概要
魔王にさらわれたルクレチア王女アリシアを助けるため、
しかし、魔王を無事に倒した直後、彼は1つの事実に気づくことになる。
アリシアが囚われている魔王山の頂への抜け道を、自分だけ見つけてしまった。
アリシアをこのままみんなで助ければ、恩賞を受けるのは婚約をしているオルステッドだろう。
だけれど、ストレイボウは同じように戦ってきたのに、
昨晩の武闘大会で負けたという理由だけでもって、その権利を受けられない。
この差は何だろうか。大会に負けたから? 勇者として注目されていなかったから?
否···オルステッドとの力量の差があったから。
いつも「あと1歩」のところで、オルステッドの後ろをついて行く立場だった彼。
そんな彼が、初めてオルステッドを出し抜くチャンスを手に入れた。
この事がきっかけで、彼の心の奥底にあったコンプレックスが爆発。
周囲の仲間たちを巧く追い払い、アリシアを自分1人で救助しようと考え出した。
長く深く抱えてきたコンプレックスは、それで済ますだけでは飽き足らず、
どうせならオルステッドを徹底的に貶めてやろうとまで考え出す。
ずいぶん長いことガス抜きをしてこなかった反動はあまりにも大きかった。
だが、処刑寸前まで追い込んだはずが、脱獄されて、今、自分の目の前にいる。
ついに、己が今まで、「オルステッドの親友だった」ゆえに「誰にも言えなかった」、
自分でも制御できないくらいのコンプレックスを、言葉にして叫んだのだった。
てめぇはいつもそうやって! 俺のしてえ事をブチ壊しやがるッ!!
昔ッからそうだ!
俺がどんなに努力しても! てめぇはいつもそのひとつ上を行っちまうッ!!
あの決勝大会の時もなあッ!
俺があの夜どんなに苦しんだか‥‥
てめえにッ! てめえなんかにッ!! 解られて たまるかよッ!!
だが‥‥ 俺は今迄の俺じゃあねえ‥‥
今こそッ! てめえを ブッ倒しッ!!
てめえの引き立て役だった過去に決別してやるッ!!
その一字一句に、抱えていた劣等感の全てが込められている。