CV:小西克幸
概要
得物は曲剣。常に飄々としていて冷静沈着な性格だが、一度キレると本人曰く「雷土よりもおっかない」という。彼を含め隊員は元野盗であることから、隠密・斥候などに長けている。
黒羊編では、桓騎軍で行なっている隊の入れ替えのため、尾平隊の代わりに飛信隊に加わる。
初日の飛信隊の失態によって桓騎から信の右腕を持ち帰るよう言われた時は、自身が飛信隊に加わった経緯から責任の所在を自身が預かると言ったことでことなきを得て、4日目には趙将軍・慶舎を信に討たせる貢献を果たす。戦後、飛信隊の居心地の良さに惹かれ(公式ガイドブック『戦国七雄人物録』では飛信隊の器の大きさに惹かれと記載)、転属する。
桓騎軍から脱退して飛信隊に転属したため、桓騎軍の兵や将校らからは裏切り者として嫌われ、雷土や黒桜からは嫌われる一方、摩論や厘玉は那貴を嫌っておらず、扈輒軍戦後に桓騎の様子を見に来た那貴を受け入れて会話をしている。
鄴編の朱海平原戦では随所で活躍を見せ、14日目には、窮地の信を羌瘣と共に助け、さらに軍を立て直す為に撤退した趙峩龍の居場所を元野盗の経験から見つけ出し、退路を塞ぎ信に討たせる援助をした。
扈輒戦後は、桓騎軍の陣営に訪れて黒桜ら幹部達と対面し、その際砂鬼一家が桓騎軍最古参であることを伝えた。
肥下編では宜安城に侵攻する際、砂鬼一家の話によって桓騎に感じていた家族愛を思い出したことで、桓騎と末路を共にするため、自分を惚れさせた李信に天下の大将軍になれと賛辞を送りつつ、那貴に付いていった那貴一家のメンバーとともに飛信隊から離れた。
そして、李牧軍に囲まれている桓騎達を発見すると、桓騎のもとへ行くべく決死の突撃を敢行。副官の呂敏が趙国将軍・上和龍の副官の雲玄に斬られると、那貴は雲玄を一撃で討ち取ったが右手に深手を負い、そこに趙兵達に囲まれて致命傷を負ってしまう。
それでも前進を止めず、気が付けば討ち死にした桓騎と同じくらい李牧のすぐそばまで接近したところで事切れ、壮絶な最期を遂げた。
転属の理由
那貴が飛信隊に転属した理由は作中では分かりづらいが、後の厘玉や雷土の発言から推測すると以下のように考えられる。
桓騎一家もとい桓騎軍は野盗集団ではあるが、蒙驁の副将の軍として、そして蒙驁の死後もなお桓騎は秦国将軍の一人として常勝を重ねた結果、彼らの生活は野盗をしなくても豊かになった。
とはいえ戦争では、金品財宝を場内や周辺の集落から略奪したり戦争とは無関係の人々を襲ったりも続いているが、それらの行為はどちらかと言えば桓騎直属の幹部ではなく下っ端が主として行なっていた。
桓騎の幹部たちは、摩論の手料理のような贅沢な食事や桓騎軍の勝利による褒賞を与りやすい立場にあるため、野盗として動かなくても生活は満足してしまうのである。
対して下っ端については数が多すぎるため全員が裕福とは限らず、甘い汁を啜るなら野盗として行動するのが手っ取り早いのかも知れない。
倫玉はこのスタンスの違いを、(桓騎の幹部たちは)桓騎への忠誠心やカリスマ性に惹かれて着いてきているが、下っ端は桓騎の下で甘い汁を啜りたいだけで着いてきており、それが桓騎軍の弱点と評している。
それでも桓騎「軍」は戦いに従事する度に、桓騎一家もそれ以外も関係なく一丸となって戦わなければならず、その規模が大きくなるにつれて、「野盗集団」という個性が失われどこにでもある「軍」のような動きを考えてしまうようになった。
野盗らしさが損なわれた軍略を考えていた幹部に対し桓騎も「考え方が軍に染まってねえか?」と指摘したほど。
この「一家」から「軍」への心境の変化により、桓騎「一家」として築いてきた桓騎の家族愛とも呼べる想いを薄めてしまったと考えられる。
そして那貴から見た黒羊戦時点の飛信隊は、渕の命懸けの渡河(渕に託した論拠は信頼関係にある)、慶舎を討つ際の信の檄と飛信隊の反応、集落での虐殺に対する信と羌瘣の対応(外道を許さないスタンス)、最終的に尾平を赦した信の器の大きさから、信の天下の大将軍に対する夢を理解した飛信「隊」の像が、奇しくも桓騎のカリスマ性や魅力に惹かれた桓騎「一家」と重なったものと考えられる。
また、那貴は「飛信隊の飯が美味い」という理由を桓騎に話したが、同様に倫玉や雷土は「昔の(野盗の頃の)飯の方が美味い」とも語っている。
どちらも現在の桓騎軍での食事には不満があることを示すが、現在は上記のように「軍」として食べることに困らなくなった一方で家族感が薄れたのに対し、規模の小さかった野盗「一家」の頃は野盗をしなければ食べられなかった反面、「家族」感という心理的な幸福があったからこそ昔の食事に満足できたと考えられる。
以上から那貴が離れた理由をまとめると、家族愛を仲間意識と錯覚したためである。
だからこそ影丘の戦い以降の那貴は桓騎に疑問を抱くようになり、飛信隊でありながら桓騎一家や砂鬼一家に接触することとなる。
また、影丘の戦いでは雷土が、肥下の戦いでは那貴や摩論が、桓騎の家族愛を思い出す展開にも繋がっていく。
なお、上記の転属については、作者はベンチャー企業への転職などを意識している様子。