「花は、好き?」
概要
先代剣聖にあたる赤髪の女性。当代剣聖ラインハルト・ヴァン・アストレアの祖母であり、剣鬼ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアの妻に当たる。故人。
誕生日は6月12日(恋人の日)。
本人は至って穏やかで心優しく虫も殺せない、花を愛でるような人柄の持ち主。
剣聖の家系に生まれ、アストレア家の子は全員剣に関わる家庭であり、彼女も例外ではなかったが、本人が全く剣に興味を持たず修練も一切しなかった為、周りも剣の修業を強制させなかった。
だが剣を持たない最大の理由は「死神の加護」を生まれ持っていて、この加護がある限り彼女は自身他人問わず誰かに与えた傷は一生癒えることなく血を流し続ける。
この効力は治癒魔法にも適用され、王国最上位の治癒術であっても無効化する。一応包帯で出血を遅らせる程度は可能。
さらに発動条件において、状況や武器を一切問わない。ちょっとした訓練での木刀や料理で使う包丁、場合によっては彼女が割った皿の破片ですら発動するのではとテレシアは思い込み、単なる日常であっても誰かに一生治らない怪我を与える恐怖を抱えていた。
当然大量出血をさせた場合、その怪我が治る事が無いので相手の死亡が確定する(と、彼女は考えていた)。
生まれながらこの加護の力を知ったテレシアは他人と関わる事を避け、家族にも打ち明けず相手を傷つけてしまう可能性のある事は全て遠ざけ、中でも剣の稽古を躊躇していた。
(ただしヴィルヘルムとの結婚後に、その能力の制御が比較的容易いことだったことに気づく。加護の効果は本人の意思で出血を止められたり、負傷者がテレシアと距離を取れば効力が薄まるといった欠点もあった)
そんな加護を持った彼女は加護を発動させないように穏やかな生活を送るようにしていた。
しかし、彼女の意思に反して、類稀なる剣才と「剣聖の加護」を十二歳の時に受け継いでしまった。
剣聖の加護を持つ者は剣神の寵愛を受け、武器を持たせれば一騎当千の実力者となる。さらにこの加護は自動的にアストレア家の誰かに突如強制的に引き継がれ続ける。
剣聖の加護を強制的に受け継ぐ事になり、宿命的に剣聖としての道を歩むこと、そして死神の加護の効力が発揮される日常が来ることに恐怖の日々に陥った。だが剣聖になったことをすぐに周知され、兄と無理やり決闘に引き出された結果、全く剣を扱っていなかった日常であったにもかかわらず兄に圧勝。人を斬らねばならない自身の立場や周囲からの重すぎる期待の狭間が日常と化した地獄の始まりであった。
死神の加護を怖がってはいたが、剣聖としての役目は回ってくる。アストレア家に迷惑をかけるわけにもいかない為、兵士や騎士に剣を使わずにただ指導して仕事を果たす程度はしていたが、やがて王国で最悪の内戦亜人戦争が勃発。テレシアも強制的に参戦することに。
剣聖であれば容易く王国の敵を屠ると期待されていた。
だがテレシアは人を殺す才能に恵まれているにも関わらず、戦う理由が見つからず、死神の加護の力を未だに恐れ続けていた。結局初陣は泣きわめきその代わりに兄が戦場に出て戦死。彼女は精神的に心が折れ、この事は国によって公には隠された。
その後、内戦は五年も続いていた。だが周りから様々な事を言われても戦場を立つ覚悟はなかった。そんな折にヴィルヘルムと出会って一目惚れ。ヴィルヘルムが剣を握る理由に触れる事で少しずつ彼女にも変化が訪れた。だがヴィルヘルムが戦場に行ったと聞いたテレシアは『ヴィルヘルムを救うため』と戦う理由を見つけ、剣を握る覚悟を決めた。
そうして亜人戦争に剣聖が参戦。剣聖の加護と死神の加護が爆発し、一つの戦場で千を超える首を並べた。やがて剣聖の力で戦争は終結へと向かう事になる。
ところが、彼女の本質を見抜いたヴィルヘルムがテレシアが剣聖として活躍する間に修行を積み、決闘でテレシアに勝利したことにより、剣聖としての立場から下ろされる。以後、「ヴィルヘルムが剣を振るう理由」となり、最終的にヴィルヘルムと結ばれた。
十五年前の大征伐において、白鯨に敗れ死亡したとされているが、その背景には複雑な事情があり、その死が皮肉にもアストレア家が崩壊する切っ掛けとなってしまった。詳しくは、ラインハルトの項目を参照。