騎に怖いものを聞かれた際「人を砂の中に引きずり込む鬼」が怖いと答えたことが由来。
那貴によると砂鬼は桓騎一家の中で最古参でかつて砂鬼一家の1人から桓騎について聞いた時には、桓騎の根っこにあるのは『岩をも溶かす程の全てへの怒り』と答えたが、黒桜や摩論ら他の幹部らも砂鬼については詳しいことは知らず、いつのまにか桓騎一家に居たとのこと。桓騎一家の中でも浮いた存在であり、桓騎一家の仲間内の中でも全く姿を現さず、桓騎も滅多に砂鬼には近づかないとのこと。
活躍
黒羊の戦いで初めて存在が明かされ※、上記の風聞により飛信隊や一時的に桓騎軍に従軍した尾平を脅す一幕も見られた。
※ただし遺体を分断する手法自体は桓騎以外の桓騎軍は行わないことから、山陽攻略編の介子坊軍に送り付けた遺体は砂鬼一家が処理を行なった可能性が高い。
黒羊編では、砂鬼一家が趙兵を拷問し紀彗の弱点を聞き出し、無数の黒羊丘周辺の集落を4日目の晩に桓騎兵が襲撃した。
5日目の昼までに砂鬼一家が骸の巨像を完成させ、趙副将・紀彗の下に彼が城主を務める離眼(りがん)城の住民も同様にする旨の脅迫とともに骸の巨像を送り付けた。
間もなく桓騎軍の一部は離眼城に向けて走ったが、脅迫を受け紀彗も奪取した丘から離眼城へ離れたことで趙軍が弱体化。
飛信隊と桓騎軍の残党で丘を奪取し、黒羊丘の戦いの勝利に貢献した。
真相
砂鬼一家について詳細が明かされたのは肥下の戦い。
桓騎軍・壁軍・飛信隊・楽華隊が宜安侵攻の際に分裂し難を逃れた後、飛信隊と楽華隊は、宜安城を落とすために別働隊として行動していた桓騎軍の氾善(はんぜん)と砂鬼一家と合流。
しかし信は砂鬼一家の評判から、砂鬼一家の入城を拒否したが、那貴は入城を条件に砂鬼と同じく謎に包まれた桓騎についての自身が知らないことや桓騎が何を望んでいるのか問い詰めた。
入城には飛信隊らの力が必要だと判断した、砂鬼一家の現頭目・衣央(いお)は覆面を取って語る。
「砂鬼が桓騎一家最古参では無く、桓騎が砂鬼一家の最古参なのだ」と言う事実を。
野盗ひしめく山中の一家であった彼女(衣央)らは、縄張りで瀕死の状態となった、当時13かそこらの歳の桓騎を衣央の姉・偲央(しお)が助けた。
それから桓騎が現在の印象の砂鬼一家を作り、「ある出来事」があったために一家を出て行き、別の一家(現在の桓騎一家)を作ったというが……
「詳細は入城後に語る」と打ち切ったため、宜安城に侵攻。
飛信隊の田有・竜川・中鉄の命懸けの特攻により宜安城の奪取に成功したものの三人が瀕死に陥ったため、砂鬼一家が治療を行い一命を取り留めた。
この時、遺体を切り続けた故に身体の理解が深く、治療にも長けていることが判明した。
そしてこの遺体を弄ぶ行為について、衣央は大きな意味があると語る。
桓騎が助けられた一家の実態は、親に売られ、売られた先でも傷つけられたり逃げ出したりした者を偲央が「奪われた者」同士で仲間になろうという意図で集まった子どもだけの集団だった。
彼女らも野盗として生活しているものの、殺しは一切せず、必要以上に盗みもしないように徹していた。
桓騎にこの説明をし、山道を歩いていた親子を恐喝し金品を何人かで盗んだものの、他の仲間が金品を穀物や干し肉に替えた時に、大人の野盗かつ大きな野盗集団だった狼甫(ろうほ)一家に仲間や集落を襲撃され、自分たちが盗った物を奪われてしまった。
桓騎は仲間の帯剣を見て攻撃しようとするも、偲央は「殺された数より生きている数の方が多い。力の無い私たちはこうやって生きていくしかない」と桓騎に言ったが、さらに偲央を凌辱しようとした狼甫一家に対して桓騎はついに攻撃。
瞬く間に五人の狼甫一家を桓騎が殺した。
しかし大人に対する抵抗の先を知る偲央は
「あいつらは屈強で…ものすごい数なんだ…。私達は決して抗えない…。子供達を守れないっ!」
対して桓騎は
「お前らおかしいんだよ。当たり前になっちまってんだよ。’’奪われる’’ことが」
「おかしいだろうが!そんなこと!」
「だって…私達は…無力で…」
「大丈夫だ。俺に任せとけ。全部上手くいく」
その後、狼甫一家の子どもの下僕に紛れて彼らの住処に侵入し、桓騎が宴会に乗じて酒に何かを仕込んで泥酔させた上で、頭目・狼甫を暗殺した。
それでも狼甫一家は潰れなかったため追手が幾度となく現れ、自分たちの住処も捨てたが、それでもまだ足りなかった。
ある時、追手の狼甫一家が罠にかかったが、その光景は子供たちに衝撃を与えるものだった。
それも当然、遺体を切り刻み、腸を引きずり出して木々に括り付け、手足を枝に刺したような「門」を作っていた。
子どもたちも吐き気を催すし、偲央も「おぞましいことを」とドン引きするが
「お前らちょっとこの中入って来てみろよ」
「いっ行くわけないだろ!」
「きっ気持ち悪いっ!」
「お前頭おかしくなったのか!?」
「だよなー。これだけ頭おかしなとこまでやれば近づけねーよなー」
「力のねェ奴は頭使わねェとな」
「普通のことやって生き延びられないなら」
「誰もやらないことをやらねーとな」
「これが…私達が生きる術だと……?」
「ああ。この先この仲間(お前達)が誰一人傷つけられないための手段だ」
その後、野盗として召の顔を焼いた城主を襲った際、桓騎の目的は財宝ではなかった。
「無抵抗のガキだった召の顔を焼かれ、お前達姉妹は体中斬られながら犯され続け、他も皮をはがされ、腕を切断されてその腕を犬が喰うのを見せられたり、そういうことをする連中相手に意味なんて必要なのかよ!」
さらに桓騎は、奪われる側から取り返す側に変わる、その意味を語った。
「この世には、高い所に立って好き放題やるバカ共と、そいつらの犠牲になる底辺の者達と、その中間の者達がいる」
「底辺のお前達の’’仇’’は高い所にいるクソヤロォ共と思っているだろうが、本当はそうじゃない」
「底辺が本当に’’怒り’’を向けるべき相手は、無関係を決め込んでいる’’中間の奴らだ’’」
召は中間の人は何もしていないと反発するが
「だが、数で言うとこの世界はその中間の奴らで占められている。そいつらが何もしねェから、世の中の’’構造’’が変わらねェんだよ」
「そいつらこそ全身の生皮はいでも足りねェクソヤロォ共だ」
こうして砂鬼一家は「人の所業と思われない残忍な集団」へと加速した。
構成員
- 衣央(いお)
砂鬼一家の現頭目。女性。
売られた先で体を切り刻まれたらしい。
姉の偲央を失ったことで桓騎と同じ苦しみを経験している。
- 召(しょう)
砂鬼一家の最古参の一人。
親に売られて地元の領主の下僕になったが、その領主によって顔を焼かれたり皮を剥がされたりしたことで、人前で素顔を晒すことはしなかった。
だが、桓騎はその顔を見て憐れみや同情などの念を抱かずに彼と接し、後にその領主に対して報復を行なったことで、桓騎に心を開くようになった。
肥下の戦いで腹部を負傷し、飛信隊とともに撤退する最中に李信に桓騎について語り、力尽きた。
- 竹耳(ちくじ)
砂鬼一家の最古参の一人。
右頬が剥がされた形跡が見られる。
- 琳(りん)
砂鬼一家の最古参の一人。
後に番吾の戦いでは飛信隊に医療班として加勢する。
- 夕亜(ゆうあ)、波宇(はう)
宜安城侵攻に際し、瀕死になった飛信隊の田有・中鉄・竜川を救った。
- 偲央(しお)
衣央の姉にして砂鬼一家の元頭目。作中開始時点では故人。
衣央とともに親に売られた後で体を切り刻まれている。
桓騎を助けた後で、上記のように桓騎に助けられたことで恋仲になったが、凄惨な死を遂げた。
これにより桓騎一家が生まれることとなったが、彼女の光が桓騎の中に微かに残っていたことで桓騎一家をまとめあげることができ、家族にもなり得たと衣央は推測している。