概要
路線概要
三ノ輪橋停留所(東京都荒川区南千住)から早稲田停留所(新宿区西早稲田)までの12.2kmを結ぶ都電(東京都交通局経営の路面電車)の路線。区間の殆どが専用軌道であったこともあり、都電としては唯一残った路線である(ちなみに東京都内の路面電車には東急電鉄世田谷線が存在する)。
途中の町屋駅前電停で京成電鉄本線・東京メトロ千代田線と、熊野前電停で東京都交通局日暮里・舎人ライナーと、王子駅前電停でJR東日本京浜東北線・東京メトロ南北線と、新庚申塚電停で都営地下鉄三田線と、大塚駅前電停でJR東日本山手線と、東池袋四丁目電停で東京メトロ有楽町線と、鬼子母神前電停で東京メトロ副都心線と、それぞれ接続している。
沿線には池袋と巣鴨がある。つまり、若者の街と年配の方の街を結んでいる路線である。
共通乗車券の側面では、バス〈共通〉カードがあった頃からバス路線の扱いになっており、PASMOに移行されてからは同じ月に7回乗車した際のバス特チケットとして引き継がれている。
2017年に愛称として「東京さくらトラム」が制定され、路線記号として「SA」が付けられたが、「そもそも都電が愛称じゃなかったのか」、「沿線の代表的な花はさくらではなくバラではないのか」などの批判もありあまり定着していない。
確かにバラは荒川区内で1985年から植栽されており沿線を代表する花ではあるが、沿線には飛鳥山公園など桜の名所も多いためさほど不自然というわけでもない。
ちなみに非公式な愛称としては開業当時の社名に由来する「王子電車」もある。
併用軌道区間
荒川線はほとんど全線にわたって専用軌道(新設軌道)である。しかし併用軌道で残存している区間もあり、その代表的な区間が以下の2つである。
- 熊野前電停-小台電停間0.7km
- 王子駅前電停-飛鳥山電停間0.5km
このうち前者はセンターリザベーションと呼ばれ、軌道と車線の境界には縁石が置かれ自動車の進入を防いでいる。これによって同区間は電車がスムーズに通行できるようになっている。
…一方の後者は、区間が2電停間と短いためか、はたまた交差点の関係かそういった対策が採られておらず、軌道上に自動車が乗り入れてくる。このため渋滞が起きてしまうと、当然のことながら電車も遅延が発生する。
このほかに大塚駅前電停周辺は駅前広場を横断するようにして走行しているほか、同電停の三ノ輪橋寄りにも併用軌道の区間が存在する。ただしこの区間は車両進入禁止となっており、都電のほかには歩行者、自転車などの軽車両以外は通行ができない。一種のトランジットモールである。
もともとは
もともとは旧王子電気軌道の路線であった27系統と32系統を1974年に統合した結果生まれた系統である。都電で唯一の存続路線となったのは専用軌道区間が多く定時性確保が期待できたことが大きく寄与している。現在の荒川線は4つの路線から構成されたもの。
- 三河島線(みかわしません):三ノ輪橋-町屋駅前間1.8km
- 荒川線(あらかわせん):町屋駅前-荒川車庫前-王子駅前間4.2km
- 滝野川線(たきのがわせん):王子駅前-大塚駅前間2.9km
- 早稲田線(わせだせん):大塚駅前-早稲田間3.3km
1972年の都電最終撤去時には、32系統(荒川車庫前〜早稲田)の全区間と、27系統(三ノ輪橋〜王子駅前〜赤羽)のうち三ノ輪橋〜王子駅前間が残され、以後、運行系統上の荒川線に統合されるまでの2年間は別々の運行系統で運行されていた。
廃止になった王子駅前~赤羽間は東京メトロ南北線と重複し、赤羽停留場は現在の赤羽岩淵駅に相当する。
延伸計画構想
近年になって環境問題から路面電車などの軽軌道見直し(LRT)が叫ばれているが、実は荒川線はそれ以前から有力な2つの延伸計画が存在している。
- 三河島線延伸:三ノ輪~北千住駅前
- 池袋駅前支線:東池袋~池袋駅前
現在の車両
すべて新性能車両かつVVVFインバータ制御車両である。
また、東急世田谷線や京福電気鉄道もそうだが、ホーム自体を嵩上げしている関係で、超低床車両は1両も在籍していない。
- 7700形:原型は1955年に製造された最古参。都電最後の吊り掛け駆動車7000形(メイン画像の車両)からの改造。2016年にカルダン駆動・VVVF制御へ変更された。
- 8500形:1990年に従来車置き換えを目的に5両が製造された。
- 8800形:2009年に導入された新型車両。
- 8900形:2015年に導入された最新鋭車両。
- 9000形:2007年・2008年に2両が製造されたレトロ調車両。
過去の車両
荒川線存続決定時点で在籍していた車両のみ。
- 6000形:1947年から製造された都電の主力形式。荒川線には最大13両が在籍していた。
- 7000形:1955年から製造された都電最後の吊り掛け駆動車。6000形引退後は長らく都電最古参形式だった。
- 7500形:1958年から製造された昭和期の都電最後の形式。1984年に車体更新が行われ、2011年まで運用された。
- 乙6000形:1978年に引退した6000形5両を改造した花電車。1981年に廃車。
- 花100号:花電車。2011年に7500形から1両が改造。2018年に廃車。
停留場
※★は距離がやや離れているもの。
停留場番号 | 停留場 | 乗換駅 | 備考 |
---|---|---|---|
SA01 | 三ノ輪橋(みのわばし) | ||
SA02 | 荒川一中前(あらかわいっちゅうまえ) | ||
SA03 | 荒川区役所前(あらかわくやくしょまえ) | ||
SA04 | 荒川二丁目(あらかわにちょうめ) | ||
SA05 | 荒川七丁目(あらかわななちょうめ) | ||
SA06 | 町屋駅前(まちやえきまえ) | 当停留所折返し電車がある。 | |
SA07 | 町屋二丁目(まちやにちょうめ) | ||
SA08 | 東尾久三丁目(ひがしおぐさんちょうめ) | ||
SA09 | 熊野前(くまのまえ) |
| ここから小台停留所間は道路の中央を走る。 |
SA10 | 宮ノ前(みやのまえ) | ||
SA11 | 小台(おだい) | ||
SA12 | 荒川遊園地前(あらかわゆうえんちまえ) | ||
SA13 | 荒川車庫前(あらかわしゃこまえ) | ここまで荒川区。都電の車庫「荒川電車営業所」と都電ひろばを併設。 | |
SA14 | 梶原(かじわら) | ここから北区 | |
SA15 | 栄町(さかえちょう) | 23区で2ヶ所しかないジョーシン王子店が存在するが、荒川線からだと裏から回り込む形になってしまう。 | |
SA16 | 王子駅前(おうじえきまえ) | 当停留所折り返し電車がある。ここから飛鳥山停留所間は併用軌道区間、かつ坂道を走行する。 | |
SA17 | 飛鳥山(あすかやま) | 飛鳥山公園最寄り。 | |
SA18 | 滝野川一丁目(たきのがわいっちょうめ) | ||
SA19 | 西ケ原四丁目(にしがはらよんちょうめ) | ここまで北区 | |
SA20 | 新庚申塚(しんこうしんづか) | ここから豊島区。白山通りを渡る。 | |
SA21 | 庚申塚(こうしんづか) | とげ抜き地蔵通りの北端にある。 | |
SA22 | 巣鴨新田(すがもしんでん) | ||
SA23 | 大塚駅前(おおつかえきまえ) | 当停留所は山手線ガード下で、当停留所折返し電車がある。 | |
SA24 | 向原(むこうはら) | ||
SA25 | 東池袋四丁目(ひがしいけぶくろよんちょうめ) | 東池袋駅のホームからは距離があるが、地下道入口はかなり近い | |
SA26 | 都電雑司ヶ谷(とでんぞうしがや) | ||
SA27 | 鬼子母神前(きしぼじんまえ) | ここまで豊島区 | |
SA28 | 学習院下(がくしゅういんした) | ここから新宿区。学習院大学に距離は近いが門が裏手にあるためかなり歩く必要がある。 | |
SA29 | 面影橋(おもかげばし) | ||
SA30 | 早稲田(わせだ) | 東京メトロ東西線の早稲田駅からはかなり距離があり、ほぼ別物。早稲田大学早稲田キャンパス北門に近い。 |
関連リンク
関連イラスト
アニメにも登場
昭和ノスタルジーを象徴するアイテムとして、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』や『キテレツ大百科』にも荒川線が多く登場した。
『こち亀』では両津勘吉が都電にまつわる思い出を語る場面が多く、荒川線以外の廃止になった都電について触れられる場合もある。
『キテレツ大百科』ではコロ助の体の一部に都電の部品が使われている。
『BanG_Dream!』でも主人公たちがこの路線を利用しているシーンがよく見られる。
『クラユカバ』に登場する扇町駅のモデルは王子駅前停留場である。
関連タグ
華原朋美…ミリオンシングル「Hate tell a lie」のMVはこの路線の車両を貸し切って撮影されている。