小説やライトノベル、RPGなどのゲームに於いて見受けられる表現方法の一つである。
キャラクターの言動、または物事などがその時には大したことが無い、
または若干不自然な程度に思われる程度の事柄であるのだが、
物語が進行するとその言動、物事の意味合いが分かる、というケースが多い。
フラグとほぼ意味合いは同じであるがフラグというのは定型化しているものを指すことが多いのに対し、
伏線というのは定型化しておらず意味合いが分かったときまでは
そもそも伏線であることにすら気付かなかった、
場合によっては意味合いが分かっても伏線があったことにすら気付かなかったというものが多い。
伏線は「敷く」または「張る」という表現をされる。
そして伏線の内容が明らかになった場合には「回収する」という言い方をすることが多い。
伏線がうまく張られている作品というのは高い評価を得ることが多い。
それだけに非常に技術が要求されるものであり
たくさん伏線を張りすぎると読者にとって読みづらい作品になるだろうし
見え見えの伏線であれば伏線の意味合いが無い(フラグとなる)。
さらに伏線を張ったはいいが読者に忘れられるという可能性もあるため
忘れられないように、しかも上手に伏線を張るというのは並大抵の技術では無い。
また作品によっては折角伏線らしきものが張られているのに回収されないケースもあるなど
プロであっても伏線を上手に扱うのは難しいといえよう。
伏線の例
ある日突然ヒロインから電話が掛かってきて
「今日遊びに行かない?」と言われたとする。
普段自分から誘ってくることなど無いヒロインの言葉に戸惑う主人公だったが
主人公はその日新作ゲームの発売日であり
どうしてもそれを買いに行きたかったのでその誘いを断ってしまう。
そして数日後、主人公は親からヒロインが引っ越ししてしまったことを聞いたとする。
ベタベタかつ上手い例ではないのだが
この場合ヒロインの「今日遊びに行かない?」というセリフは
「引っ越す」ということの伏線であると言える。
この時は何気ない日常会話として流すことが出来るのだが
普段誘ってくることはない、としてあることで
このセリフは読者にとっても何かしらの意味があることはすぐに分かるだろう。
非常にチープな例ではあるがこれが伏線の例であると言える。
伏線のタイプ
主な伏線のタイプは以下の通りである。(分類名は便宜的なものである)
明示型
上述の例のように読者に伏線を敷いたことを知らせるタイプである。
思わせぶりなセリフであり読者にとってはこれは伏線だろう、というのが分かるものであるため
伏線を回収した際に「あれが伏線だったんだな」とすぐに分かることが多い。
使いやすい伏線ではあるがあまり伏線としての効果は大きくないのが特徴。
暗示型
伏線を敷いたことは分かっても弱い伏線と見せかけるタイプである。
例えば先ほどの例を少しだけ変えてみる。
誘ってきたヒロインに対して
「悪い、今日は無理なんだ。また今度にしないか?」と主人公が言ったとする。
「……そっか、残念……。最近ずっと勉強に追われて
疲れてるから遊びに行きたかったんだけどな」とヒロインは返したとする。
この場合伏線としての読者の印象は先ほどよりは弱くなる。
勿論「何かありそうだ」とは思える為伏線であることを意識はするのは間違い無い。
例の場合直後に真相が判明しているが
真相判明までに時間が掛かると「やっぱりあのセリフは意味無かったのか」と
伏線そのものを忘れられるケースもあり得る。
二重型
伏線を回収した、と見せかけて実は回収していない、という高度なテクニックである。
例の部分の断ってしまった。の後に以下の状況が入ったとする。
次の日、主人公は学校で友人と昼ご飯を食べていた。
「そういえばあの子(ヒロイン)ってお前のこと好きみたいだぜ」とその友達が主人公に言ったとする。
この時、主人公にとっては前日のヒロインのセリフは
「自分のことを実は好いていた」ということだったと理解する。
これにより読者もあのセリフの意味はここにあったと理解することになる。
しかしながら実際の伏線の回収は「ヒロインが引っ越す」という地点であり
この時点では伏線を回収したように見せかけているだけである。
このように一見伏線を一旦回収したように見せかけるというテクニックは
高等ではあるが効果は大きく、2回目に読んだ時に
これが伏線だったのか、と気付くケースも多い。
誤解型
いわゆるミスリードである。
伏線を回収した、と見せかける部分は一緒であるが
読者に誤解を与えるような伏線の回収をさせる点で異なる。
例えば犯人がAであるミステリー小説があったとする。
事件前突然ガサッ、という物音が聞こえた、という描写がある時に
Bだけがその場にいなかった。という書き方をしたとしよう。
この時このガサッという音は犯行に関わる音である、と多くの読者は考える。
そしていなかったのはBである、ということはBが怪しいのではないか、というわけである。
勿論このような例はミステリー小説では逆に怪しくないケースが多いかも知れないが
ミスリードを招く伏線の敷き方であると言える。
また、ミスリードはオチを際立たせる手法の一つにもなるため、
コメディ作品に用いられることも多い。
前出の例を引用すれば、Bはそのときたまたま激しい下痢に襲われて外で用を足してしまい、
雑草を使って拭こうとしたときにした音がそれであった、など。
伏線とフラグ
上述のように伏線とフラグは似たようなものである。
代表的なフラグとして死亡フラグがあるが
これはもうお約束と言ってもいいようなものであるが、死亡フラグを伏線と考えるとする。
例えば友人が「俺、試験に受かったら彼女に告白するんだ」と言ったとする。
勿論何気ない会話の中でこの表現を含めたとすれば
(死亡フラグを知らなければ)これが伏線とは気付かないかも知れない。
しかし案の定友人は試験に落ち彼女に振られてしまった。という展開になったとすると
このセリフは、後に彼が試験で落ちることを臭わせていた伏線である、といえる。
勿論今となってはこのセリフそのものが死亡フラグの代表例であるため、
このセリフが出た瞬間「あ、こいつ落ちるな」と多くの人が気付くであろう。
その為フラグは分かりやすいというか分かるためにある伏線という表現も出来る。
ピクシブにおける伏線
イラストでは伏線というのはあまり存在しない為あまりタグとして用いられることは無いであろう。