概要
『少年ジャンプ+』にて2022年9月11日より連載中の漫画(毎週日曜更新)。原作:上之心々、作画:ナベツヨ。
元々は上之氏がニコニコ静画やジャンプルーキーに投稿していた作品であり、閲覧数上位に喰い込みながら突き抜けられない期間が続いたが、2021年10月の連載争奪ランキングで遂に1位を獲得。念願のジャンプラでインディーズ連載を勝ち取った。
なお、連載が1年近く続いているがインディーズ連載のままなので、同じくジャンプルーキーから連載を勝ち取った『ラーメン赤猫』や『幼稚園WARS』とは違い、全話無料で読むのが可能。
なお、連載に当たって上之氏の画力不足を補う為にナベツヨ氏が作画を受け持つようになった。これに伴い、上之氏が描いた旧版は一部を除き非公開となっている。
あらすじ
「忌む眼」と呼ばれる不幸を呼ぶ眼を持った少年マヌルは、戦闘能力が低いながらも幼馴染の勇者率いるパーティーで力を尽くしていた。が、勇者を支えている他の仲間から無能と見なされて一方的に追放処分を受けてしまう。
追放されたマヌルは故郷の村に帰る。しかし彼を迫害せず接してくれた育ての親は既に亡くなっており、家も謎の噴水へと建て替えられていた。
故郷からも事実上追放され、育ての親の遺産を手に放浪を始めたマヌル。それでも勇者の役に立つべく伝説の霊薬「賢者の石」を求める旅に出ようと考える。
手始めに赴いた武器屋で店主に差し出された正体不明の伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を遺産の全額を使い切って購入するも……それは外す事の出来ない呪われた針(攻撃力1)だった。
作風
スキルやLv等のRPG風世界を舞台にした追放ものの一種だが、主人公が現状害悪でしかない特性「忌む眼」を持つ厄介者であるため、序盤から延々と迫害され続け、成り上がりとは縁遠い展開が続く。
描写は良くて丁寧、悪し様には冗長であり、登場人物の思考回路が細かく描かれるのが特徴。
また、本作は人間の他にエルフや魔族、オリジナル種族のクオンツ族などの亜人種がいるが、この内で人間の大半は悪辣な人物が占めており、マヌルやクオンツ族への不当な迫害を始めとしたシーン等々、精神衛生的に良くない描写が多い。
登場人物
王国
- マヌル
本作の主人公。
勇者と仲の良い幼馴染の少年であり、勇者の頼みでパーティーに加入していたが、ケンシとティゴの目論見でパーティーから抜ける事態に陥った。
感情が高まるとあらゆる災厄を呼ぶとされる『忌む眼』になる特殊体質で、そのせいでそれを知る人間達から絶えず迫害を受ける。
間が抜けた善人として描かれているようだが、少々行き過ぎたきらいがあり、モンスターを率いて侵略した挙句アレクサンドラ隊を殺害した(その中にはマヌルの命の恩人であるサンドラも含まれる)アドラメルクに対し「正当防衛をしていただけ」「キミが悪いとは思えない」と怒りも憎しみも見せずに笑顔で「パン食べる?」と気遣っている。
アドラメルクとのやり取りから魔族との内通を疑われ、王国を追放された際には「処刑されないだけ温情」、「仕方がないが妥当」などの感想も見られた。
攻撃力1の針で装備が固定化されてしまった都合上、攻撃能力は極めて低い。
しかし、大型野生動物の爪牙を1度見ただけで見切り、更に足場の悪い森林で完璧に躱すと回避能力は十分に高い様子が窺える。
サバイバル能力も勇者パーティの旅についてこれた程度には高く、片道3カ月の山道を荷物も持たず単身踏破できるほど。
落石を起こしたり、敵の攻撃を利用して攻撃力不足を補う、相手の攻撃パターンを素早く割り出す辺り戦闘に関しては一応頭もそれなりに切れる(初期は武器屋の詐欺で育ての親の遺産を全て取られたり、勇者パーティや王国など悪意を持った者に対してあまりに無防備すぎた)。
職業は「薬師(くすりし)」。その固有スキル・「アトムスフィア」により、薬草を口に入れずに回復効果を抽出して傷を治療できる。
薬草は普段から買い込んでいるのか、戦闘中にどこからともなく取り出して自身の負った傷を治している。
メイスを持った敵に背中をブン殴られても、呻き声だけで即座に治療行為に移れるだけの忍耐力・耐久力、前述の回避能力や分析力も合わせ、作中で共闘したカルセドからはサポート役として高く評価されている。
クオンツ族との修行により効率的な闘い方を覚え、帝国の強敵を倒して強くなった。
- 勇者
異世界やRPGでお馴染みの勇者。魔王を倒すため旅をしている。
ボクっ娘の美少女。本名は不明で全員から『勇者』と呼ばれている。本名が明かされない理由は、勇者の名にあやかって同じ名前の子供が増えすぎてしまうのを防ぐためらしい。
マヌルとは仲が良く、彼女自身は「わたしの勇者」と呼ぶ程に彼を慕っている。それ故にマヌルがいなくなった時には思わず取り乱してしまった。
マヌルが居なくなった後は「心が動かない」のを理由に本来の動きを失い、他の仲間の足を引っ張るなど精神的にやや参っている様子が描かれている。なお他のパーティメンバーが「マヌルが自らパーティ脱退を申し出た」と説明したため、彼女は真相を知らない。
仮にマヌルの有効性を仲間達に伝えたとしても、逆にケンシ達に妬まれてマヌルが追放される結果は変わらなかっただろう。
web漫画でその後の勇者一行の様子を読めるが、漫画を拡大表示出来ないので漫画が読みにくい。
- ケンシ
勇者パーティーのメンバーの1人。
鎧を着た偉丈夫で、パーティーの中で最も真剣に魔王の討伐を考えている。それ故に、勇者のコネと頼みでパーティー入りしただけの凡人であるマヌルを疎ましく思い、浅慮のままにマヌルを追放した。マヌルを追放する際、彼と仲の良い勇者から大反対されるのを事前に予期していたので、勇者が寝ている内に手を打ってその日の内に追放させた。
- ティゴ
勇者パーティーのメンバーの一l人。
上半身の露出が激しい格好をした気の強い女性であり、ケンシと同様にマヌルを疎ましく思っている。気が強くて感情的な一面を見せる一方で、金にうるさい性格をしており、無駄な出費を嫌ったり、マヌルの装備を金に換え自分の物にするなどの着服悪行をした。ちなみに、追放時に追放もの(と某RPG)の定番である『装備とアイテムの全てを置いていく様に命じられた』をマヌルに行った。
- カスパー
マヌルと入れ替わる形でパーティー入りを果たした青年。
丁寧な口調で話す優秀な魔導士であり、ケンシ曰く「マヌルの完全上位互換」。穏やかそうな人物ではあるが「忌む眼」の件があり、マヌルが勇者に宛てた手紙を勝手に燃やしたり、ティゴのマヌル装備品を売り払って着服した悪行を黙認するような陰湿な一面があり、(マヌルが疎まれている事情を加味しても)好漢と評し難い人物。
尚、マヌルが運んでいた旅の荷物類(ティゴ曰く「結構な重量」)は現在彼が運んでいる。
- アレクサンドラ隊
『剣聖』アレク、『魔導大元帥』のサンドラ、『戦極侍』のムサシ、『大明師』のちくわの4人で構成される王国最強の部隊。
グランドブリッジに侵攻・滞在する魔族の軍勢を文字通り一掃していったが、その軍勢の指揮官のスキルとは相性が最悪だったために、ちくわを残し全滅した。
勇者の仲間や王国の人々と比べ、珍しく全員がまともな善人だったのが悔やまれる。
- 王国大臣
マヌルと『大明師』ちくわの話を聞いて判断を一旦は保留にし、後日情報収取した結果、弱者であるマヌルが無事である理由を魔王軍の配下と考えて疑い、村がマヌルに擦り付けた育ての親の命を奪った悪行を信じて「咎人の烙印」を押すが、『忌む眼』で彼の死後の厄災を恐れて処刑を断念し、他国に生かしたまま捨てさせた。
一方、魔族1人(魔王軍の幹部・四魔天である情報は知らない)にアレクサンドラ隊がほぼ全滅した都合の悪い事実は認めなかった。
魔王軍の攻撃によりアレクサンドラ隊が『大明師』ちくわを残してほぼ壊滅した為、魔王軍討伐後の国同士の侵略戦争を極度に恐れている。
クオンツ族
猫のような獣の外耳を備えた亜人種の総称。
寿命が近付くと肉体が宝石状の鉱石に変質する特性を持つが、その特性から人間から「不治の病『石化病』の原因」と言われなき悪評を押し付けられた挙げ句に、殺戮の対象にされてしまう。
しかも、今となっては前述の悪評すら風化し「人間ではないから」や、クオンツ族の死骸たる鉱石を「装飾品として得たい」から殺そうとする人間も居る。
- コハク
人間から迫害されているクオンツ族の1人で、クオンツ族が隠れ生きる里の長を務める女性。
若い頃は血気盛んであったが、戦争の悪循環に気付き自衛のため以外の戦争を否定するようになる。
瀕死に陥ったマヌルを救い、同じ『人間に迫害されている身の上』であると知り彼を親身に接している。
実はLv99を突破した「超越者(リミットブレイカー)」で、里内で比肩する者のない実力者。
- ルリ
クオンツ族の女性。
普段はヒヨコそのもののモンスター・コッコ族を飼育しているが、本職は武道家で蹴り業に特に長ける。
コハクに次いでマヌルに優しく、特にコッコ族の「気に入った存在を見つけると、何があってもその存在の元へ向かう性質」でコッコ族がマヌルの元へ向かったのを見て、彼への警戒心は早期に解いている。
- オニキス
『蟲師』のクラスに就くクオンツ族の少年。
本来は快活なタイプだが、クオンツ族の現状とそれを生んだ人間への憎悪や、後述のカルセドの出奔から攻撃的かつひねくれた言動なってしまった。
後にカルセドの出奔の真相や、マヌルの誠実を併せて知って以降、己の不誠実に苦悩するように……。
- カルセド
クオンツ族の1人。
一族の抱えるとある問題のため里の外で生活していたところ、彼を捜索しにきたマヌルと出会い意気投合する。
だが、2人で協力して大型の魔物を撃破するも、その時の負傷により車椅子生活を余儀なくされる。
更にその後クオンツの里に帰還する途中で帝国のけしかけたシャドウフォックスに襲撃され、マヌルを守るため手持ちの爆弾で自爆した。
- モリ爺
クオンツ族の先代の里長。
『クオンツ族を守る場所を作る』のに人生を費やした人徳者であるが、劇中では余命幾ばくもない身であり、結晶となって果てた。
連邦
王国と共に対魔族の共同戦線に参加している国家。
連邦の現トップや関係者に『魔導大元帥』のサンドラが挙げられている様子から、恐らくエルフが主権を得ていると推測される。
- タルタリア
連邦の現トップを務める才媛。
厳格な言動を見せており、後述の帝国のユリウス皇帝に対し毅然とした態度で毒を吐いている。
現在は実の妹が『MP(=魔力)がHP(=体力)に変換される』呪い(※この世界のエルフは魔力だけで構成された非物質的な種族であり、故に魔力の欠乏=死亡に繋がる)により、余命幾ばくもない状態に陥ってしまい、それに焦燥感を覚え余裕を失っている。
帝国
魔族の領土から最も遠い場所に位置する。対魔族の協同戦線に参加していないため、他国からは嫌厭されているが、代わりに資金援助などの後方支援を行い黙らせている。兵器開発に余念がなく、数々の魔導兵器を製造・保有している。
現皇帝のユリウスは所属する将兵の思想を『~~の正義』と称し判断しており、それによって相応の差配を行っているのもあって、弱肉強食あるいは世紀末を思わせる程に苛烈な実力主義が蔓延している。
- ユリウス皇帝
皇帝の座に就いている野心家。
マヌルと同じく「賢者の石」を追い求めており、精製のための材料を集めている。
その中の1つが鉱石化したクオンツ族であり、連邦への援助を名目にクオンツ族の住む一帯を借り上げて侵攻作戦『クオンツ殲滅作戦』を発令した。
だが、予期せぬ事態の頻出に上記の計画が完敗そのものの形で失敗してしまう……が、ユリウス皇帝自身は(ある1点を除いて)大きく取り乱さないどころか「今回の大敗を自戒と次の作戦などの糧にする(要約)」として、共同戦線に加わる各国トップに此度の敗戦から得た事実と推測を共有する選択肢を選ぶと、王国の首脳陣よりは『国のトップとして相応しい冷静さ』を備えている。
だが、同時に自身の目的にのためならば、例え自国の兵士であっても本人の意志を無視して捨て石にする面も見せてもいる。
- ハイバニア少佐
帝国の持つ鉱山を管理する少佐。美しい宝飾品を好んでおり、鉱山で採掘される宝石類を横領している。
その上、危険は部下に丸投げし自分は安全圏で敵を相手に拷問を楽しむ、劣性になれば保身を最優先に平気で部下を見捨てる、自分の思い通りにならないと怒りから喚き散らす等々、本質的には見るに堪えない人間性の持ち主。
マヌルとカルセドを隠密に尾行させてクオンツ族の隠れ里を特定。その功績と本人の強い意向により彼女の宝石の為なら出世を断る『宝石の正義』を認めたユリウス皇帝から『クオンツ殲滅作戦』の指揮官を任される。
もっとも隠密隊長とユリウス皇帝によって、最上級の結晶となりえるコハクの存在は隠蔽されており、上記の人間性も合わさって信頼はされていない模様。
- ドレッドノート大将
帝国最強に上げられる一人で帝国の大将で「戦闘狂」、コハクと同じ超越者。純粋な戦闘力のみで地位を駆け上がった。漫画版第45話で初登場。
「力こそは正義」とする思想を「力の正義」をと見なされ、ユリウス皇帝に認められている。
過去にコハクによって父親代わりの人物を殺害されており、その復讐に燃える。
「クオンツ殲滅作戦」の成功率をあげる為にハイバニアの補佐を担当させる……のはユリウス皇帝の表向き理由であり、実際は「超越者コハクの純度の高い結晶を『賢者の石』の研究の為に最優先で確保したい意向で、『宝石の正義』を貫くハイバニアにその存在を知られるのは帝国にとって良い方向に進まない」と考え、内密に彼に『コハク暗殺』と『コハク結晶確保』の任務を任された。
- ヴァンガード大将
帝国最強に上げられる一人で「皇帝の側近」。戦闘能力、知略、統率力にも優れたオールラウンダー。漫画版第45話で登場した。
- 隠密隊長
帝国やユリウス皇帝の命令を最優先して行動する職務に忠実な人物。ドレッドノート大将以外でコハク暗殺作戦をユリウスに知らされていた唯一の人物。暗殺の標的であるコハクを釣る為にマヌルをおびき寄せてドレッドノートと闘わせた。
魔族
人間達が住む大陸から海で離れた孤島に住む亜人種。
人間と系統が異なる魔力・冥力を根源に異能を行使するが、故郷から離れると冥力の供給が途絶えてしまい、そうなると凡人かそれ以下にまで弱体化してしまう。
現時点でのネームドはそろって白黒目になっている。
- ベリアル
現在における魔王の最側近。
大局的に事態を見れる視野の持ち主であり、部下の権利の主張を聞き入れ、自らが実行するだけの度量を持つ。
- アドラメルク
魔王直属の最強戦力・四魔天の1人である魔族の女性。
基本的な言動は軽いが、敵に対しては「正当防衛」を称して容赦なく屠る。
魔王から『絶対反射(・オブ・カウンター)』のスキルを賜り、あらゆる攻撃を威力据え置きで反転し敵を屠る。その性質上、相手が強ければ強い程に優勢である反面、自分から能動的に攻められないのが弱点だったが、マヌルとの戦いから研鑽を積んで『絶対反射【歪曲】(・オブ・カウンター・エントリーシフト)』を開発した。
アレクサンドラ隊をほぼ全滅させた後、その場に居たマヌルを「ついで」に殺そうとしたが、自身の能力がバレた挙げ句に彼の優しさに触れたため、マヌルへの敵意と好意に同時に目覚めてしまう。
独特のイントネーションの持ち主なのか、セリフ中のひらがなの『あいうえお』と『やゆよ』が小文字で表示されている(実例:「どゆ事」→「どゅ事」)
帝国と戦って瀕死に近かったマヌルとコハクが魔王軍に止めを刺されずに、一命を取り留めたのは彼女のお陰である。
- リンテット
魔族の女性、アドラメルクへの言動からそれなりのポジションと思われる。
両隻眼・両偽足の身であり、一見すると猛将の風格を漂わせているが、アドラメルクとの遣り取り(=見当違いの方向に話し掛ける)を見る限り、直近で負傷しただけと思われる。
登場する度に上記のボケを見せるものの、根っこは部下思いの上司でもある。
- ラセツ
アレクサンドラ隊のムサシの死骸を素体にしたモンスター。
脳以外の機能はほぼ修復されている模様。
- ヴォドナイト
ベリアルに召集された魔族の1人で、全身に鎧を纏ったような風貌をしている。
セリフのフォントが他のキャラクターと異なっている上、命令に対し機械的かつ愚直に接するため、人工生物の可能性がある。
双剣術の使い手で、帝国の隠密隊隊員を瞬く間に細切れの肉片にした。